- 著者
-
奥山 亮
辻本 将晴
- 出版者
- 公益財団法人 医療科学研究所
- 雑誌
- 医療と社会 (ISSN:09169202)
- 巻号頁・発行日
- pp.iken.2017.001, (Released:2017-07-31)
- 参考文献数
- 38
- 被引用文献数
-
4
近年,我が国では創薬の基礎研究から医薬候補化合物の創出までの全研究段階をアカデミア研究者が行うアカデミア創薬が推進されている。アカデミア創薬においては,従来企業が中心で行ってきた創薬応用研究部分(リード物質から薬効・薬物動態・安全性を最適化して医薬候補化合物の取得を目指し,並行して創薬標的の妥当性検証を行う研究段階)もアカデミア研究者が実施するが,創薬応用研究はアカデミアの基礎研究とは内容も志向性も異なるため,アカデミア創薬における応用研究部分の研究達成度には懸念が持たれている。この問題を実証的に検討するため,日本の製薬企業もしくは大学等公的研究機関が臨床開発を実施した医薬候補化合物の情報を過去40年程度にわたって網羅的に収集し,分析した。その結果,アカデミア創薬で生み出された医薬候補化合物は,産学連携による創薬で生み出された化合物より臨床開発段階での成功率(上市に至る確率)が有意に低いことが分かった。臨床開発段階の失敗理由の大部分は創薬応用研究段階で見極めが行われる薬効,薬物動態,安全性によると報告されているため,このデータはアカデミア創薬における応用研究部分の研究達成度が相対的に低いことを示唆する。本結果より,アカデミア創薬の問題点や取るべき方向性を議論する。