著者
好井 久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.43-49, 1967-01-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
83
被引用文献数
2 1

微生物に限らず広く植物や動物など, 生物というものは塩類がなければ生活できない。そしてその生活に対する最適の塩類の濃度というものは, 生物の種類でちがっているが, 一般的にいえば2%以下であるといえる。この綜説では味噌, 醤油などのように食塩の濃度が高い環境で生育し, そして発酵作用を営み, 製品の熟成にあづかっている特殊な細菌の一群をとりあげて, その解説を試みている。わが国で伝統的に行なわれた醸造技術では, こういう細菌の一群が作用していることが今から50年ぐらい前から判っているが, それらの細菌の組織的な微生物学的研究は最近緒についたばかりである。この新しい分野は微生物細胞学者などによっても着々進められているが, 筆者は刻明にそれらの研究をしらべあげて, 醸造技術研究者という立場からこれをまとめている。発酵微生物一般に対する考えかた, またその応用の面に示唆を与えるものが多いであろう。
著者
好井 久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.353-359, 1965

前報にひきつづき, みそ, しょう油醸造微生物の主要群別を目的とした選択分離技法を, 菌群のpB耐性, 食塩耐性, 酸素要求度について試験した。<BR>1) <I>Ped.halopkilus</I>の酸性pHに弱い特長をもととした酸性 (pH5.0以下) 培地の使用は, 他菌群の生育も弱化し, 選択分離には利用できない。<BR>2) <I>Ped.halopkilus</I>の好塩性を利用し, 食塩10%程度含有の分離培地を用いることは本菌群の選択分離に有効である。しかも食塩耐性はある程度環境 (食塩濃度) に生理的適応を示しているものとみなされ, 含塩下に生存する本菌の無塩培地での分離は若干のviable lossをおこすものと思われる。<BR>3) 生しょう油の添加は一般的に乳酸菌 (Micrococcusを含めて) の生育を向上させ, TNで0.2%程度の生しょう油をふくむ食塩10%添加培地が.<I>Ped.halopkilus</I>の分離に適している。<BR>4) 乳酸菌の分離は減圧 (真空) 法によらずとも重層法で充分目的を達し得る。この際の<I>Bacillus</I>の完全阻止にはソレビン酸添加培地の使用がのぞましい。<I>Micrococcus</I>は重層下にはかなり生菌数が減る。<BR>おわりにのぞみテスト<I>Streptococcus</I>菌株の一部を分譲いただいた農林省食糧研究所伊藤寛氏, <I>Pediococcus</I>菌株の分譲をいただいた野田産研坂口健二氏, 新潟県食品研本間伸夫氏ならびに終始御鞭漣を賜わった鳥山所長に深謝する。なお本報告の要旨は全国味噌技術会研究発表会 (昭38年5月20日) において口演し, 技法の要点のみは同会発行の味噌技術に摘記ずみである。
著者
山本 泰 東 和男 好井 久雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.9, pp.496-501, 1981-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

醸造における原料の有効利用や麹菌による着色コントロールを可能にするためには麹菌のヘミセルラーゼの作用を明らかにする必要があり,本報ではまず市販種麹から分離したキシラナーゼ活性について検討し,次の結果を得た。(1) 麹菌のキシラナーゼ活性測定の条件は,pH5.5,40℃ 30分の反応が適当であった。(2) 〓麹におけるキシラナーゼの生産は,散水が60%以上で30℃培養が優れ,40~60時間において急激に増加し,70時間で最高値に達した。(3) 麹菌を形態や種類によってグループ別けした場合には,これらのグループ間にキシラナーゼ平均活性の差を認めたが,いずれのグループにもキシラナーゼの強い菌株と弱い菌株が含まれていた。(4) キシラナーゼ活性と中性及びアルカリ性プロテアーゼ活性との間には高度に有意の相関があり,醤油の醸造等においてヘミセルロースと蛋白質の分解の関連性が推測された。
著者
東 和男 山本 泰 好井 久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.121-124, 1987-02-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

電子顕微鏡により耐塩性酵母Zygosacch. rouxiiの微細構造を観察し, 次の結果を得た。1) 2%過マンガン酸カリウムで24時間固定した無塩及び含塩下培養の対照酵母Sacch. sakeは完全に過固定になったが, 同固定条件では耐塩性酵母はやや過固定にとどまった。一方, 両酵母のプロトプラストは過マンガン酸カリウムより固定能の弱い2%四酸化オスミウムによって適切に固定された。上記のことは, 耐塩性酵母の細胞壁が細胞内への固定液の透過を抑制していることを示しており, 細胞壁は食塩の細胞内への透過に対する防壁となることが推定される。2)細胞壁の厚さは,対照酵母では含塩下培養で薄くなる傾向が認められたが, 耐塩性酵母では無塩と含塩下培養の間に差異が認められなかった。3)耐塩性酵母において無塩培養でミトコンドリアが良好に発達したほかは, 耐塩性酵母対照酵母のいずれにおいても食塩は細胞質構造に影響を及ぼさないことが観察された。
著者
好井 久雄 多山 賢二
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.310-338, 2005-05-15

平成16年の味噌の研究業績を見ると, その約三分の一が「味噌の機能性」に関わる研究であることに注目される。つまり,「味噌の良さ」の見直し的研究成果がかなり多く報告されている。これらを前向きの研究開発として発展させ, 精力的に研究開発が進められれば一層素晴らしい果実を期待できよう。味噛の品質やその性状は, 時代とともに変わり得るものであろう。新しい時代やニーズに適応した味噌の改良・改善が積極的に行われ, 高付加価値を有する新しいタイプの味噌の出現が待たれる。本年の一層の研究開発の進展と業界の発展を期待したい。<BR>原料処理に際し副生する, 廃棄物を再利用し収率を上げると同時に, 環境汚染を防こうとの考えがある。新規の製造法としては食酢を電気分解し刺激臭の少ない食酢が得られた。以前は混合菌での発酵が主であったが, 近年は菌名の分かった菌を使用するようになった。良い例がアセトバクターとグルコノバクターを同時混合して製酢を試み, 両菌周辺の酸化能の高い遺伝子をクローニングし, その酵素の存在を確認した。昨年はバルサミコ酢の分析が行なわれたが, 食酢の機能性の報告が少なかった。