著者
宇都宮 啓吾
出版者
大谷女子大学志学会
雑誌
大谷女子大学紀要 (ISSN:02857707)
巻号頁・発行日
no.38, pp.44-99, 2004-02
被引用文献数
1
著者
宇都宮 啓吾
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.453-472, 2016

稿者は、前稿(1)において、智積院新文庫蔵『醍醐祖師聞書』(53函8号)について、次の二つの記事を手掛かりとしながら、<br><br>○頼賢の法華山寺での活動<br>(略)遁世ノ間囗ノ/峯堂(法華山寺)ニヲヂ御前ノ三井寺真言師ニ勝月(慶政)上人ノ下ニ居住セリ/サテ峯堂ヲ付屬セムト仰アリケル時峯堂ヲハ出給ヘリ其後律僧ニ成テ高野山一心院ニ居其後安養院ノ/長老ニ請シ入レマイラセテ真言ノ師ニ給ヘリ (6裏~7表)<br><br>○頼賢の入宋遍知院御入滅ノ時此ノ意教上人ニ付テ仰テ云ク我ニ四ノ思アリ遂ニ不成一死ヌヘシ 一ニハ一切經ヲ渡テ下●酉酉ニ置キタシ二ニハ遁世ノ公上ニ隨フ間不叶●死スヘシ 三ニハ法花經ヲ千部自身ヨミタカリシ不叶 四ニハ青龍寺拝見セムト思事不叶頼賢申テ云ク御入滅ノ後一々ニ四ノ御願シトケ申サル其後軈遁世セリ軈入唐シテ五千巻ノ一切經ヲ渡シテ下酉酉ニ經藏ヲ立テ、納也此時意教上人ハ青龍寺拝見歟不見也御入滅後三年ノ内千部經ヨミテ結願アリ四ノ事悉ク皆御入滅後叶給ヘリ(6表~6裏)<br>主として、以下の如き四点について指摘した。<br><br>①智積院新文庫蔵『醍醐祖師聞書』は、従来、奥書の類による確認でしか叶わない、意教情人頼賢の高野山登山前の法華山寺での活動や頼賢入宋の記事を含む新発見の「頼賢伝」資料として位置づけられる。<br>②法華山寺慶政を頼賢の「ヲヂ御前」とする記事から頼賢と慶政との関係の深さが確認できると共に、別の箇所では「意教ノ俗姓ハ日野(ヒノ、)具足也」(5裏)とする記述の存することから、頼賢の出自についても新たな資料が得られる。<br>③②を踏まえるならば、本書が慶政の出自に関わる新資料の提示ともなっていることから、慶政を「九条家」出身とする従来説との関連を考える必要が存し、その意味で、慶政の出自に関する再検討が俟たれる。<br>④本書の「頼賢伝」(頼賢の入宋と法華山寺慶政との関係)は、意教流、特に、東寺地蔵院流覚雄方相承の中において伝えられていたものと考えられる。また、本書が、家原寺聖教の一つであることから、家原寺を拠点とした律家側の資料として文章化されたものと考えられる。<br><br> 前稿においては、新たな「頼賢伝」資料の提示を中心とした、本書の紹介に主眼が存したため、本書の成立の背景や本書の記事を手懸かりとした分析には至っておらず、この点に関する検討の必要性を感じる。<br> そこで、本稿においては、本書分析の一つとして、本書の成立の〝場〟について考えると共に、本書の記事を手懸かりとした東山と根来寺とを巡る問題についても検討したい。
著者
宇都宮 啓吾
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.203-187, 2008-01-01

本稿では、訓点資料研究の一問題として、高麗続蔵経(義天版)の伝持者と真言宗における西墓点使用者とが重なる点や、高野山における喜多院点伝播が高野山中院明算周辺と関わる点、心覚を巡る教学等を具体例に、院政期における訓点資料とその加点者や伝持者を手懸かりとした教学的交流の実態とそこから得られる典籍の素性や加点・移点・伝持に関する分析の必要性を述べた。特に、白河・鳥羽院政期における真言宗の緊密な教学的交流の実態(その一つとしての仁和寺教学圏の問題)と諸宗に亘るヲコト点流布や訓点本の伝持の問題に注目している。また、右の如き訓点資料の分析に必要なデータベースの構築について、血脈類の検索までをも含めた統合的検索システムの視点から、稿者の試みを紹介した。
著者
渡上 将治 村川 猛彦 宇都宮 啓吾 中川 優
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.189-194, 2010-05-15
参考文献数
6
被引用文献数
1

筆者らがこれまでに構築してきた聖教書誌情報全文検索システムは,サーバに接続して使用する必要があるため,山奥などでは利用できないという問題点があった.そこで,インターネット環境に依存しない,1台のノートPC上のみで動作するスタンドアロンのシステムの構築を行った.サーバ部のOSをLinuxからWindowsに変更したが,対象データと全文検索エンジンは同じものを使用し,従来のシステムに存在した機能に加えて,新たなデータの追加や,各聖教に対するコメントを残すことができる機能を実装した.本システムと従来のシステムとで検索結果が同じであり,検索時間に関しても2秒以内で結果が表示されることを確認した.
著者
田中 勝 村川 猛彦 宇都宮 啓吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.288-298, 2018-02-15

現在,古写経を中心とした文書の電子化が進められている.しかしながら漢文に送り仮名やヲコト点が付与された,訓点資料においては,文書の翻刻(テキスト化)やそれを管理するシステムの提供が十分ではなかった.本研究では,訓点資料における解読支援環境の確立を目指し,訓点資料を対象とした翻刻支援システムの構築を行ってきた.システム構築にあたり,訓点資料が手書き文書であることや,訓点資料に含まれる多様な記述情報に対応することを考慮して,訓点資料の記述情報を文字領域や点座標としてデータベースに格納し,情報間の関連付けを行うことで解決を図った.また,HTML5 Canvasを用いた画像ベースのインタフェースにより,直感的な操作で資料画像上に入力する仕組みを実現し,行・列番号や読みの自動推定機能をサーバ側で実装することで,ユーザによる入力の手間を省く試みを行った.評価実験により,システムの操作性に問題がないこと,1件ごとの平均入力時間は約3秒で十分に実用的であること,および自動取得したデータの誤り数は少なく手動修正が可能な範囲であることを確認した.Recently ancient sutras have been computerized. However the support for written materials with reading marks such as "okototen" is not sufficient with regard to the transcription of documents and the system for dealing with the contents. This paper aims to establish a transcription support environment for written materials with reading marks. Taking into consideration the fact that the target documents were handwritten and hold a variety of descriptive information, we developed the system so that the descriptive information of reading marks can be stored as coordinates of a rectangular area or a point in the database and the data can be mutually related. Furthermore we attempt to ease the burden of input, by developing an image-based interface using HTML5 Canvas for specifing Chinese characters and reading marks on the document image intuitively, and by implementing automatic acquisition features for character position and reading of marks. Evaluation experiments made sure that there was no problem found in the operation of the system, the average input time was around three seconds, which means the practicability of this system, and the mistakes made in the automatic acquisition were so few that we could correct them manually.
著者
田中 勝 村川 猛彦 宇都宮 啓吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.288-298, 2018-02-15

現在,古写経を中心とした文書の電子化が進められている.しかしながら漢文に送り仮名やヲコト点が付与された,訓点資料においては,文書の翻刻(テキスト化)やそれを管理するシステムの提供が十分ではなかった.本研究では,訓点資料における解読支援環境の確立を目指し,訓点資料を対象とした翻刻支援システムの構築を行ってきた.システム構築にあたり,訓点資料が手書き文書であることや,訓点資料に含まれる多様な記述情報に対応することを考慮して,訓点資料の記述情報を文字領域や点座標としてデータベースに格納し,情報間の関連付けを行うことで解決を図った.また,HTML5 Canvasを用いた画像ベースのインタフェースにより,直感的な操作で資料画像上に入力する仕組みを実現し,行・列番号や読みの自動推定機能をサーバ側で実装することで,ユーザによる入力の手間を省く試みを行った.評価実験により,システムの操作性に問題がないこと,1件ごとの平均入力時間は約3秒で十分に実用的であること,および自動取得したデータの誤り数は少なく手動修正が可能な範囲であることを確認した.
著者
宇都宮 啓吾
出版者
訓点語学会
雑誌
訓点語と訓点資料 (ISSN:04546652)
巻号頁・発行日
vol.126, pp.1-17, 2011-03
著者
後藤 昭雄 荒木 浩 米田 真理子 梶浦 晋 落合 俊典 赤尾 栄慶 金水 敏 近本 謙介 宇都宮 啓吾 海野 圭介 仁木 夏実
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、大阪府河内長野市にある真言宗寺院金剛寺所蔵の聖教の全体的調査である。そのために聖教全部の略目録の作成と貴重典籍についての詳細な調査研究を二つの柱として作業を行った。その結果として、なお整理調査が行われていなかった第21函から第55函までの聖教について略目録の作成を行い、報告書に公表した。これによって、金剛寺所蔵聖教のおおよそについては目録化がなされたことになる。貴重典籍については、刊本および音楽資料については全体的調査を行い、そのうちの重要資料は学術的位置づけを行った。精査を行った典籍の主なものは『全経大意』『百願修持観』『明句肝要』『清水寺縁起』『無名仏教摘句集』などである。これらについては論文と併せて影印あるいは翻刻によって全体の内容を報告書に公表した。
著者
宇都宮 啓吾
出版者
大谷女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

従来より纏まった形ではその全体像を把握し難い天台宗系統の訓点資料の研究を行ない、現在は天台真盛宗総本山西教寺の聖教に注目して、天台宗山門派の聖教を個別に調査して来た。その結果として、西教寺正教蔵に存する訓点資料の全ての抽出とその書誌的データと目録化、および、南北朝以前の訓点資料を含めた古写本全ての撮影とデジタルアーカイブ化が完了した。また、その成果を踏まえて、以下の如きことも明らかになった。(1)西教寺聖教の中の正教蔵とされる聖教が比叡山西塔北谷正教坊を由来とする聖教であること。(2)その実態は天台僧舜興によって集書され、舜興は比叡山葛川の総一和尚となるなど、幅広く活躍する人物として多くの聖教を収集できる立場にあったこと。(3)西教寺正教蔵に存する訓点資料の具体的な把握が可能となった。(4)更に、特に注目される個別の訓点資料(具体的には、『無量義経疏』寛平点・『妙法蓮華経』院政期字音点等)に関する国語学上の意義付け。(5)比叡山における聖教調査における里坊を視野に入れた調査の重要性上記の如く、西教寺正教蔵の解明が比叡山西塔北谷正教坊の解明へと繋がり、更には、天台宗山門派系統の聖教解明として発展できることが明かとなり、目録が公開されることによって、他の研究者にも大きく寄与出来るものと思われる。