著者
安藤 悦子 山崎 千賀 石丸 愛子 島本 あゆみ 福田 奈実
雑誌
保健学研究 = Health science research (ISSN:18814441)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.79-83, 2009-03

本研究の目的は,死亡退院後の遺体トラブルと遺体トラブルに遭遇した家族の反応および死後のケアに対する葬祭業者の意見・要望を明らかにし,看護師が行う死後のケアへの示唆を得ることである.対象は葬祭業社に勤務し,葬儀に携わる社員80名に質問紙を配布し,29名から有効回答を得た(回収率36.3%).対象者が体験した遺体トラブルで最も多かったのは「出血」で,順に「開口」,「悪臭」,「体液流出」などがあった.葬祭業者の意見・要望の背景には,病院と葬祭業者間のコミュニケーション不足が考えられた.以上より,看護師は死体現象の理解を深め,葬儀が終了するまでの変化を考慮した死後のケアを実施する必要がある.また,コミュニケーション不足を是正するために,病院側からは死亡退院時に,感染症の既往や遺体トラブルのリスクに関する情報を提供し,トラブル発生時には葬祭業者から病院へ情報を提供するといった連携のシステムの構築の必要性が示唆された.
著者
小海宏之 前田明子 山本愛 加藤佑佳 岡村香織 園田薫 安藤悦子 岸川雄介
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.91-96, 2010-03

本研究は、小海ら(2000 ,2004,2008)による日本語版 Mini-Mental State Examination(MMSE)の検出力と特異性を明らかにした。この MMSEの cut-off値を 24/25点とした場合、感度 0.837、特異度 0.957となり、臨床群( amnestic Mild Cognitive Impairment; MCIと probable Alzheimer's Disease; ADを含む)と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有することが示唆された。しかし、同様に 26/27点を cut-off値とした場合、感度 0.889、特異度 0.739となり、amnestic MCI群と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有するとは言い難く、他の認知機能検査による精査を行う必要性があることが示唆された。
著者
田代 隆良 永田 奏 出田 順子 安藤 悦子
出版者
長崎大学
雑誌
保健学研究 (ISSN:18814441)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.43-48, 2006

長崎大学医学部保健学科の看護学生270人(1年生68人,2年生68人,3年生68人,4年生66人)を対象に死生観に関する自記式アンケート調査を行った.学生は,死を「永遠の眠り」「肉体と精神の眠り」「神秘・不可解なもの」と捉え,学年間に違いは認められなかった.自分の死に関してもっとも嫌なこととして,「物事を体験できなくなる」「予定していた計画や仕事ができなくなる」は1年生に,「痛み・苦しみ」は4年生に多く,有意差が認められた.死生観に影響を与えた因子は「身近な人の死」「テレビ・映画」「葬儀への参列」「読書」の順であり,学年間に違いは認められなかったが,「講義」「実習」は4年生が有意に多かった.しかし,講義や実習の影響は学生の期待よりも小さく,日々の授業において死の準備教育を行う必要があることが示唆された.
著者
安藤 悦子
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

<結果>上記研究テーマに基づき、半構成的インタビューガイドを用いてインタビューを実施した。対象者は16家族20名(男性8名・女性12名)。患者死亡からの経過年数は8ヶ月〜9年。インタビュー時間は35分〜125分であった。(1)ターミナル期にあるがん患者の家族が認知する看護師のケアリングは、【患者が人として大事にされる】【患者の身体的苦痛が和らぐ】【家族も気にかけてもらえる】【自由度を広げる療養環境】【物腰が柔らかい】などで、それらは【ちょっとしたことでも頼みやすい】【任せられる安心】を生み、【やらなければならない負担の軽減】【患者は幸せだった】という家族の満足感につながっていた。(2)逆にケアリングとならなかった看護師の関わりは、【患者の苦痛が軽視される】【心のない事務的な対応】【頼んでも拒まれる】などがあり、これらに対しては【仕方がない】【お世話になっているから我慢する】とあきらめていた。(3)直接的な看護師の関わりはなく、看護師不在でケアリングがないは、【医師との対立:治療方針・治療の場の決定】【医師への不信:説明不足】【抱えているものを分かち合えない存在】【自分たちでどうにかする】などがあり、最後まで看護師に役割を期待していなかった。特に【医師との対立・医師への不信】は患者の死後も、【後悔・怒り・わだかまり】を残した。<考察>家族にとっては第一義的に患者に対する看護師の関わりが家族へのケアリングとなっていた。これは家族が患者を自身の分身のように感じ、患者の苦痛や患者への応対の一つ一つを自分の痛みとして敏感に反応しているものと考えられる。逆に言えば、看護師の患者に対する関わりが、家族にとっては患者の死後も【患者は幸せだった】と家族の悲しみを和らげる糧となりうることが確認された。また、家族は看護師が考えている以上に、医療者に対して我慢やあきらめを強いられる立場にあり、これらが患者の思いを代弁したくてもできないストレスとなりうることを厳しく自覚することが求められる。看護師不在でケアリングがない【医師との対立・医師への不信】に対し、患者/家族-医師関係の調整において、看護師が患者/家族にとって資源となりうることを看護師側からアピールし、期待される存在として認知されることの重要性が示唆された。
著者
加藤 佑佳 中野 明子 山本 愛 岡村 香織 小海 宏之 吉田 麻美 園田 薫 安藤 悦子 岸川 雄介 寺嶋 繁典
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.721-730, 2011-08-01

2型糖尿病者を対象にProblem Areas in Diabetes(PAID)scaleを実施し,フロア効果がある6項目を除いて因子分析を行ったところ単因子構造が確認された.このPAID尺度とProfile of Mood States(POMS),Tokyo University Egogram New version(TEG)との関連を検証した結果,PAID尺度はPOMSの「Tension-Anxiety」「Depression-Dejection」「Fatigue」との有意な関連がある一方,TEGとは関連がみられなかった.よって,PAIDとPOMSを併せて用いることは,糖尿病の負担感と関連する心理的状態をより詳細に把握することができ,各人に応じた心理的援助を提供する際に有効であると考えられる.