著者
坂上 雅道 山本 愛実
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.2_29-2_40, 2009 (Released:2010-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
2

To survive in changeable circumstances, we have to make appropriate decisions on our behavior. Recent studies have suggested that we have two brain processes to calculate reward values of objects. One is the process coding a specific reward value of a stimulus or event dependent on direct experience. The other enables us to predict reward based on the internal model of given circumstances, including societies, which doesn't necessarily require direct experience. The nigro-striatal network works for the model-free decision and the prefrontal network contributes to the model-based decision. These two networks are cooperative in one occasion and are competitive in another.
著者
小宮山 誠一 目黒 孝司 加藤 淳 山本 愛子 山口 敦子 吉田 真弓
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.336-342, 2002-11-20
参考文献数
13
被引用文献数
4

デンプン含量は,ジャガイモ調理・加工後の調理特性に大きな影響を及ぼす要素である。本試験は,産地および流通段階におけるデンプン含量のばらつきを明らかにするとともに,各種調理法別にデンプン含量で仕分けした試料(デンプン含量12〜16%)を用いて,デンプン含量が調理特性に及ぼす影響について検討を行った。その結果は次のとおりであった。1)個々のいもに対するデンプン含量は,株内,株間および産地間で大きく変動し,その分布幅は6.4〜20.0%であった。2)粉ふきいも,ふかしいも,電子レンジ加熱およびフライドポテトでは,デンプン含量が高いいもほどほくほく感が増し,食味総合評価は高かった。肉じゃがおよびカレーに見られる煮物調理では,デンプン含量の低いいもほど煮くずれが少なく,食味総合評価は高かった。ポテトサラダは,デンプン含量の高いいもの評価が高かった。3)デンプン含量が高いいもほど遊離アミノ酸含量は低く,とりわけうま味を呈するグルタミン酸含量は,デンプン含量15%以上で顕著に減少した。
著者
小宮山 誠一 目黒 孝司 加藤 淳 山本 愛子 山口 敦子 吉田 真弓
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.336-342, 2002-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
13

We examined the relationship between the starch content of potato and its cooking quality. Potato tubers were assigned according to their starch content from 12% to 16%. They were cooked by different methods and a sensory evaluation then carried out. In the case of boiling, steaming, frying and heating in a microwave oven, potato with the high starch content (HS) was evaluated as having a richer and more mealy feeling and better taste than potato with the low starch content (LS). On the other hand, in curry and nikujaga (pototo stewed with pork), LS was evaluated to be better than HS because of less collapse after cooking. In potato salad, HS was evaluated more highly than LS in taste only by the manufacturers' panel. The glutamic acid content was particularly low in potato tubers with a starch content of 15% and above.
著者
小海宏之 前田明子 山本愛 加藤佑佳 岡村香織 園田薫 安藤悦子 岸川雄介
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.91-96, 2010-03

本研究は、小海ら(2000 ,2004,2008)による日本語版 Mini-Mental State Examination(MMSE)の検出力と特異性を明らかにした。この MMSEの cut-off値を 24/25点とした場合、感度 0.837、特異度 0.957となり、臨床群( amnestic Mild Cognitive Impairment; MCIと probable Alzheimer's Disease; ADを含む)と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有することが示唆された。しかし、同様に 26/27点を cut-off値とした場合、感度 0.889、特異度 0.739となり、amnestic MCI群と健常群を判別するためのスクリーニングテストとして、十分な検出力と特異性を有するとは言い難く、他の認知機能検査による精査を行う必要性があることが示唆された。
著者
甲斐 太陽 永井 宏達 阪本 昌志 山本 愛 山本 ちさと 白岩 加代子 宮﨑 純弥
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0792, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】運動場面におけるアイシングを用いた寒冷療法は,これまで広く行われており,運動後の疼痛の制御や,疲労の軽減,その他急性外傷による炎症や腫脹の軽減などが目的となっている。運動後のアイシングについては,オーバーユーズによる急性炎症反応の抑制や,組織治癒の際に伴う熱,発赤などを減少させる効果が確認されている。具体例としては,投球後の投手が肩をアイシングすることがあげられる。一方で,筋力トレーニング実施後に生じる副次的作用として遅発性筋痛があるが,トレーニングした筋そのものに対してのアイシングは,その効果に関する報告が少なく,また統一した見解が得ているわけではない。アイシングによる遅発性筋痛への影響を明らかにすることは,運動療法を効率よく行う上でも重要な知見となる。本研究では,アイシングによる寒冷療法は,遅発性筋痛の軽減に関与するのかを検証することを目的とした。【方法】対象は健常若年者29名(男14名,女15名18.6±0.9歳)とした。層化ブロックランダム割り付けにより,対象者を介入群14名,対照群15名に分類した。研究デザインは無作為化比較対照試験とし,両群に対して遅発性筋痛が生じうる負荷を加えた後に,介入群にのみアイシングを施行した。対象者の非利き手側の上腕二頭筋に遅発性筋痛を生じさせるため,ダンベル(男性5kg,女性3kg)を用いた肘関節屈曲運動を動作が継続できなくなるまで実施した。運動速度は屈伸運動が4秒に1回のペースになるように行い,メトロノームを用いて統制した。運動中止の判断は,肘関節屈曲角度が90°未満なる施行が2回連続で生じた時点とした。3分間の休憩の後,再度同様の運動を実施し,この過程を3セット繰りかえした。その後,介入群には軽度肘関節屈曲位で上腕二頭筋に氷嚢を用いてアイシングを20分間実施した。対照群には,介入群と同様の姿勢で20分間安静をとるよう指示した。評価項目はMMT(Manual Muscle Test)3レベル運動時のVAS(Visual Analog Scale),および上腕二頭筋の圧痛を評価した。圧痛の評価には徒手筋力計(μ-tas)を使用した。圧痛の測定部位は肩峰と肘窩を結んだ線の遠位3分の1を基準とし,徒手筋力計を介して上腕二頭筋に検者が圧追を加え,対象者が痛みを感じた時の数値を測定,記録した。VASは介入群,対照群ともに課題前,課題直後,アイシング直後,その後一週間毎日各個人で評価した。圧痛は課題前,課題直後,アイシング直後,実験一日後,二日後,五日後,六日後,七日後に評価した。圧痛の評価は同一の検者が実施し,評価は同一時間帯に行った。実験期間中は介入群,対照群ともに筋力トレーニング等を行わず,通常通りの生活を送るよう指導した。統計解析には,VAS,圧痛に関して,群,時間を要因とした分割プロットデザイン分散解析を用いた。交互作用のみられた項目については事後検定を行った。なお,圧痛の評価は,級内相関係数(ICC)を算出し信頼性の評価を検討した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿って,対象者には研究の内容,身体に関わる影響を紙面上にて説明した上,書面にて同意を得た。【結果】今回の研究では,最終評価まで脱落者はおらず,全参加者が解析対象となった。圧痛検査のICC(1,1)は0.83であり,良好な信頼性を有していた。VASに関しては,介入群において,疼痛が有意に抑制されていた(交互作用:p<0.05)。VASにおける群間の差が最も大きかったのは,トレーニング三日後であり,介入群4.8±3.1cm,対照群6.8±1.7cmであった。圧痛に関しては,有意ではないものの中程度の効果量がみられた(交互作用:p<0.088,偏η2=0.07)。圧痛における群間の差が最も大きかったのはトレーニング二日後であり,介入群76±55N,対照群39±28Nであった。【考察】本研究の結果,筋力トレーニング後にアイシングを用いることによって,その後の遅発性筋痛の抑制に影響を与えることが明らかになった。遅発性筋痛が生じる原因としては,筋原線維の配列の乱れや筋疲労によって毛細血管拡張が生じることによる細胞間隙の浮腫および炎症反応などが述べられている。一方,アイシングの効果としては血管が収縮され血流量が減少し,炎症反応を抑えることができるとされている。今回の遅発性筋痛の抑制には,アイシングにより血流量が減少され,浮腫が軽減されたことが関与している可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】運動療法後のアイシングにより遅発性筋痛を抑制することができれば,その後のパフォーマンス低下の予防や,よりスムーズなリハビリテーション介入につながる可能性がある。今後,これらの関係性を明らかにしていくことで,理学療法研究としての意義がさらに高くなると考える。
著者
山本 愛子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.42-51, 1995-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
6 3

The present study was designed to investigate developmental changes of self-regulation in preschool children. Seventy-five nursery school children of 4, 5, 6-year-old (41 boys and 34 girls) were required to answer a set of questions as to how they would feel and behave when they were provoked by their peers. The variables manipulated were the subjects' familiarity with their peers and uncomfortability of the conflicting situations. The results indicated that the quality of self-assertive strategy changes with age from egoistic responses to social responses. It was also found that the development of the self-assertive strategy chosen varied according to the subjects' famiriarity with their peers and the uncomfortability of the conflicting situations. Implications of these findings were discussed in terms of the development of social cognition.
著者
福田 智子 山本 愛奈 李 羽 耕三寺 華蓮 大久保 孝晃 徐 嘉楓 胡 淑雲 フクダ トモコ ヤマモト アイナ リー ユー コウサンジ カレン オオクボ タカアキ ジョ カフウ Fukuda Tomoko Yamamoto Aina Li Yu Kosanji Karen Okubo Takaaki Xu Jiafeng Hu Shuyun
出版者
同志社大学文化情報学会
雑誌
文化情報学 = Journal of culture and information science (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.38-28, 2019-03

本稿は、「同志社大学文化情報学部蔵『源氏絵所屏風言葉書』翻刻と考察(桐壺巻~野分巻)」に引き続き、当該書の御幸巻から幻巻の本文系統と、それが指し示す源氏絵の図柄を類型に照らして考察するものである。本文は、北村季吟『湖月抄』(延宝三年〈一六七五〉刊)と一致する帖もあるが、青表紙本系統の三條西家本との共通性が目立つ。また、本書が示す図柄を『源氏物語』承応三年(一六五四)版本の挿絵と比較すると、共通するものも多いが、幻巻では、紫上の死に関連した通常の類型的な場面を避けるといった図柄の選択が行われていると考えられる。資料紹介
著者
梅田 知季 宮崎 肇 山本 愛 彌冨 道男 山口 雅篤 松添 直隆
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.193-199, 2006 (Released:2007-10-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

ナス(Solanum melongena L.)果皮の色素細胞の分布およびアントシアニンの存在様式と果実の光環境との関係を調べるために,暗黒処理を施した果実を顕微鏡で観察した.ナス果実の着色と光環境との関係は品種・系統間で異なり,果実に暗黒処理を行うと全く着色しない光感受型,着色への影響が少ない非光感受型,着色は低下するがある程度の着色がみられる中間型の3タイプに分類できた.光感受型の品種では,対照区(無被覆)で果皮に色素細胞がみられたが,暗黒区では全くみられなかった.非光感受型の品種では対照区,暗黒区とも色素細胞がみられた.中間型の品種では,対照区で色素細胞がみられたが,暗黒区では色素細胞と全く着色がみられない細胞が混在していた.このことから,光感受型では全ての細胞,中間型では一部の細胞において,アントシアニン生成経路に光が必要であることが明らかになった.従って,ナスの果色は,細胞内のアントシアニン量と果皮組織の色素細胞の分布(密度)量に影響すると考えられた.果皮の色素細胞中のアントシアニン様液胞内含有物(AVIs)は主要色素がナスニン(delphinidin 3 -p-coumaroylrhamnosylglucoside-5-glucoside)である品種・系統に特異的に観察された.また,AVIsの存在は果色に大きく影響することが示された.
著者
山本 愛佑子 渡辺 裕
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.6, pp.1-2, 2014-02-14

HTML5 では,ビットマップ形式のデータを扱う Canvas,ベクター形式のデータを扱う Inline SVG がサポートされ,JavaScript ベースで HTML 内に図形や画像を直接記述できる.しかし,Flash,Java などのプラグインを使用した場合と比べ,描画パフォーマンスが劣るという問題点がある.本研究では,Canvas および SVG における従来の描画パフォーマンス高速化手法の比較を行った.さらに,描画する要素に対して最適な手法を自動選択し,適切な手法で描画するアルゴリズムを提案する.In HTML5, Canvas dealing with data of the bitmap and Inline SVG dealing with Data for vector are supported. Thus we can directly describe image or graphic in HTML, by the JavaScript. However, drawing performance is not good compared with the plugins such as Flash or Java. In this paper, we sinvestigate the performance of traditional approaches to increase drawing speed. Finally, we propose an algorithm to select the best approach automatically.
著者
山本 愛 林 美恵子 飯田 智子 多田 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.75, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに>術後の患者は、術前からの絶飲食、手術中の挿管による口腔内の乾燥、副交感神経遮断薬使用による分泌物抑制、また術後の発熱などによる不感蒸泄など、さまざまな要因で口渇が生じやすい。従来、当病棟では口渇時は水による含嗽をすすめている。しかし、術後口渇を訴える患者は多い現状にある。そこで今回、唾液の分泌作用・清涼作用のあるレモン酢に注目し、口渇への効果があるか検討した。<研究方法> 目的:口渇に対するレモン酢の効果を知る。 期間:平成17年12月1日から平成18年2月28日。 対象:全身麻酔下で消化器開腹手術を受けた、術後2から3日目の絶飲食期間の患者11名。 方法:1.患者11名に対し、レモン酢を40倍に希釈したレモン酢水(以下40倍レモン水)・50倍に希釈したレモン酢水(以下50倍レモン水)・水道水の3種類での含嗽を実施。実施後は、患者が口渇緩和になると感じた含嗽を行う。希釈倍数は、無作為に選出した看護師に2種類のレモン水含嗽を行い、40倍をすっぱいと感じ50倍をすっぱいと感じなかった結果から決定した。 2.含嗽後、アンケートに沿って聞き取り調査を行う。<結果>口渇は10名が感じ、口渇のなかった1名はレモン水含嗽を行うことで口渇だったことが分かったと答えている。2種類のレモン水含嗽で3名が口渇は残ると答え、「早く飲みたい」という意見が強かった。全員が50倍レモン水での含嗽を続けていた。水道水は、「味がなくすっきりしない」「口の中がすぐに乾燥する」、50倍レモン水は口腔内の潤いを感じたと全員が答えていた。50倍レモン水は、味覚において不快に感じた人はおらず、「すっきりする」「さっぱりして気持ちが良い」と全員が答えた。しかし、40倍レモン水はレモン特有の酸味が強くなり後味が悪くなると3名が答えた。また2名の患者が氷を入れて含嗽を行っており「すっきりする」「生き返ったようにな」との言葉が聞かれた。<考察>50倍レモン水で全員が口腔内の潤いを感じたことは、レモン酢に含まれるクエン酸や酢酸の唾液分泌効果によるものと考える。一時的とはいえ口渇への緩和につながったのではないか。今回、絶飲食を強いられた患者にとって飲めないというストレスが生じている。レモン水含嗽を行っても口渇が生じたことは「飲みたい」という意識が高まっているからだと考える。術後苦痛が強いなか、患者の言葉からも、口渇という苦痛を緩和させることができ、同時にストレスも緩和できたと考える。今回、すっぱいと感じる40倍レモン水で不快を感じたことから、レモン特有の酸味を強くすることは、術後の患者に刺激を与え不快を生じ逆効果とわかった。術後回復過程をたどる患者に、絶飲食中に爽快感を得る50倍レモン水含嗽は有効であった。また、氷を入れて含嗽を行っていることから、口渇緩和と温度の関係も調べていけたのではないか。<まとめ>1.50倍レモン酢水は、一時的な口渇緩和での効果がみられ、口渇という苦痛の緩和にもつながる。2.術後の患者には、40倍レモン酢水の強い酸味で不快を与える。
著者
加藤 茂明 河野 博隆 川口 浩 山本 愛一郎 山田 高嗣 中村 耕三 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

転写共役因子の骨組織における機能を解明する目的で、SRC-1(Steroid receptor coactivator-1)遺伝子欠損(KO)マウスを作出し、その骨組織の解析を昨年に引き続き行った。昨年、SRC-1KOマウスは、雄・雌ともに、代謝回転が亢進した高回転型の骨量減少を呈し、この原因はアンドロゲン及びエストロゲンによる骨量維持作用が抑制されているためであることを報告した。この骨量減少について、24週齢の大腿骨を用い、pQCTとμCTを用い、更に詳細に検討を行ったところ、海面骨の骨量は約40%低下していたにも関わらず、皮質骨の骨量は野生型(WT)とあまり差がみられなかった。海面骨・皮質骨におけるエストロゲン受容体(ER)の2種類のisoformの発現を免疫染色で確認したところ、海面骨ではERα・ERβ共に同程度に発現していたにも関わらず、皮質骨では主にERαのみが発現していた。骨芽細胞の培養系において、SRC-1はERβの転写活性は上げるが、ERαの転写活性にはあまり影響がみられなかったことから、海面骨・皮質骨でみられた表現型の違いは、SRC-1が主にERβによる骨量維持作用に関与しており、ERβの発現が多い海面骨で主に機能しているためと考えられた。雄においても、骨量の維持はアンドロゲン受容体(AR)のみでなく、ERにも依存していることが明らかになっており、ERのisoformの局在の違いが、雌同様に海面骨・皮質骨における表現型の違いを生じていると考えられた。また、KOで観察された骨量減少は、12週齢の時点では有意差がみられず、高齢化に伴い骨量減少が顕著になっていることが明らかとなった。これは、高齢化に伴い、フィードバック機構によって上昇した性ホルモンがシグナル伝達の障害を代償しきれなくなっているためと考えられた。また、性ホルモンと同じステロイドホルモンの一種であるプレドニゾロンの負荷実験では、骨量減少がWTとKOで同程度に見られたことより、SRC-1のグルココルチコイドシグナルへの関与は小さいことが明らかになった。
著者
河野 博隆 中村 耕三 山本 愛一郎 川口 浩 加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

男性ホルモン・女性ホルモンそれぞれの骨量維持作用及び骨量の性差については、これまで不明な点が多く残されていた。主要男性ホルモンであるテストステロンが男性ホルモン受容体(AR)を介して機能しているばかりでなく、アロマターゼによって女性ホルモンに変換されてERを介しても機能する代謝系を持つことが、性ホルモンそれぞれの骨代謝機能に関する解釈を複雑にする一因となっていたと考えられる。我々はCre-loxP systemを用いて、従来の標的遺伝子組み替え法では不可能であった雌雄の男性ホルモン受容体遺伝子欠損(ARKO)マウスを作出した。骨組織を解析したところ、雄性ARKOマウスは雌雄両方の同胞野生型(WT)マウスに比べて、高代謝回転型の著しい骨粗鬆化を呈していた。これに対して、雌性ARKOマウスの骨量は雌性WTマウスと同等であり、骨量減少は見られなかった。雄性ARKOマウスの去勢実験からは骨代謝を調節している男性ホルモンは副腎由来ではなく精巣由来であることが示唆された。また、性ホルモンの負荷実験結果から、女性ホルモン受容体を介さない男性ホルモンシグナル固有の骨量維持作用が明らかとなり,雄性個体の骨量維持に男性ホルモンと女性ホルモンの両者が関与していることが定量的に示された。初代細胞培養系の解析では、男性ホルモンの骨量維持作用は、男性ホルモンが破骨細胞に直接作用するのでなく、骨芽細胞の破骨細胞形成支持能を抑制することで発揮されることが示された。
著者
白井 英子 小川 貴代 吉田 礼維子 山本 愛子
出版者
天使大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、食行動上のプロセスに障害がある在宅独居高齢者の食行動と食満足との関連性を明らかにし、さらに集団的介入を試み、その効果を質的に分析した。その結果、以下の事項が明らかになった。1.在宅障害高齢者の食行動は、入手行動では「自分で買い物をする」「買ってきてもらう」「野菜づくり」「買い物に行けない理由」「食材入手の要因」、調理行動では「自分でつくる」「つくってもらう」「自分でつくる意欲」「調理できない理由」「調理サポートの受けとめ」、摂食行動では、「自分の手で食べたい」「食事環境」「食べる理由」から構成されていた。2.食満足は「おいしい」「食べたい」「食の伝承」から構成され、食満足に影響する食行動の要素は、「自分の手で」「好きなもの」「食の情報」「味へのこだわり(自分の味・昔の味)」であった。3.食満足に影響する調理・摂食行動の要素は、「温かいもの」「食べたいとき」「誰かと食べたい」「外で食べたい」であった。これらの要素を充足する方法としてグループで調理をして一緒に食べる集団的介入(食事会)を実施した。その結果、食事会では、「みんなでつくる」「みんなで食べる」という共同作業と場の共有から「楽しい」「おいしい」体験が得られ、それらが「つくる意欲」に関連しており有効であった。さらに、定期的な開催の要望があり、生活の意欲にも影響を及ぼしていることが明らかになった。4.本研究の対象は、都市環境で生活している独居高齢者で厚生労働省生活自立度(寝たきり度)判定のJとAランクにある比較的障害が軽度である者であった。今後、障害の程度が重度である高齢者に対する食満足を高めるための介入方法の検討、在宅障害高齢者を取り巻く地域環境の差を考慮した高齢者の食生活の質を高める援助策を検討する必要がある。
著者
加藤 佑佳 中野 明子 山本 愛 岡村 香織 小海 宏之 吉田 麻美 園田 薫 安藤 悦子 岸川 雄介 寺嶋 繁典
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.721-730, 2011-08-01

2型糖尿病者を対象にProblem Areas in Diabetes(PAID)scaleを実施し,フロア効果がある6項目を除いて因子分析を行ったところ単因子構造が確認された.このPAID尺度とProfile of Mood States(POMS),Tokyo University Egogram New version(TEG)との関連を検証した結果,PAID尺度はPOMSの「Tension-Anxiety」「Depression-Dejection」「Fatigue」との有意な関連がある一方,TEGとは関連がみられなかった.よって,PAIDとPOMSを併せて用いることは,糖尿病の負担感と関連する心理的状態をより詳細に把握することができ,各人に応じた心理的援助を提供する際に有効であると考えられる.