著者
星住 英夫 宮縁 育夫 宮城 磯治 下司 信夫 宝田 晋治
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.91-112, 2022-03-31 (Released:2022-04-26)
参考文献数
71

Aso volcano produced four huge ignimbrite-forming eruptions named Aso-1, 2, 3 and 4 in ascending order, among which Aso-4 is considered the largest eruption in Japan in the last 1 million years. This paper describes the tephra sequence between the Aso-4 and Aso-3 eruptions (Aso-4/3 tephra group). The reconstruction of the eruptive history for Aso-4/3 tephra group presented here provides a valuable contribution to the understanding of caldera volcanism by outlining the preparatory processes of a catastrophic ignimbrite eruption. The eruption sequence of the Aso-4/3 tephra group, which is composed of at least 37 units of pumice-fall, scoria-fall, and ash-fall deposits, is divided into five stages. Stage 1 is characterized by the eruption of mafic scoria (VEI 3-4) during 133-114.1 ka, after the eruption of Aso-3. Stage 2 is characterized by the frequent eruptions of mafic scoria and ash (VEI 3-4) during 114.1-108.4 ka. The magma composition became more felsic during explosive eruptions (VEI 3-4) from 108.4-104.7 ka (Stage 3). During the most active stage from 104.7-97.7 ka (Stage 4), voluminous felsic pumice-falls erupted (VEI 4-5). The ABCD tephra (97.7 ka) is the largest plinian pumice-fall deposit of Aso volcano. Stage 5 (97.7-88 ka) is a relatively dormant period, during which only a biotite dacite pumice-fall was deposited (VEI 4). The low number of eruptions during stage 5 suggests that the magma supply rate decreased during the 10 thousand years that preceded the Aso-4 ignimbrite eruption. The estimated total tephra volume for the Aso-4/3 tephra group is 23 km3, which corresponds to 10 km3 in dense rock equivalent (DRE). The estimated the long-range tephra discharge rate (0.23 km3 DRE/ky) is similar to that in the post-caldera stage of Aso-4 (0.2 km3 DRE/ky).
著者
吉本 充宏 宝田 晋治 高橋 良
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.Supplement, pp.S81-S92, 2007 (Released:2009-01-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 6

国内でも有数の爆発的噴火を繰り返す北海道駒ヶ岳火山の最新活動期の噴出物を中心に,爆発的噴火の堆積物の特徴や構造,それらの織りなす地形を見学するとともに,日本で最初にハザードマップが作成された火山防災先進地域の活動を視察する.
著者
宝田 晋治 星住 英夫
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

火砕流は,火山体周辺に多大な災害をもたらす.特に大規模火砕流の場合は,1883年のクラカタウ火砕流による犠牲者数36,400人などで明らかなように被害も甚大となる.国内の大規模火砕流としては,90kaに発生した阿蘇4火砕流は到達距離が 160km以上に達しており,分布・体積の正確な把握や流動堆積機構の解明が重要となってきている.阿蘇4火砕流の詳細な影響範囲の把握のため,既存文献,ボーリングデータを元に,現地調査結果を加え,堆積物の分布を明らかにした上で.噴火当時の復元分布図を作成した.また,5kmのメッシュごとに層厚を復元し,高精度に噴出量を算出した.さらに,現地調査により,大規模火砕流堆積物の岩相変化.軽石及び岩片の最大粒径の変化に基づく,流動堆積機構の検討を行った.現存する堆積物の分布については,産総研の5万分の1地質図幅を基本とし,刊行されていない地域に関しては20万分の1地質図幅や表層地質図の他,出版済みの文献を参照した.これらから阿蘇4火砕流堆積物の分布をGIS上でトレースし,現存分布図を作成した.また,噴火直後の推定分布図は.地形状況と噴火時点での地質を考慮した上で,文献情報,ボーリング情報を元に再現した.現存堆積物の分布は,火砕流が全方向に広がり,給源から北北東160km以上の萩市周辺にも到達し,南は,人吉盆地,宮崎市周辺まで到達したことを示している.現存堆積物の面積は,約2,500km2となった.層厚については,地質図,露頭データ.ボーリング柱状図を用いて,火砕流堆積物の上端高度,下端高度を5kmメッシュ毎に数点以上読み取った上で,メッシュごとの平均層厚を算出した.平均層厚は,カルデラリム周辺で最大約100mを示し,中流域では,0.2〜50m前後,下流域では0.01〜10m程度となった.GISソフトウェア上で,メッシュ毎の分布面積を算出し.層厚を乗じてメッシュ毎の見かけ体積を算出した.その上で,溶結,非溶結の量比などを勘案した上で,メッシュ毎の堆積物の平均密度を算出し,火砕流堆積物の体積(DRE)を算出した.その結果,降下テフラ分を除く阿蘇4火砕流堆積物の体積は,20-60km3 (現存体積),50-140km3(復元体積)となった.阿蘇4火砕流の流動堆積機構の解明のため,火口近傍から160km遠方の露頭まで,カルデラから東方向と北北東方向の流域で現地調査を行い,岩相変化,軽石と岩片の最大粒径の変化を明らかにした.最大粒径は,ラグブレッチャ以外の火砕流本体に対して,各露頭毎に軽石と岩片についてそれぞれ10個長径と短径を測定し,最大と最小のサンプルを除いた8サンプルの算術平均から,各地点での最大粒径を求めた.流走距離ごとに,軽石の最大粒径をプロットする(図)と,給源(カルデラの中心付近, 中岳第1火口を仮定)から16kmまでの地点では,3〜9cmと比較的小さく,17〜20km地点では約28cm,26km地点の火砕流到達前の原地形の傾斜変換点付近(小国町周辺)では47cmと最大値を示し,その後,72km地点まで次第に減少し,3cmとなる.海を渡った山口県内では,最大粒径は,132〜162km地点で0.4〜0.9cmと非常に小さくなる.岩片の最大粒径は給源から6.5km地点では1〜2.5cmと比較的小さく,16km付近で11.2cmと最大になり,その後は単調に減少し,72km地点で0.6-0.9cmとなり,北九州の117km地点の折尾の露頭では,0.3cmと非常に小さくなる.山口県内の露頭では,肉眼で測定可能な岩片はほとんど含まれていない.これらの結果は予察であり,今後より詳細なユニット対比,岩相変化,粒径変化等の現地調査を予定している.給源付近で軽石や岩片の最大粒径がやや小さいことは,大規模火砕流発生時に,この付近は噴煙柱の内部もしくは近傍で,乱流度が高く.火砕流の運搬能力が十分高かったことを示唆している.軽石の最大粒径が傾斜変換点の26km地点付近で最大となっていることは,火砕流が傾斜変換点に達し,ハイドローリックジャンプ等の現象で急激に運搬能力が落ちたため,運びきれなくなった軽石を多量に落としたことが原因である可能性が高い.軽石や岩片の最大粒径が単調に減少することも,乱流状態の火砕流の基底部から順次より大きい軽石や岩片が堆積したと考えることが可能である.堆積物の内部構造として,火砕流の内部には,逆級化した層厚20〜70cm程度の弱い層理構造が見られる場合がある.このことは,軽石同士の堆積時の相互作用を示唆し,火砕流の基底部に比較的高濃度な密度流が形成され,堆積サブユニットを形成しつつ順次堆積したモデルでうまく説明できる.海を渡った山口県内の火砕流は層厚10cm〜6m程度であり,軽石の最大粒径は1cm以下で非常に小さく,肉眼で認識できる岩片はほとんど含まれていない.部分的にやや高度の高い部分では,サージ状の岩相を示す.このことは,遠方まで運ばれた火砕流は,最後まで残った比較的低密度で細粒部分のみが160km以上の地点まで到達したことを示唆する.
著者
宝田 晋治
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.11-23, 1991
被引用文献数
3 3

Iwasegawa debris avalanche deposit is distributed along river channels in the southeastern foot of Tashirodake Volcano, northern Japan. The volume of the deposit is estimated to be 0.1 km<sup>3</sup>. Debris avalanche block (DB) in Iwasegawa debris avalanche deposit is composed of materials, e. g. altered tuff breccia, lava with jigsaw cracks, derived from the source area ; and materials captured during flowage from the basement formations and river deposits. DB and debris avalanche matrix (DM) show lateral variation, where the maximum size of DB decreases, and sorting of DM becomes better from the source area towards the distal end. Volcanic clasts within DM show normal grading. However, wood fragments within DM show reverse grading. The result of preferred orientation measurements on 273 pieces of wood fragments coincide with the local flow direction. Plug flow model is used to explain the flow mechanism for the Iwasegawa debris avalanche, wherein a rigid plug and a laminar boundary layer exist as distinct parts of the flow. As the Iwasegawa debris avalanche flowed down the steep slope at high speed, clasts of basement formations were eroded and incorporated into the laminar boundary layer under a strong shear stress field. DM was produced by shear stress either in between two DB or DB and basement formations. Fragile DB were carried within the rigid plug without any major ruptures. The size of DB decreases down stream due to the progressive collision of each DB. Collision between DB and basement formations permitted additional fracturing during flowage. Wood fragments included within the DM in the laminar boundary layer were rotated and aligned themselves parallel to the flow direction. Lithic clasts having higher densities than those around DM tend to settle toward the bottom, whereas wood fragments of lower density tend to float toward the top of the flow. When the shear stress in the laminar boundary layer became smaller than the yield strength of the flow due to deceleration, Iwasegawa debris avalanche was freezed and stopped thixotropically.
著者
工藤 崇 宝田 晋治 佐々木 実
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.271-289, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
56
被引用文献数
14 12

北八甲田火山群は11の小規模成層火山体から構成される. 本火山群は約40万年前から活動を開始した. 噴出中心の位置は時間とともに中央部に収束する傾向がある. 活動様式は溶岩流の流出に卓越し, 水蒸気噴火, ブルカノ式噴火およびストロンボリ式噴火による小規模な降下火砕物および火砕流を伴う. 27~17万年前の間には噴出量が0.1 km3以上の比較的規模の大きい火砕噴火を数回起こした可能性がある. 本火山群の総噴出量は15 km3, 長期的噴出率は0.04 km3/kyである. 噴出率は40~10万年前で比較的高く, 10万年前以降では低くなる. 噴出率および活動様式の時間変化から, 本火山群の火山活動のピークは40~10万年前の間にあったと考えられる. これらの時間変化はマントルダイアピルの冷却過程と調和的であり, ダイアピルモデルを仮定すれば, 本火山群の現在の活動は終息へと向かいつつある状態と解釈可能である.
著者
吉本 充宏 古川 竜太 七山 太 西村 裕一 仁科 健二 内田 康人 宝田 晋治 高橋 良 木下 博久
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.10, pp.595-606, 2003-10-15
被引用文献数
5 18

鹿部冲の海底に分布する北海道駒ヶ岳火山1640年の岩屑なだれ堆積物を調査した音波探査の結果,海底岩屑なだれ堆積物の分布の末端部を確認することに成功したこれらは溶岩流などに認められる急勾配の末端崖は示さないものの,傾斜の変化を示す海域に分布する流れ山は岩屑なだれ堆積物分布末端部では存任せず,流走距離に反比例して規模・分布頻度が小さくなる傾向を示す海域における岩屑なだれ堆積物の分布は,主方向が北東方向と東方向の双頭状の分布を示し,給源からの最大水平流走距離は約20km,最大幅は約15km,分布面積は約126km^2であるH/L比は0.06であり,海底を流走した岩屑なだれは同規模の陸上岩屑なだれより流動性が高い傾向がある実際に海中に流入した体積は,探査から求めた海底地形データによって見積もった体積に,薄く広がった部分と流れ山の体積を加えた0.92〜120km^3と見積もられた