- 著者
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宮城 磯治
圦本 尚義
- 出版者
- The Volcanological Society of Japan
- 雑誌
- 火山 (ISSN:04534360)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.5, pp.349-355, 1995-10-31 (Released:2017-03-20)
- 参考文献数
- 32
- 被引用文献数
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4
日本を含む島弧の火山では,しばしば爆発的な噴火が見られる.マグマ中の揮発性成分(主に水)の飽和・発泡・膨張にともなうマグマの急激な放出が,それらの要因である.火山噴火の理解の為には,マグマ含水量,マグマヘの水の溶解度,そして噴火時の脱水過程を理解する必要がある.しかし,噴出時の脱水のため,噴出前の含水量を火山岩から読みとることはきわめて困難である.これまでのところ,斑晶中のガラス包有物の含水量を分析することが,マグマ含水量を見積もるための最も有効な手段であると考えられる.ただし,斑晶中のガラス包有物の大きさは通常直径100μm以下であるため,微小領域の正確な含水量測定法が必要である.そこで本研究では,二次イオン質量分析計を用いた含水量分析の手法を開発した.これまでの研究により,ガラスの組成が異なると水素の二次イオン生成率も変化することが知られており,この手法の問題点であった.しかし本研究では,ガラスのシリカ濃度を用いてその生成率が補正できることを示し,この問題点を克服した.これにより玄武岩質〜流紋岩質ガラスの微小部分(半径約5μm)の含水量を正確(約±0.5wt.%)に分析する手法が確立された.この手法の応用として姶良カルデラの約2万2千年前の噴出物から取り出した斑晶メルト包有物の分析を行ったところ,5~7wt.%の含水量が示された.これはAramaki(1971)の水熱合成実験により得られている水分圧と水の溶解度から推定される含水量と良く一致する.