著者
村田 修 宮下 盛 那須 敏朗 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.145-151, 1995-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
12

マダイの卵にクロダイ精子を媒精して作出した交雑魚 (マクロダイと呼ぶことにする) の養殖品種としての特性を明らかにする目的で, その成長, 生残率, 外部形態, 環境ストレス耐性などについてマダイおよびクロダイ両種と比較した。(1) 媒精した浮上卵の受精率はクロダイ>マダイ>マクロダイの川頁, 孵化率はマダイ>クロダイ・マクロダイの順であった。(2) 孵化後30日目までの生残率はマダイ>マクロダイ>クロダイの順であったが, その後71日目から140日目までのそれはマクロダイおよびクロダイの方がマダイよりも著しく高くなった。(3) 成長は孵化後約8ヶ月目まではマクロダイ>マダイ>クロダイの順であったが, 満1年目からはマダイの方がマクロダイよりも徐々に大きくなり, 満3年目におけるマクロダイの成長はマダイよりは遅いがクロダイよりは早く両親の中間となった。(4) 環境ストレス耐性では, 水温上昇および低下, 比重低下, 並びに溶存酸素低下に対してマクロダイはいずれもクロダイよりも弱かったが, マダイよりも著しく強かった。(5) 外部形態や体色などからマクロダイはクロダイに近く父系遺伝が強いことが示唆された。
著者
村田 修 家戸 敬太郎 那須 敏朗 宮下 盛 和泉 健一 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.677-678, 2000-12-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Chemical compositions of the dorsal muscle of hybrids, yellowtail, Seriola quinqueradiata _??_ × goldstriped amberjack S. aureovittata _??_ (termed as YG) and purplish amberjack S.dumerili_??_ × goldstriped amberjack _??_(termed as PG) were compared with each parents fish species. The lipid content of YG was remarkably higher than that of goldstriped amberjack. In collagen content concerning texture, though YG was lower than goldstriped amberjack, it was significantly higher than yellowtail. Crude protein, total extractive nitrogen and collagen content of PG showed the intermediate value of the parents fish species.
著者
宮下 盛 村田 修 澤田 好史 岡田 貴彦 久保 喜計 石谷 大 瀬岡 学 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.475-488, 2000-09-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
42
被引用文献数
2

1987年に採捕したクロマグロ幼魚を親魚まで養成し,成熟年齢と想定した満5歳以降,生殖腺体指数(GSI)の周年変動を調べるとともに,毎年6~8月にかけて自然産卵を観察し,産卵条件を検討した。また,産卵盛期における産卵時刻直前の生殖腺の性状を調べるとともに,卵および精子の構造を電子顕微鏡を用いて観察した。GSIは雌雄とも7月を中心に最大となる傾向を示した。産卵時刻直前の雌個体は,体重21.3kgと小型ながら熟卵を有し,卵巣内の卵径組成は0.8mm以上の卵を約25%含む多峰型を示し,産卵多回性を認めた。自然産卵は満7歳以降,延べ4年にわたり認められた。串本での産卵期は,6月中旬から8月中旬の約2カ月間と推定された。産卵が認められた水温範囲は21.6~29.2℃であり,50%正常孵化率で示す孵化限界水温範囲に対応した。本種の精子は,全長約35μmで,頭部,中片部および尾部から構成され,硬骨魚類の一般的な形態を示した。卵の動物極と思われる位置には直径5μmの卵門が観察され,卵膜表面全体に多数のpit(小孔)が認められた。
著者
村田 修 家戸 敬太郎 石谷 大 那須 敏朗 宮下 盛 山本 眞司 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.75-80, 1997-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
15

1990年3月に作出した交雑魚マダイ♀×クロダイ♂およびマダイ♀×ヘダイ♂を4年間飼育した後, 2月から6月までの生殖腺成熟の様相を, 同様に4年間飼育した両親魚種 (マダイ, クロダイおよびヘダイ) と比較した。その結果, 両交雑魚から摘出した生殖腺は外観的に同時期の両親魚種のそれらに比較して明らかに未成熟であった。両親魚種の生殖腺指数はいずれも4月に最大値となり, その平均値はいずれも8以上の高い値であったのに対し, 両交雑魚のそれは1以下であった。生殖腺組織像から両交雑魚とも精原細胞, 精母細胞, 精細胞および精子形成は観察できたが卵母細胞は認められなかった。以上より, 両交雑魚は雌雄ともに生殖不能すなわち雑種不妊であることが明らかにされた。
著者
宮下 盛
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.947-948, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
3
被引用文献数
21 25
著者
村田 修 宮下 盛 那須 敏朗 熊井 英水
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.145-151, 1995

マダイの卵にクロダイ精子を媒精して作出した交雑魚 (マクロダイと呼ぶことにする) の養殖品種としての特性を明らかにする目的で, その成長, 生残率, 外部形態, 環境ストレス耐性などについてマダイおよびクロダイ両種と比較した。<BR>(1) 媒精した浮上卵の受精率はクロダイ>マダイ>マクロダイの川頁, 孵化率はマダイ>クロダイ・マクロダイの順であった。<BR>(2) 孵化後30日目までの生残率はマダイ>マクロダイ>クロダイの順であったが, その後71日目から140日目までのそれはマクロダイおよびクロダイの方がマダイよりも著しく高くなった。<BR>(3) 成長は孵化後約8ヶ月目まではマクロダイ>マダイ>クロダイの順であったが, 満1年目からはマダイの方がマクロダイよりも徐々に大きくなり, 満3年目におけるマクロダイの成長はマダイよりは遅いがクロダイよりは早く両親の中間となった。<BR>(4) 環境ストレス耐性では, 水温上昇および低下, 比重低下, 並びに溶存酸素低下に対してマクロダイはいずれもクロダイよりも弱かったが, マダイよりも著しく強かった。<BR>(5) 外部形態や体色などからマクロダイはクロダイに近く父系遺伝が強いことが示唆された。
著者
宮下 盛 田中 祐志 澤田 好史 村田 修 服部 亘宏 滝井 健二 向井 良夫 熊井 英水
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.199-207, 2000-06-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
33

クロマグロの卵発生を観察するとともに,発生速度,孵化所要時間および孵化率に及ぼす水温の影響を調べた。水温24℃における卵発生を観察した結果,卵は平均直径0.973±0.025mm(n=60)の分離浮性卵で,産卵直後から卵割期にいたる形状および各発生段階は一般硬骨魚と大差なく,産卵32時間後から孵化した。次に水温22℃から28℃の範囲に4区の水温区を設け,発生速度に及ぼす水温の影響を調べたところ,各発生段階への到達時間は水温が高いほど速く,高温区と低温区の各発生段階への到達の時間差は水温26.5℃以上で小さく,24℃以下で大きかった。16~33℃にわたる種,々の水温下で孵化所要時間と孵化率を調べた。孵化所要時間を対数として水温との関係を直線回帰して表したところ,25℃付近に直線の傾きの変曲点が認められた。桑実期から実験を開始して正常孵化仔魚が得られた水温範囲は19.9~31.5℃,50%以上の正常孵化率を示した水温範囲は21.2~29.8℃であった。また,最も正常孵化率が高く奇形率が低かった水温は25℃付近であった。これらの結果から,クロマグロの卵発生に最適な水温は25℃付近と考えられた。
著者
宮下 盛
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学水産研究所報告 (ISSN:09117628)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-171, 2002-03-25
被引用文献数
19

水産業における国際的重要魚種の一つであるクロマグロは, 資源量の減少から年毎に資源保護の機運が高まりつつあり, 放流および養殖用の人工種苗生産技術の開発が強く求められている。しかしながら, 本種が大洋横断回遊を行い, 親魚が巨大であることと, 擦れ易く扱い難いことから増養殖に関する研究は著しく少なく, 現在まで人工種苗を養殖用に供したという報告がない。クロマグロ人工種苗量産のためには, 安定採卵技法の確立とともに, 仔稚魚の発育に伴う総合的な基礎知見の集積が不可欠であり, これに基づいた飼育技術の開発が重要である。このような観点から, 本研究では養成親魚の産卵生態, 卵発生, 仔稚魚の発育に伴う外部形態および内部形態, 遊泳能力と減耗期などの種苗生産に関わる一連の基礎知見集積を図るとともに, 人工生産魚の養殖用種苗への実用化を試み, 各発育段階における仔稚魚の飼育技法に検討を加えた。I.1987年に採捕した天然産幼魚を親魚に養成し, 成熟および産卵を観察し, 次の結果を得た。(1)串本周辺海域での産卵期は, 6月中旬から8月中旬の約2ヶ月間と推定された。(2)自然産卵が認められた水温範囲は21.6〜29.2℃であった。(3)成熟雌個体の卵巣内の卵径組成は多峰型を示し, 産卵様式は多回性であると断定した。(4)精子は全長約35μmで, 頭部, 中片部および尾部から構成され, 硬骨魚類の一般的な形態を示した。(5)卵は無色透明, 球形の分離浮性卵で, その平均直径は0.926〜1.015mmの範囲を示し, 水温が高いほど小さくなる傾向を示した。II.採卵から孵化までの卵管理技術の基礎となる発生に伴う生物学的, 化学的変化を調べた。1.卵発生過程を観察するとともに, 発生速度, 孵化所要時間および孵化率に及ぼす水温の影響を調べ, 次の結果を得た。卵内発生の各段階は一般硬骨魚と大差なく, 水温24℃の条件下で産卵32時間後から孵化した。50%以上の正常孵化率を示した水温範囲(孵化限界水温)は21.2〜29.8℃, 最高正常孵化率および最低奇形率を示した水温は25℃付近であったことから, クロマグロ卵の最適孵化水温は25℃付近と推察した。2.発生に伴う卵の生化学成分と酵素活性の変動を調べ, 次の結果を得た。発生に伴う卵の水分, 全窒素およびリン脂質含量に変化はなかった。遊離アミノ酸含量は発生に伴って僅かに減少したが, タンパク質含量は徐々に増加した。卵割初期の主要構成成分であるトリグリセライド(TG)含量は, 嚢胚後期以降急激に減少し, 孵化直前には初期の1/3に達したことから, 主にTGを卵発生中のエネルギー源として消費することがわかった。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ, アラニンアミノトランスフェラーゼ, クレアチンキナーゼ, 乳酸デヒドロゲナーゼおよびアルカリフォスファターゼなどの活性の変動から, クッパー胞出現前後に器官の分化および形成が促進されることが示唆された。III.仔稚魚を飼育して, 発育に伴う外部形態の変化, 消化器官の形成と酵素活性の変動, 並びに体側筋の発達と酸素消費量の変動を調べた。1.初期発育に伴う外部形態の変化を調べ, 次の結果を得た。孵化仔魚の平均体長(BL)は2.83mmで, 20日目(10.6mm BL)までの成長はマダイと大差なかったが, 以後, 顕著に速くなった。孵化仔魚は約4mm BLまでに, マグロ属の前屈曲仔魚に特有の黒色素胞パターンを発達させた。マグロ類仔稚魚を同定する上で形態上の特徴として役立つ赤色素胞は4.63mm BLで躯幹部背側後部に, 以後, 尾鰭鰭膜, 下顎および下尾骨にそれぞれ出現したが, これらは体長19.72mmまでにすべて消失した。顎歯は5〜6mm BLで出現した。頭部の棘は, おおよそ7mm BLまでに発達し, 38mm BLまでに消失した。脊索末端の屈曲は6〜8mm BL(10日齢前後)で認めた。鰭条数は10mm BL(20日齢前後)で成魚と同数に達し稚魚期へ移行した。鱗の出現は27mm BLで始まった。体各部の相対成長は, 3〜4個の成長屈折点を持つ多相アロメトリーで, 前期仔魚から後期仔魚への移行期, 脊索末端の屈曲期, 後期仔魚から稚魚への移行期に, それぞれ成長屈折点の集中が認められ, 生理生態学的な変化が示唆された。2.稚魚から若魚における外部形態の発育過程を調べ, 次の結果を得た。稚魚期以降の絶対成長(平均体長)は, 既往の種苗生産魚種の何れに比べても著しく速く, 29日齢, 32.5mm;50日齢, 140mmとなり, 串本海域で毎年8月を中心に採捕される幼魚の体長200〜300mmに達するのに要する時間は約2.5カ月であることが分かった。魚体各部の相対成長は, それぞれ体長80〜100mmの間に成長屈折点が集中してみられ, これ以降多くの部位で体長に対する比率が一定となり, 成魚のそれにほぼ等しくなることが分かった。またこの頃, サバ型魚類の特徴である小離鰭の独立および尾柄主隆起縁の発現が観察され, 遊泳行動にも大きな変化が認められたことなどから, 体長80〜100mmが稚魚期から若魚期への移行期に当たることが分かっ