著者
鈴木 圭輔 宮本 雅之 平田 幸一 宮本 智之
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-7, 2015 (Released:2016-12-06)
参考文献数
20

【要旨】レム睡眠行動異常症(RBD)はレム睡眠中の異常行動を特徴とする睡眠時随伴症で、悪夢を誘因とした激しい行動により、自分自身またはベッドパートナーに外傷をきたす。本症は通常、覚醒を促すと夢と行動の内容を想起できることが特徴である。特発性RBDは50歳以降の男性に多く、有病率は一般人口の約0.5%と報告されている。病態機序としてはREM睡眠を調節する脳幹神経核(青斑核、脚橋被蓋核、背外側被蓋核、下外側背側核、巨大細胞性網様核など)およびその関連部位、扁桃体、線条体、辺縁系、新皮質などの障害が推定されている。RBDの診断は睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて筋緊張抑制の障害の検出が必須であるが、PSG前のスクリーニングにRBDスクリーニング問診票が有用である。RBDの治療はクロナゼパムの就寝前投与が有効である。RBDの追跡研究ではパーキンソン病(PD)、多系統萎縮症あるいはレビー小体型認知症(DLB)などのシヌクレイノパチーに移行する症例が多くみられる。さらにRBDは嗅覚障害、色覚識別能障害、高次脳機能障害、MIBG心筋シンチグラフィーの集積低下、経頭蓋超音波にて中脳の黒質高輝度所見などのレビー小体関連疾患(PD、DLB)と共通する所見がみられる。このように、特発性RBDは神経変性疾患とくにレビー小体関連疾患の前駆病態である可能性が高く、神経変性疾患に移行する前の治療介入の可能性に関して注目されている。本稿ではPD、RBDでみられる認知機能障害についても概説する。
著者
宮本 雅之
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.227-238, 2020-10-25

睡眠と記憶(認知機能)との関連について,主に下記の5点について概説した.1.睡眠と記憶との関係をみたとき,長期記憶である手続き記憶と宣言的記憶の統合と定着には睡眠が大きな役割を果たす.2.睡眠不足の状態では,前頭葉の前頭前野が関わる遂行機能に悪影響がみられる.3.不眠は,認知症発症のリスクを高め,アルツハイマー病理のひとつであるアミロイドb の動態にも関与がみられる.4.閉塞性睡眠時無呼吸は,繰り返す閉塞性呼吸イベントに伴う間歇的低酸素血症と睡眠の分断化により,神経心理学的評価などから前頭葉の前頭前野が関わる遂行機能の障害が認められる.若年者や中年者では認知機能低下,高齢者においてはアルツハイマー病など認知症発症のリスク要因となるため,積極的な治療介入が必要である.5.レム睡眠行動障害は,中高年発症の特発性例では,レビー小体病の発症リスク群として重要である.本症ではレビー小体型認知症でみられる神経心理症候である視空間構成能力,視空間学習,錯視,注意,遂行機能,言語性記憶の障害がみられる.またレビー小体型認知症の臨床診断においてレム睡眠行動障害の存在は重要である.
著者
宮本 雅之 鈴木 圭輔 宮本 智之 平田 幸一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.991-993, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

慢性頭痛と睡眠関連疾患は相互に関連があり,その病態の解明と治療介入は慢性頭痛患者の生活の質の向上を図るうえで重要である.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の症候のひとつにmorning headacheがある.国際頭痛分類第2版(ICHD-2)のsleep apnoea headacheと必ずしも一致しないがICHD-3βにより診断の精度が向上すると思われる.またOSASにおいて片頭痛や緊張型頭痛など他の慢性頭痛の併存にも注意が必要である.片頭痛において,下肢静止不能症候群,ナルコレプシー,睡眠時随伴症との関連について報告されており,これらと共通する病態基盤が存在するものと思われる.
著者
宮本 雅之
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.556-560, 2018 (Released:2019-04-22)
参考文献数
38

Both headache and sleep disturbance are common symptoms in clinical practice. When considering the relationship between headache and sleep disturbance, chronic daily headache, especially morning headache, is an indicator of nonspecific sleep disturbance.The relationship between sleep and headache is classified as follows : sleep–triggered or sleep–related headaches, sleep duration induced headache, sleep phase–related headaches, sleep–relieved headaches, dreams and headache and effects of headaches on sleep (Jennum & Jensen, 2002).Primary sleep disorders such as narcolepsy, parasomnia, restless legs syndrome may coexist in patients with migraine. Cluster headache suggests association with obstructive sleep apnea. Morning headache is important as a symptom of sleep apnea headache.Headache and sleep disorders are interrelated, both of which can adversely affect the quality of life of patients. Therefore, clinicians need to recognize the pathophysiology and interrelationship of headache and sleep disorders, respectively, and to evaluate and treat headache and sleep disorders properly.
著者
鈴木 圭輔 宮本 雅之 平田 幸一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1885-1895, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
23
被引用文献数
4 5

高齢者では加齢に伴う変化として,若年者と比べて睡眠相が前進する.睡眠構築では深睡眠が減少し,浅い睡眠となり,その結果中途覚醒,早朝覚醒は増加する.また高齢者では様々な原因で不眠を起こす場合があり,生活の質を低下させる要因となる.そのため,まず治療可能な身体疾患や薬物の関与,原発性睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群,レストレスレッグス症候群,レム睡眠行動異常症)の合併の評価を行うことが重要である.
著者
舟渡 信彦 吉川 耕平 花田 恵太郎 宮本 雅之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1258-1267, 1993-06-15
被引用文献数
9

本論文では、アニメーションの作成・修正を簡便化することを目的としたアニメーション作成支環システムを提案する。本システムは、アニメーションの作成作業の一部である「登場物の動き」の記述を日本語で行うことを可能にする。このためにシステムは、日本語のシナリオを入力とし、(1)アスペクトを用いた登場物の動作間に成り立つ順序関係の抽出、(2)動作に付随する状態変化知識を用いた順序関係を補正するための推論、(3)得られた関係からの事象駆動方式にもとづくアニメーション記述言語プログラムの生成、を行う。日本語こよるシナリオの記述を許すことで、利用者が習得しなければならないシステムに関する知識は軽減される。また、従来のフレームごとの画像を作成する方法に比べて、作成したいアニメーションを直接的に表現することができるため、試行錯誤が容易になる。これらの特徴により、本システムは専門的な知識をもたない利用者が自らアニメーション作成作業を行う場合に有効である。