著者
鈴木 聡 齋藤 涼 岡部 哲也 小方 博之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1151-1161, 2016-04-15

学習・労働などの現場における作業意欲の維持・向上は今日重要な課題となっている.本研究では,計算機環境において,ユーザの無意識下に働きかける形でユーザの作業意欲の維持・向上を図るため,ユーザの周辺視野に身体化エージェント(以下エージェントと略)を呈示し,エージェントからの被視感による作業遂行への影響を検討した.ただし,作業遂行への影響は作業の難易度に依存する点や,呈示されるエージェントの外観の違いは作業遂行へ影響する可能性を考慮する必要がある.そこで,ヒト型のシルエットと身体パーツで表現されたエージェントが,難易度の異なる課題に取り組む際のユーザの作業遂行に与える影響を,外観の異なるエージェントの比較も加えて実験により検討した.その結果,ユーザがエージェントの呈示への気づきの有無の影響もあったが,ヒト型シルエットと身体パーツのエージェントを呈示する条件で作業遂行は悪化した.さらに,その条件の中でも呈示時と非呈示時を比較すると呈示時の方が作業遂行が改善した.加えて,比較対象とした他の外観のエージェントと同様に,エージェントの呈示に気づいたユーザは,呈示中困難な課題に取り組む際に作業遂行が悪化した.以上の結果,特にエージェントの身体パーツの影響の大きさを考慮し,エージェントの周辺視野への呈示を通じたユーザの無意識下の認知過程への介入による作業意欲の制御の可能性について議論する.
著者
安田 晶子 小方 博之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-429, 2021

<p>大学等の高等教育機関におけるe-learning の機会は急速に増加している.それに伴い,単位認定などを目的としたハイステイクスな試験もオンラインで実施する必要が生じてきている.しかしながら実際には,オンラインでのハイステイクスな試験は十分に普及していない.これは,現状では,オンライン試験において替え玉受験などの不正行為を検出し防止する技術が確立されていないためである.そこで本研究では,オンライン試験受験時に使用される可能性の高いタブレット型端末に着目し,端末のタッチスクリーンを操作する際に得られる手形状の特徴を用いて,替え玉受験を検出・防止する手法を提案した.本研究で提案した手法では,タッチスクリーン操作時の受験者の手形状画像を記録し,機械学習によって受験者本人であるか替え玉かを判別した.実験を行い提案手法の有効性を検証した結果,提案手法によって替え玉を検出できる可能性が示された.</p>
著者
安田 晶子 小方 博之
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-429, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
30

大学等の高等教育機関におけるe-learning の機会は急速に増加している.それに伴い,単位認定などを目的としたハイステイクスな試験もオンラインで実施する必要が生じてきている.しかしながら実際には,オンラインでのハイステイクスな試験は十分に普及していない.これは,現状では,オンライン試験において替え玉受験などの不正行為を検出し防止する技術が確立されていないためである.そこで本研究では,オンライン試験受験時に使用される可能性の高いタブレット型端末に着目し,端末のタッチスクリーンを操作する際に得られる手形状の特徴を用いて,替え玉受験を検出・防止する手法を提案した.本研究で提案した手法では,タッチスクリーン操作時の受験者の手形状画像を記録し,機械学習によって受験者本人であるか替え玉かを判別した.実験を行い提案手法の有効性を検証した結果,提案手法によって替え玉を検出できる可能性が示された.
著者
橋本 侑樹 村松 大吾 小方 博之
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-4, 2010
参考文献数
6

人が筆記を行う際のペンの持ち方は個人ごとに異なっており, 個人認証に有効だと考えられる.本論文では, ペンの持ち方特徴を用いた個人認証手法を提案する.提案手法では, カメラを用いてペンの持ち方画像を撮影し, 複数の特徴をその画像から抽出する.抽出した特徴を事前登録されているデータと比較し非類似度ベクトルを計算し, それらを3層パーセプトロンで組み合わせることにより認証スコアを取得する.収集したデータベースを用いた実験ではなりすまし攻撃に対して等誤り率5.6%という結果になった.
著者
村松 大吾 橋本 侑樹 小方 博之
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.1-8, 2011-05-12

筆記をする際のペン持ち方に注目し,カメラで撮影したペン持ち方画像を用いて個人を認証する手法を検討する.ペンの持ち方は,手の大きさ等の人の身体的特徴に由来する個人性とともに,どのようにペンを持つのか,という人の癖に由来する個人性が存在すると考えられ,個人認証に有効なモダリティだと考えられる.本研究ではその有効性を確認するために,ペン持ち方を撮影した画像 (ペン持ち方データ) から多数の特徴を抽出し,各特徴から計算される非類似度を統合することで認証を行う.本研究では 33 個の特徴から計算される非類似度スコアを realAdaBoost を用いて統合し,ユーザ依存しきい値と比較することで認証を行った.30 人から取得したペン持ち方データを用いた評価実験では,他人の握り方を真似したなりすまし攻撃に対して等誤り率 4.1% という結果を得た.We focus on a biometric person authentication method using features of pen holding style. The manner of holding pen can be distinctive among persons and be useful modality for person authentication, because the manner is affected by both the physical features and habitual behavior. In order to evaluate the efficiency, we extract several features from the pen-holding image, and fuse them for verification. In this paper, realAdaBoost algorithm is used for the fusion, and user-dependent threshold is applied for a decision making. The developed algorithm is evaluated using the database collected dorm 30 persons. The algorithm achieved an EER of 4.0% against the impersonation attacks.
著者
村松 大吾 橋本 侑樹 小方 博之
出版者
The Institute of Image Electronics Engineers of Japan
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.47-55, 2013

筆記は個人性が現れる動作のため,個人を認証する特徴として利用されている.従来の筆記を用いた個人認証はオンライン署名認証に代表されるような運筆動作に注目した手法である.本稿では,運筆動作ではなく,筆記時のペンの持ち方に着目した個人認証手法を提案する.提案手法では,筆記者のペンの持ち方をカメラにより撮影し,撮影された画像から「持ち方」の違いや「手」の違いを考慮して「ペン持ち方」に関係する特徴を複数抽出し,それらをスコアレベルで統合することで認証を行う.30人から取得したペン持ち方画像を用いた精度評価実験では,提案手法により等誤り率2.7%で本人と他人を判別できる結果を得た.また本人の持ち方を真似したなりすましデータを用いた攻撃耐性評価実験では等誤り率4.1% という結果を得た.
著者
鈴木 聡 笹島 康明 小方 博之 槻舘 尚武
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2016-HCI-166, no.5, pp.1-8, 2016-01-14

コンピュータを利用した学習環境において,アニメーションを伴う CG キャラクタ (身体化エージェント) を教育エージェントとして導入する試みが数多く試みられており,教育エージェントの振る舞いによる学習者への影響も検討されている.一方,身体化エージェントの社会的役割がユーザに与える影響についても議論が進んでいる.本研究では,身体化エージェントの要素として外観と言葉遣いに着目し,教育エージェントについてそれらが誘発する社会的役割が学習者に与える影響について実験により検討した.特に,マンガなどでみられる,実際にそのような言葉遣いをする人間は稀であるにもかかわらず特定の社会的役割を誘発する言葉遣いである役割語に着目し,役割語と外観の対応が学習に与える影響に注目した.学習への影響は顕著にはみられなかったものの,教育エージェントに対する印象や学習内容の把握への影響が示唆された.この結果をもとに,教育場面における身体化エージェントの設計指針について論じる.
著者
小方 博之
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.140-146, 2013-03-15
被引用文献数
1

Project based learning (PBL) is an effective method for education to make students put their knowledge into practice or to train solving problem by themselves. PBL is also recognized to be effective and popular in robotics and manufacturing educations. However, it is not guaranteed that traditional scoring methods, like final exam, are proper to assess students' activity in PBL. One of the noteworthy methods that may be suitable to assess their activity there is the peer assessment. The benefit of carrying out peer assessment is that it has effects on building students' motivation, making feedback, and grading reliably. The author conducted peer assessment in a mobile robot development project in his own laboratory, and in a certain class where students are requested to make a paper bridge as light as possible but can support a 300[g] weight. In this paper, the data of peer assessment in those projects are analyzed to verify its effectiveness.