著者
安田 晶子 中村 敏枝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.11-19, 2008-08-31 (Released:2010-07-09)
参考文献数
22
被引用文献数
3 4

本研究では,身体反応と音楽聴取時の感動がどのような関係にあるのかを定量的に追究することを目的とした.はじめに,聴取実験での評定項目を選定する目的で質問紙調査を行い,音楽聴取時に頻繁に経験されていた5つの身体反応(「鳥肌が立つ」「胸が締め付けられるような感じがする」「背筋がぞくぞくする」「涙が出る」「興奮する」)を選出した.次いで行った予備実験では,本実験での刺激曲として曲想の異なる2曲を選定した.本実験では,150名の実験参加者が,刺激曲の聴取中に生じた感動と5つの身体反応の強度について評定を行った.その結果,5つの身体反応評定値はいずれも感動評定値と有意に高い相関を示した.よってこれらの身体反応は,すべて音楽聴取時の感動と強く関連することが示唆された.さらにこれら5つの身体反応評定の平均値は,感動評定値とのより高い相関を示し,この傾向は曲想の異なる刺激曲を用いた実験参加者群で一致した.すなわち,これらの身体反応を総合すると音楽聴取時の感動との間に顕著に強い関連性が示された.
著者
森 数馬 中村 敏枝 安田 晶子 正田 悠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.99, 2008 (Released:2008-11-10)

音楽の印象における歌詞の影響を定量的に検討した研究は数少なく、これまでの研究では、歌詞における意味内容と声質や歌い方を混同して歌詞の影響を測っている。本研究は、歌詞の言語の意味内容が認知できない演奏音と文字で書かれたその歌詞の邦訳を用いることで歌詞における意味内容と声質や歌い方を区別し、歌詞の意味内容が演奏音の印象に影響を与えるかを定量的に検討することを目的として実験を行った。演奏音と歌詞の意味内容の印象がかけ離れた作品2つを刺激とし、同一の参加者が3条件(演奏音のみ呈示、歌詞のみ呈示、演奏音+歌詞呈示)で実験を行い印象を測定した。実験の結果、両作品において演奏音+歌詞の印象は、歌詞よりも演奏音に近い印象を示すという傾向があった。したがって、本研究で用いたような作品の印象において、歌詞の意味内容という論理情報が及ぼす影響は弱く、演奏音という感性情報が及ぼす影響が強いということが示唆された。
著者
正田 悠 安田 晶子 中原 純 田部井 賢一 伊坂 忠夫
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.398-407, 2019 (Released:2019-10-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

University students in Japan tend to listen to music frequently, perhaps to regulate their current mood. In the present study, we aimed to develop the Japanese version of the “Brief Music in Mood Regulation” scale (B-MMR) and examined its reliability and validity. Based on 307 Japanese undergraduates’ responses, we constructed the Japanese version of the B-MMR, which is comparable with the original B-MMR. Moreover, we confirmed that several aspects of the Japanese version of the B-MMR are positively correlated with general emotional regulation and stress coping strategies. Our Japanese version of the B-MMR can be used in future studies to explore the effects of listening to music on people’s quality of life and well-being.
著者
安田 晶子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.21-21, 2009

多くの人が経験する音楽聴取による感動の生起メカニズムの一端を明らかにするため,以前の研究では,感動と身体反応の関係性を検討した。その結果,音楽聴取による感動と複数の身体反応が複合的に関係していることが示唆された(安田他, 2008)。そこで本研究では,感動と関連する身体反応が,どのような音響特性によって喚起されるのかを検討した。特に本研究では,数ある音響特性の中から音量の変化傾向に着目し,音量の変化傾向が感動と関連の深い身体反応に及ぼす影響について検討することを目的とした。聴取実験の結果,鳥肌が立つ,胸が締め付けられる,背筋がぞくぞくする,興奮するといった身体反応は,音量が増大傾向(クレッシェンド)の場合に生起しやすいことが示唆された。
著者
安田 晶子 小方 博之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-429, 2021

<p>大学等の高等教育機関におけるe-learning の機会は急速に増加している.それに伴い,単位認定などを目的としたハイステイクスな試験もオンラインで実施する必要が生じてきている.しかしながら実際には,オンラインでのハイステイクスな試験は十分に普及していない.これは,現状では,オンライン試験において替え玉受験などの不正行為を検出し防止する技術が確立されていないためである.そこで本研究では,オンライン試験受験時に使用される可能性の高いタブレット型端末に着目し,端末のタッチスクリーンを操作する際に得られる手形状の特徴を用いて,替え玉受験を検出・防止する手法を提案した.本研究で提案した手法では,タッチスクリーン操作時の受験者の手形状画像を記録し,機械学習によって受験者本人であるか替え玉かを判別した.実験を行い提案手法の有効性を検証した結果,提案手法によって替え玉を検出できる可能性が示された.</p>
著者
安田 晶子 小方 博之
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.419-429, 2021-03-20 (Released:2021-03-25)
参考文献数
30

大学等の高等教育機関におけるe-learning の機会は急速に増加している.それに伴い,単位認定などを目的としたハイステイクスな試験もオンラインで実施する必要が生じてきている.しかしながら実際には,オンラインでのハイステイクスな試験は十分に普及していない.これは,現状では,オンライン試験において替え玉受験などの不正行為を検出し防止する技術が確立されていないためである.そこで本研究では,オンライン試験受験時に使用される可能性の高いタブレット型端末に着目し,端末のタッチスクリーンを操作する際に得られる手形状の特徴を用いて,替え玉受験を検出・防止する手法を提案した.本研究で提案した手法では,タッチスクリーン操作時の受験者の手形状画像を記録し,機械学習によって受験者本人であるか替え玉かを判別した.実験を行い提案手法の有効性を検証した結果,提案手法によって替え玉を検出できる可能性が示された.
著者
正田 悠 安田 晶子 中原 純 田部井 賢一 伊坂 忠夫
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.90.18207, (Released:2019-07-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1

University students in Japan tend to listen to music frequently, perhaps to regulate their current mood. In the present study, we aimed to develop the Japanese version of the “Brief Music in Mood Regulation” scale (B-MMR) and examined its reliability and validity. Based on 307 Japanese undergraduates’ responses, we constructed the Japanese version of the B-MMR, which is comparable with the original B-MMR. Moreover, we confirmed that several aspects of the Japanese version of the B-MMR are positively correlated with general emotional regulation and stress coping strategies. Our Japanese version of the B-MMR can be used in future studies to explore the effects of listening to music on people’s quality of life and well-being.
著者
森 数馬 中村 敏枝 安田 晶子 正田 悠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.99-99, 2008

音楽の印象における歌詞の影響を定量的に検討した研究は数少なく、これまでの研究では、歌詞における意味内容と声質や歌い方を混同して歌詞の影響を測っている。本研究は、歌詞の言語の意味内容が認知できない演奏音と文字で書かれたその歌詞の邦訳を用いることで歌詞における意味内容と声質や歌い方を区別し、歌詞の意味内容が演奏音の印象に影響を与えるかを定量的に検討することを目的として実験を行った。演奏音と歌詞の意味内容の印象がかけ離れた作品2つを刺激とし、同一の参加者が3条件(演奏音のみ呈示、歌詞のみ呈示、演奏音+歌詞呈示)で実験を行い印象を測定した。実験の結果、両作品において演奏音+歌詞の印象は、歌詞よりも演奏音に近い印象を示すという傾向があった。したがって、本研究で用いたような作品の印象において、歌詞の意味内容という論理情報が及ぼす影響は弱く、演奏音という感性情報が及ぼす影響が強いということが示唆された。
著者
小幡 哲史 中村 敏枝 河瀬 諭 片平 建史 安田 晶子 谷口 智子 正田 悠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第5回大会
巻号頁・発行日
pp.27, 2007 (Released:2007-10-01)

演奏者は複数人で演奏を行う際,演奏音やそれ以外の感性情報を用いて,演奏を合わせていると考えられる。本研究では特に演奏者が使用する呼吸情報に注目した。演奏者はお互いのタイミングを合わせることや,楽曲の構造上,演奏者が息継ぎをするためなどに,呼吸情報を使用していると考えられるが,このような点について定量的に分析した研究例は数少ない。そこで本研究では2人のバイオリン奏者による演奏実験を,対面条件と非対面条件で実施し,演奏音と演奏者の呼吸情報の使用について定量的に分析した。その結果,対面条件においてのみ2人の演奏者が呼吸情報を使用する箇所や,対面,非対面に関わらず2人の演奏者が呼吸情報を使用する箇所が見られた。このことから,演奏者は演奏を行う際に呼吸情報を使用してお互いのタイミングを合わせていることや,楽曲の構造上,演奏者自身のために呼吸情報を使用していることが示唆された。