著者
大本 俊彦 小林 潔司 大西 正光
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.693, pp.231-243, 2001 (Released:2010-08-24)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

本研究では建設工事において発注者と請負者の間に生じる紛争解決のメカニズムに関してゲーム理論を用いた分析を試みる. 建設工事における紛争は当事者の間で建設工事契約に関する解釈が異なることにより生じる. 紛争解決の手段として和解もしくは仲裁が存在する. 本研究では工事契約に対する解釈の違いや紛争の程度が, 紛争解決の手段選択に及ぼす影響を分析するとともに, 第3者裁定が紛争解決の効率化に果たす役割を分析する. さらに, 日本型紛争解決方式と国際紛争解決方式の相違点について考察し, 日本型紛争解決方式に残された今後の課題をとりまとめる.
著者
貝戸 清之 小林 潔司 青木 一也 松岡 弘大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-271, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
36
被引用文献数
12

社会基盤施設の劣化過程においては,施設の構造特性や使用・環境条件の違いにより劣化速度に多大な異質性が存在する.個々の施設に特有な異質性がもたらす劣化速度の過分散の問題を克服するために,施設グループ間の劣化速度の異質性を明示的に考慮した混合マルコフ劣化ハザードモデルが提案されている.本研究では,劣化速度の過分散が,施設グループ間における劣化速度の異質性と,グループを構成する個々の施設間における異質性というレベルの異なるつの異質性が複合された結果により発生すると考える.その上で,階層的異質性を導入した混合マルコフ劣化ハザードモデルを定式化し,その階層ベイズ推計法を提案する.最後に,橋梁床版に対する目視点検データを用いた実証分析を通して,本研究で提案する手法の妥当性を検討する.
著者
大西 正光 小林 潔司 中野 秀俊
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_231-67_I_242, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2

民間資金を活用して,インフラストラクチャーの建設及び維持管理運営を行うPPP (Public-Private Partnership)は世界的な潮流となっている.PPP事業における資金調達先も多様化する中,イスラーム金融が果たす役割が大きくなっている.本研究ではイスラーム金融の発展がPPP投資に与える影響を分析するため,イスラーム金融における金利決定メカニズムを明示的に表現したイスラーム金融市場モデルを定式化する.その結果,イスラーム金融の利益配分率(疑似利子率)は,預金,貸出の両市場において,通常金融の利子率よりも小さくなることが示された.さらに,預金者のイスラームに対する自覚が高まるほど,疑似貸出利子率が低下する一方,イスラーム金融に伴う取引費用が軽減されれば,疑似貸出利子率が増大することが示された.
著者
石 磊 宮尾 泰助 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.414-430, 2010 (Released:2010-10-20)
参考文献数
23

本研究では,開発途上国における建設プロジェクト契約を不完備契約モデルとして定式化し,発注者・受注者双方が関与するダブルモラルハザードの発生メカニズムを分析する.その際,発注者・受注者の努力水準が第3者に対して立証不可能であり,プロジェクト費用リスクに対して互いに正の外部性(補完性)を有する場合に着目する.発注者が努力義務を怠り発生した超過費用を受注者へ移転しようとするモラルハザードが発生すれば,受注者によるモラルハザードが発生し,プロジェクトの効率性が低下するというダブルモラルハザードが発生する.本研究では,開発金融機関の立場から,現地政府と事業者の間で発生するダブルモラルハザードを抑制し,プロジェクトの効率性を担保できるような望ましい融資契約スキームに関して理論的なアプローチを試みる.
著者
大西 正光 村上 武士 Wu Peiwei 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_309-I_322, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水道コンセッション事業の経済的価値は,主に水道料金及び水道の接続数(普及率)に依存する.政府が契約条件として望ましい水道料金及び接続数を設定するためには,民間事業者が有する技術に関する情報を有しておく必要がある.政府が技術に関する十分な情報を有していない場合には,技術提案型入札が適用される場合も少なくない.本研究では,技術提案型入札の下での最低単価落札方式と最大接続数落札方式という2つの落札方式の経済的帰結を理論的に分析する.さらに,水道コンセッション事業では,しばしば事後的に初期契約の見直しが行われることを指摘する.その上で,事業者の戦略的ホールドアップ行動の帰結を分析し,各落札方式の得失について考察する.
著者
小林 潔司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.449, pp.27-36, 1992-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
74
被引用文献数
1
著者
奥村 誠 小林 潔司 吉川 和広
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.171-178, 1987-11-20 (Released:2010-06-04)
参考文献数
17

This paper presents the concept of fiscal effects of public investment, which explains an employment effect in public sector and fiscal flexibility, in the non-metropolitan area that consists of well-developed part and under-developed part. We point out that we must analyze two trade-off problems; one is regional equities versus total development of prefecture; the other is developments effects versus fiscal flexibility, which gives main perspective for the public debt management. For this analysis, an econometric model having hierarchical structure between prefectural government and sub-areas is presented. By case study in Shiga prefecture, the validity of the model is evidenced and some comments about investment allocation and public debt management are proposed.
著者
瀬木 俊輔 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_353-I_371, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
39

本研究は,マクロな社会資本投資政策の便益の世代別帰着分布を評価可能な動学的応用一般均衡(DCGE)モデルを構築した.その上で,構築したモデルを我が国に適用し,社会資本投資政策と長寿命化政策について分析を行い以下のような知見を得た.社会資本投資には,その水準を増やすと将来世代の厚生が増加する一方で現在世代の厚生が減少するという世代間厚生のトレードオフの問題が生じる.起債による世代間所得移転はこの問題を効率的に緩和できるが,これは公債残高を一時的に増加させる.長寿命化政策は,現在世代を含む幅広い世代に対して便益をもたらし,損失を受ける世代への補償は現在世代の中だけで行うことが可能である.
著者
羽鳥 剛史 小林 潔司 鄭 蝦榮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.101-120, 2013 (Released:2013-05-20)
参考文献数
92
被引用文献数
4 3

社会基盤整備事業に関わる合意形成を行う上で,パブリック・インボルブメントをはじめとする公的討論が重要な役割を担っている.本研究では,社会基盤整備における公的討議の意義と課題について整理し,社会的意思決定における正統性を様々な討論過程を通じて担保するための理論的枠組みについて考察する.その際,討論システムの概念を導入し,公的討論が特定の公的討論を対象としたミクロ討論,討論システム全体を対象としたマクロ討論で構成されており,パブリック・インボルブメント等が,ミクロ討論とマクロ討論を接合させる役割を果たすことを指摘する.その上で,討論システムを構成する公的討論の基本原理や望ましい討論を実現するための課題や問題点,討論の望ましさを評価するための基本的な考え方について考察する.
著者
津田 尚胤 貝戸 清之 青木 一也 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.801, pp.801_69-801_82, 2005 (Released:2006-05-19)
参考文献数
17
被引用文献数
17 16

本研究では橋梁部材の劣化予測のためのマルコフ推移確率モデルを推定する方法論を提案する. その際, 橋梁部材の劣化状態を複数の健全度で定量化するとともに, 時間の経過により劣化が進展する過程をハザードモデルで表現する. その上で, 一定期間を隔てた時点間における健全度の推移関係を表すマルコフ推移確率を指数ハザード関数を用いて表現できることを示す. さらに, 定期的な目視検査による健全度の判定結果に基づいて, マルコフ推移確率を推定する方法を提案する. ニューヨーク市の橋梁を対象とした実証分析により提案した方法論の有効性を検証するとともに, サンプル数と指数ハザードモデルの推定精度の関係について考察する.
著者
堀 倫裕 鶴田 岳志 貝戸 清之 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.33-52, 2011 (Released:2011-02-18)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

下水処理施設は,保全管理方式が異なる複数の資産群から構成されており,補修や再構築に要する財源も様々である.したがって,維持管理計画を最適化し,事業の安定性・継続性を確保していくためには,異なる資産管理方式および資金調達方式を同時に考慮したライフサイクル費用分析が必要となる.さらに,下水道事業体は公営企業として財務会計を有する場合も多く,財務会計と有機的に連携した管理会計を構築することが重要である.本研究では,下水処理施設のアセットマネジメントに資する管理会計システムを提案するとともに,管理会計シミュレーションを通じて,ライフサイクル費用の低減に貢献するようなアセットマネジメント戦略を検討するための方法論を提案する.さらに,適用事例を通じて方法論の有効性を検討する.