- 著者
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大和 洋輔
長谷川 夏輝
藤江 隼平
小河 繁彦
家光 素行
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.1513, 2016 (Released:2016-04-28)
【はじめに,目的】動脈硬化度の増加は,冠動脈疾患や脳血管疾患などの心血管系疾患の独立した危険因子である。習慣的な有酸素性運動は動脈硬化度を低下させ,心血管系疾患リスクを改善させる効果が認められる。近年,筋の柔軟性改善を目的として主に用いられているストレッチ運動を習慣的に実施することにより,動脈硬化度を低下させることが報告されている。しかしながら,ストレッチ運動による動脈硬化リスクの改善効果は,ストレッチした部位で生じる効果かどうかは明らかでない。そこで本研究では,一過性の局所的なストレッチ運動による動脈硬化リスクへの影響について検討するために,片脚に対する一過性のストレッチ運動が動脈硬化度および血流量に及ぼす影響について検討することを目的とした。【方法】健常成人男性14名(年齢:21±1歳,身長:172±2 cm,体重:65±2 kg)を対象とした。ストレッチ運動は,右下腿三頭筋に対する他動的なスタティックストレッチング(ストレッチ脚:30秒×6セット,セット間休息10秒)を実施した。ストレッチ運動の強度は,疼痛のない範囲で全可動域を実施した。また,左脚は非ストレッチ脚とした。中心および末梢の動脈硬化度の指標として頸動脈-大腿動脈間(cfPWV)および大腿動脈-足首間(faPWV),全身の動脈硬化度の指標として上腕-足首間(baPWV)の脈波伝播速度をストレッチ運動施行前,直後,15分後,30分後に測定した。また,上腕および足首の収縮期血圧と拡張期血圧,心拍数も同時に測定した。さらに,超音波画像診断装置を用い,ストレッチ脚におけるストレッチ運動中および運動前後の後脛骨動脈の血管径と血流速度を測定し,血流量を算出した。統計処理は繰り返しのある二元配置分散分析法および一元配置分散分析法を用い,有意水準は5%とした。【結果】ストレッチ脚において,ストレッチ運動施行前と比較して,faPWVは直後および15分後で,baPWVでは直後,15分後,30分後で有意に低値を示した(P<0.05)。一方,非ストレッチ脚ではfaPWV,baPWVにおいて有意な変化が認められなかった。また,cfPWV,上腕および足首の収縮期血圧と拡張期血圧,心拍数にはストレッチ運動による有意な変化は認められなかった。ストレッチ脚の後脛骨動脈の血流量は,ストレッチ運動施行前と比較し,ストレッチ運動施行間のセット間休息時には増加し,また,ストレッチ運動後の血流量も増加傾向であった。【結論】健常な若年男性における片脚への一過性の局所的なストレッチ運動は,ストレッチされた部位の動脈硬化度を低下させる可能性が示唆された。また,一過性のストレッチ運動による動脈硬化度の改善には血流量の変化が関与している可能性が示唆された。