著者
小谷 眞男
出版者
Japan Welfare Sociology Association
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.2, pp.91-105, 2005

本稿は,1990年代以降のイタリアにおける福祉政策研究の動向を,エスピン=アンデルセンの「福祉レジーム類型論」との関係で,3つの大きな流れに整理して紹介する.<BR>独自の4類型論(1993年)を構築した行政学者フェッレーラは,「福祉国家の南欧モデル」を模索した末,もうひとつの4類型論(1998年)を提案する.そこでは,イタリアないし南欧諸国に共通する特徴として,とくにクライエンテリズムが強調されている.家族社会学者サラチェーノとその後継者ナルディーニは,イタリアないし地中海諸国について「家族主義」という分析視点が重要であることを指摘し,ジェンダーと世代から構成される"親族連帯モデル"を比較史的に論証する.以上の諸研究は,互いに相補的な関係にあり,また国際的な研究動向とも密に連動している.これに対して,カトリック社会学者ドナーティらは,「補完性」の原理という教会の社会教説に即した多元的協働モデルの福祉社会論を構築し,イタリアの福祉政策や実践を多角的に点検する作業を精力的に進めている.<BR>総じて"国家性の欠如"という表現に集約される特質を有するイタリアの福祉が,比較福祉研究の素材としてどのような意味を持ちうるかについての若干の私見が,最後に示唆される
著者
北村 暁夫 池谷 知明 勝田 由美 小谷 眞男 柴野 均 高橋 利保
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究はイタリアの自由主義期を対象として、議会選挙やさまざまな立法活動などの際に見られる国家と地域社会との交渉や妥協の歴史的過程を具体的に分析することにより、イタリアの「国民国家」形成の特質を明らかにすることを目的としている。本研究は共同研究であり、研究代表者、研究分担者7名、研究協力者6名の合計14名の参加者から構成され、2年の研究期間に合計6回に及ぶ研究会(研究打ち合わせ1回、研究合宿4回、他の研究会(イタリア近現代史研究会)の年次大会とのジョイント1回)を行った。この間に史料や研究文献のリスト作成や年表の作成なども行い、こうした一連の作業の成果を大部に報告書に集約した。この二年間の研究成果として以下のことが明らかになった。(1)近年の研究では1880年代後半から1890年代半ばにかけてのクリスピ時代に統治機構の大規模な改革が行われたことに注目が集まっていたが、それに先立つデプレーティス時代に国民形成に向けてのある種の構造転換が起きていた。(2)議会が多様な地域利害が議論・調整される場として、エリート層のナショナルな統合を推進する役割を果たしていた。(3)南部問題は、「国民国家」形成にとって重要なモーメントの一つであった。(4)カトリック教会やカトリシズムは従来想定されていた以上に、ナショナルな統合に大きな役割を果たしていた。(5)多様な地域的利害を交渉・調整していくうえで、ローカル・エリートが果たした役割の重要性が明らかになった。以上の成果を踏まえたうえで、今後は本研究の方法を深化させるために、特定の地域社会やローカル・エリートを対象とした中央一地方関係の事例研究を推進していく必要性を確認した。
著者
小谷 眞男
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.201-207, 2009-10-30 (Released:2010-10-30)
参考文献数
15
著者
佐藤 岩夫 広渡 清吾 小谷 眞男 高橋 裕 波多野 敏 浜井 浩一 林 真貴子 三阪 佳弘 三成 賢次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、法社会学・法史学・犯罪学専攻の研究者の学際的・総合的な共同研究を通じて、19世紀から現代に至るヨーロッパ各国の司法統計(裁判所組織統計・訴訟統計・犯罪統計等)の歴史的・内容的変遷を詳細に明らかにするものである。研究成果として、ヨーロッパの司法統計の歴史的発展および内容を包括的に明らかにした研究書としては日本で最初のものとなる『ヨーロッパの司法統計I:フランス・イギリス』および『ヨーロッパの司法統計II:ドイツ・イタリア・日本』を刊行した。
著者
小谷 眞男 下城 史江 飯泉 菜穂子
出版者
日本手話学会
雑誌
手話学研究 (ISSN:18843204)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.19-38, 2011-12-19 (Released:2012-12-20)

Ochanomizu University (Tokyo) has started the new course, “Introduction to Sign Language Studies”, from the academic year 2010. This course has a position in the interdisciplinary liberal arts education programs of the University, Which are systematically introduced in 2008. In this course, Primarily, the well-trained deaf teacher, as a native signer, gives Japanese Sign Language (JSL) lessons to the students by the natural approach method, in other words, without any spoken language. The class-size is small (nearly15-18). Secondarily, the hearing lecturer, as a JSL-Japanese interpreter, talks on the JSL, the Deaf people and the life-history of herself by spoken language. The aim of “JSL in the liberal arts” is not only to learn the JSL itself, but also to attain cross-cultural awareness by coming into contact with a different culture, that is “Deaf culture”.