著者
尾関 美喜 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.32-44, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
38
被引用文献数
2 1

本研究では,社会的アイデンティティ形成の相互作用モデルに基づいて,集団アイデンティティを個人レベルと集団レベルに分けてとらえるとともに,集団アイデンティティを成員性と誇りの二側面でとらえた。そして,成員性,誇り,成員性の集団内平均が集団内における迷惑行為の迷惑度認知に及ぼす影響を検討した。HLMによる分析の結果は以下に示すとおりであった。1)規範などによって抑制可能である集団活動に影響を及ぼす迷惑行為については,成員性の強い成員ほど迷惑度を高く認知した。2)集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為については,成員性の集団内平均が高い集団では,誇りの個人差に起因する迷惑度認知の差はみられなかった。3)成員性の集団内平均が低い集団では,誇りの高い成員ほど迷惑度を高く認知していた。
著者
尾関 美喜 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.26-38, 2007 (Released:2008-01-10)
参考文献数
35
被引用文献数
4 3

本研究では大学生の部活動・サークル集団における迷惑行為の生起及び認知に組織風土と集団アイデンティティが及ぼす影響を検討した。組織風土を集団が管理されている程度である管理性と,集団内で自由に意見や態度を表明しやすい程度である開放性の2側面で構成した。組織風土と迷惑行為の生起頻度との関連を検討したところ,管理性が集団活動に影響を及ぼす迷惑行為の生起を,開放性が集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為の生起を抑制することが示された。また,組織風土と集団アイデンティティが迷惑の認知に及ぼす影響を検討した。この結果,集団活動に影響を及ぼす迷惑行為については,管理性と開放性の両方が高い集団(HH型)の成員は管理性が高く開放性が低い集団(HL型)・管理性が低く開放性が高い集団(LH型)の成員よりも迷惑度を高く認知した。さらに集団アイデンティティの強い成員は集団アイデンティティの弱い成員よりも迷惑度を高く認知した。集団内の人間関係に影響を及ぼす迷惑行為については,組織風土,集団アイデンティティともに迷惑度認知に影響を及ぼさなかった。
著者
尾関 美喜 米澤 香那子 根ヶ山 光一
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-24, 2015-08-31 (Released:2015-09-09)
参考文献数
23

Group resilience is the competency of a group to recover from an accident and maintain its activity. It is captured by the sequence of behaviors of its members. In this study, group resilience was defined in terms of four key abilities, namely the ability to prevent undesirable incidents from happening, to keep undesirable incidents from worsening, to recover from an accident after it has already occurred, and to maintain group activity levels. The present study aimed at exploring whether these four abilities were exerted differently according to incidents of varying degrees of danger and frequency. The results of the study showed that moderately dangerous incidents occurring frequently were rarely remained unsolved. Ability to prevent undesirable incidents from happening and ability to keep undesirable incidents from worsening were also shown to be instrumental in solutions for less dangerous incidents that sometimes occurred, though such incidents were hardly ever settled by the group’s ability to maintain its levels of activity. Frequent incidents that were a little dangerous were not settled by ability to prevent undesirable incidents. The ability to prevent undesirable incidents from occurring was not effective in such incidents. Furthermore, the study found that if group members did not have prior experience handling rare incidents that were dangerous, group resilience might not be exerted on such circumstances.
著者
尾関 美喜 天野 正博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-11, 2017 (Released:2017-09-07)
参考文献数
18

人々の日常会話における噂話は時として風評被害をもたらすことがある。本研究は,友人間における食品に関するこのような噂話の機能を明らかにすることを目的とした。312名の女性が,牛乳から放射能が検出されたという情報を1)ニュースで聞いた 2)知らない人によるTwitterの投稿 3)親しい友人から聞いた,3つの架空のシナリオのいずれかの場合について,その情報についてうわさの機能や属性を評価する尺度(竹中,2013)に回答した。この結果,人々はニュースから得られた情報を信頼性のあるものとして友人との会話に用いていることが示唆された。
著者
尾関 美喜 天野 正博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-11, 2017

<p>人々の日常会話における噂話は時として風評被害をもたらすことがある。本研究は,友人間における食品に関するこのような噂話の機能を明らかにすることを目的とした。312名の女性が,牛乳から放射能が検出されたという情報を1)ニュースで聞いた 2)知らない人によるTwitterの投稿 3)親しい友人から聞いた,3つの架空のシナリオのいずれかの場合について,その情報についてうわさの機能や属性を評価する尺度(竹中,2013)に回答した。この結果,人々はニュースから得られた情報を信頼性のあるものとして友人との会話に用いていることが示唆された。</p>
著者
尾関 美喜 吉田 俊和
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.130-140, 2011 (Released:2012-03-24)
参考文献数
25
被引用文献数
4 4

社会的アイデンティティ形成の相互モデル(Postmes et al., 2006)が提唱されて以来,近年の集団アイデンティティ研究ではマルチレベルの視点がとられている。しかし,集団レベルの集団アイデンティティの操作的定義は統一されていない。さらに,集団レベルにおける集団アイデンティティの意味するところも明らかにされていない。本研究の目的は,二段抽出モデルによって,(1)Swaab et al.(2008)と尾関・吉田(2009)の2つの操作的定義を比較する (2)集団アイデンティティの下位尺度である成員性と誇りの相違を,個人レベルと集団レベルの両方で明らかにすることを目的とする。358人の大学生(男性161名,女性190名,不明7名)が,所属学科に対する集団アイデンティティ,当該学科の集団実体性,内集団価値(Leach et al., 2008)を評定した。また,Swaab et al.(2008)の操作的定義である,所属学科のメンバーが,どのくらい当該学科に対する集団アイデンティティを共有していると思うかを評定した。集団レベルでは成員性が集団実体性を媒介して集団アイデンティティの共有につながっていた。しかし,個人レベルでは,成員性の強い成員ほど集団実体性が高く,成員が集団アイデンティティを強く共有していると思うことが示された。個人レベルのモデルからは,知覚された内集団価値が誇りを高め,成員性につながることが示された。また,集団レベルでは,内集団価値が誇りに影響していた。以上の結果と社会的アイデンティティ形成の相互作用モデルを統合し,本研究では新たにマルチレベルでとらえた集団アイデンティティを通じた集団化過程モデルを提唱した。
著者
原田 知佳 吉澤 寛之 朴 賢晶 中島 誠 尾関 美喜 吉田 俊和
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.273-276, 2014-03-25 (Released:2014-04-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

This study examined adolescents' social self-regulation in four cultures and differences in the relationships between social self-regulation and antisocial behavior. A total of 1,270 adolescents from Japan, Korea, China, and the United States completed a questionnaire. The results of an ANOVA showed that adolescents in Japan showed lower self-assertion than those in Korea, China, and the United States. Adolescents in China showed more self-inhibition than those in Japan, Korea, and the United States. The results of an ANOVA showed the following. Only the main effect of self-inhibition on antisocial behavior was observed in Korea, China, and United States, whereas an interaction effect of self-assertion and self-inhibition on antisocial behavior was observed in Japan. Since the “assertive type,” showing high self-assertion and low self-inhibition, does not fit in Japanese culture, assertive-type people would be observed as having maladjusted behavior in Japan.
著者
尾関 美喜 OZEKI Miki
出版者
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.119-125, 2007-12-28 (Released:2008-08-07)

This article aimed to stress the importance of analyzing nested data through an adequate way, by comparing ANOVA (Analysis of variance) and HLM (Hierarchical Linear Model). The data used revealed that HLM uncovered only a significant individual level factor, despite both individual and group level factors were actually significant. This result implies that the probability of committing a Type I error increases when data with significant intraclass correlation is not analyzed properly.