著者
尾関 美喜 米澤 香那子 根ヶ山 光一
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-24, 2015-08-31 (Released:2015-09-09)
参考文献数
23

Group resilience is the competency of a group to recover from an accident and maintain its activity. It is captured by the sequence of behaviors of its members. In this study, group resilience was defined in terms of four key abilities, namely the ability to prevent undesirable incidents from happening, to keep undesirable incidents from worsening, to recover from an accident after it has already occurred, and to maintain group activity levels. The present study aimed at exploring whether these four abilities were exerted differently according to incidents of varying degrees of danger and frequency. The results of the study showed that moderately dangerous incidents occurring frequently were rarely remained unsolved. Ability to prevent undesirable incidents from happening and ability to keep undesirable incidents from worsening were also shown to be instrumental in solutions for less dangerous incidents that sometimes occurred, though such incidents were hardly ever settled by the group’s ability to maintain its levels of activity. Frequent incidents that were a little dangerous were not settled by ability to prevent undesirable incidents. The ability to prevent undesirable incidents from occurring was not effective in such incidents. Furthermore, the study found that if group members did not have prior experience handling rare incidents that were dangerous, group resilience might not be exerted on such circumstances.
著者
岡本 依子 菅野 幸恵 東海林 麗香 亀井 美弥子 八木下 暁子 高橋 千枝 青木 弥生 川田 学 石川 あゆち 根ヶ山 光一 Yoriko Okamoto Sachie Sugano Reika Shouji Miyako Kamei Akiko Yagishita Chie Takahashi Yayoi Aoki Manabu Kawata Ayuchi Ishikawa Koichi Negayama 湘北短期大学保育学科 青山女子短期大学児童教育学科 東京都立大学大学院 東京都立大学大学院 神戸大学大学院 青森中央短期大学保育学科(現 鳥取大学) 松山東雲短期大学保育科 香川大学教育学部 愛知県知多児童相談センター 早稲田大学人間科学学術院
出版者
湘北短期大学・紀要委員会
雑誌
湘北紀要 (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.29, pp.29-41, 2008

妊婦が胎動をどのような感覚としてとらえているか。本研究では,胎動そのものの変化に対して,妊婦がどのような感受性を示すかを検討する。妊婦の胎動への感受性の指標として,妊娠中に記録された胎動日記において,胎動を表現するために用いられたオノマトペに着目した。妊婦38 名から得られた胎動日記1032 を分析した結果,妊娠期には,実にさまざまなオノマトペが用いられていることがわかった。オノマトペに用いる音が豊富であり,語基の変形だけでなく,臨時のオノマトペの使用も認められた。また,胎動を表すオノマトペと胎児への意味づけとの関連について週齢変化を検討した結果,3 つの時期に整理することができた。第一期(~ 28 週)は胎動のオノマトペが多様性を帯び,第三期(35 ~ 40 週)に向けて,オノマトペの多様性より,胎児への意味づけの多様性が増すように変化することを見いだした。最後に,母子の身体接触としての胎動という観点から考察した。
著者
石島 このみ 根ヶ山 光一
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.326-336, 2013 (Released:2015-09-21)
参考文献数
40
被引用文献数
4

本研究では,乳児と母親のくすぐり遊びにおいて,いかに相互作用がなされているのかを明らかにし,そこにおいて意図理解がなされている可能性とその発達について検討した。観察開始時生後5ヶ月の母子1組を対象とし,3ヶ月間,家庭での自然観察を縦断的に行った。その結果,生後6ヶ月半の時点で,くすぐり刺激源(母親の手)と母親の顔との間で交互注視が起こり,その生起頻度は発達的に増加していた。さらに生後6ヶ月半頃のくすぐり遊びの行動連鎖について検討したところ,くすぐったがり反応が生じた事例では,身体に触れずにくすぐり行動を顔の前に提示する「くすぐりの焦らし」がなされた後に乳児がくすぐり刺激源を見る,くすぐり刺激源と母親の顔に視線を配分させる,「くすぐりの焦らし」において予期的にくすぐったがる,といったパターンが生起していた。このことから,生後6ヶ月半の時点で,乳児は母親とくすぐりの文脈を共有し,母親の意図を読みとりながら能動的に相互作用を楽しんでいることが示唆された。くすぐりの場は,身体部位を対象化することで成り立つ「原三項関係 proto-triadic relationship」(Negayama, 2011)の一例であると言える。そのような母子の身体を媒介項とした自然な相互作用における萌芽的な意図の読みとりが,三項関係における意図理解の成立への橋渡し的役割を担っている可能性が指摘された。
著者
平田 修三 根ヶ山 光一
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.460-469, 2012

親以外の個体による世話行動は「アロケア」と呼ばれる。本稿では,貧困など様々な理由から生まれた家庭で育つことのできない子どもを社会が養育する仕組みである社会的養護を「制度化されたアロケア」と捉え,日本における社会的養護の主流である児童養護施設で暮らす子ども,および退所者の体験に焦点を当て,その特徴を論じた。そこから見えてきたのは,制度化されたアロケアの機能不全であった。しかし,そうした状況下にあっても,施設で暮らす子ども・退所者が当事者団体を立ち上げて互いを癒し,社会に働きかけていくケースがあることについても確認された。こうした当事者団体の活動は,機能不全状態にある社会的養護の現状および社会の認識を変えていく可能性をもっている。現代の日本社会には産むことと育てることの強力な結合の規範が存在するためその実現は容易ではないが,核家族の脆弱性が顕在化しつつあるなかで,成育家族以外にも多様な養育の形態がありうると認めることはひとつの時代的・社会的要請であると考えられた。
著者
根ヶ山 光一 星 三和子 土谷 みち子 松永 静子 汐見 稔幸
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.179-186, 2005-12-25 (Released:2017-08-04)

This study investigates conditions surrounding infants' crying at day nurseries, and aims to examine the quality of daycare. In the day nurseries, 570 babies were observed. For each subject, the state of each period of crying, as well as its cause and the adult's techniques used to calm the child, were recorded during one day by his/her nursery teacher. The results show: 1. As a whole, the frequency of crying was highest in the morning and then declined; 2. The causes of crying were interpreted by the adults as mostly physical, though social causes increased with age in months; 3. Crying interpreted as having a physical origin was nevertheless dealt with by applying social techniques like holding; 4. The duration and the strength of a baby's crying were related significantly to the length of professional experience of his/her practitioner.