著者
山上 精次
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.71-83, 1989-03-31 (Released:2016-11-11)
被引用文献数
1

There exists a considerable literature on the early development of visual perception, but much less research on the development of eye movement per se has been reported. This paper reviews the basic research on the early development of the saccades and smooth pursuit movements of the eye. The following topics are discussed: the developmental changes in saccadic latency, the existence of slow saccades and multiple saccades during the early stages of development, and the problem of whether neonates can pursue moving targets smoothly or not. Research on the developmental changes in smooth pursuit eye movements during childhood are also reviewed, and it is pointed out that less quantitative research has been done with children than with infants. In research on the development of eye movements, attentional and arousal factors of the subjects play a very important role. Finally, it is pointed out that the improvement of measuring techniques is neccesary.
著者
石黒 良和 榎本 玲子 山上 精次
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-14, 2015-03

本研究では幼児を対象に, 向社会的行動, 感情的役割取得, 対人的問題解決の学年による水準の変化を検討するとともに, 3者間の関連性を検討した。向社会的行動とは他者からの見返りを期待せずに, 他者への利益のために起こす対人行動のことである。役割取得とは他人の感情, 思考, 観点, 動機, 意図を理解する能力のことである。対人的問題解決とは対人的な葛藤に直面した場面に適した対処法を導き出したり, 他者に対する社会的行為の結果を予測する能力のことである。感情的役割取得は学年に伴い一貫して水準が上昇していた。それに対して対人的問題解決は年長の幼児のみ他学年の幼児よりも有意に水準が高く, 感情的役割取得と比較すると成長に時間を要することが考えられる。向社会的行動は年長および年中の幼児が年少の幼児よりも有意に平均値が高かった。また, 向社会的行動に対して感情的役割取得および対人的問題解決の双方とも正の影響を与えていることが明らかとなった。このことから感情的役割取得, 対人的問題解決の水準が高いほど, 向社会的行動の水準も高いという関連性が示唆された。
著者
榎本 玲子 山上 精次
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 心理学篇 (ISSN:21858276)
巻号頁・発行日
no.1, pp.61-69, 2011-03

外界の物体と身体との直接的な相互作用が行われる身体周辺の空間を身体近傍空間という。複数のモダリティの刺激に反応する多感覚ニューロンの働きにより規定されているこの空間では,複数モダリティからの感覚情報が統合されるため,他の領域とは異なる空間知覚特性がある。そして、この空間の表象は,ダイナミックかつ機能的な可塑性を持ち,身体部位や道具の機能,使用経験などにより変化することを多くの研究が実験的に示している。その一方で,ここ数年では,そのような多感覚ニューロンの働きが身体近傍空間における単一モダリティの刺激処理にも影響を与える可能性を示唆した証拠が増えつつある。本レビューでは,これらの研究を概観し,身体近傍空間における空間知覚の特性とその可塑性について論議する。
著者
堀 忠雄 山上 精次
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

事務的で魅力のある課題の遂行にも、ウルトラディアン・リズムの影響が表われるかを実験的に検討した。課題は言語情報処理に関して、ワープロ入力(邦文研究論文原稿の入力)を、空間情報処理に関しては、ファミコン(ゲーム名:ゼビウス)ゲームを採用した。男子大学生及び大学院生20名を、ワープロ課題10名、ファミコン課題10名割付け、朝の8時から夕方の18時まで10時間、15分毎に5分間の課題遂行とその前後に各1分ずつ閉眼安静を課した。残る8分間は被験者は食事・用便・休憩・ジクソウゲーム等の自由行動が許された。実験期間は恒常環境室を閉鎖し、孤立条件で実施した。行動観察とともに脳波・眼球運動・心電図をポリグラフィ記録し、脳波については課題中とその前後の安静期について、1分間の記録をスペクトル分析し、脳波の左右差指数とコヒーレンスを計算した。ウルトラディアン周期変動成分の同定は、最大エントロピー法(MEM)によった。ワープロ入力課題では、作業速度と誤りを指標として時系列分析した。成績曲線には'ゆらぎ'は認められるが、MEMスペクトルは平坦なパタンを示し、ランダム変動であることがわかった。しかし、原稿内容に自動変換で正しく入力できる部分と自動変換が誤りの発生因となる部分もあり、作業成績の適正評価という点に問題がある。従って、実務作業にはウルトラディアン変動はないと言い切るのは早計のようである。この点については、今後、指標の洗練化を試みる。ファミコンの成績は得点数とクリア場面数、使用機数を重み関数として時系列を作った。最も明確にMEMスペクトルにピークがみられたのは、単純なゲーム得点で約90分周期のウルトラディアン変動が認められた。脳波はゲーム中に右半球活性の状態を示しながらも、約100分周期の変動を示した。コヒーレンスに全く周期変動がみられないのは、単純作業と著しく異なる。