著者
本宮 嘉弘 山内 春夫 高塚 尚和
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.34-41, 2015 (Released:2018-03-01)
参考文献数
2

高速道路で事故を起こしたワゴン車が、事故のはずみでガードロープの支柱を押し倒し、これを跨ぐように停止したが、その直後に出火・炎上して6名が死亡した。車底部の強度部材よりも下方に突出した構造のガソリンタンクにガードロープ支柱が突き刺さり、ここから噴出したガソリンが車体と路面の擦過による火花等により着火したものと推定された。このほかにも、高速道路でスリップした乗用車がガードロープ支柱に横向きに衝突して樹脂製ガソリンタンクが破損し出火した事例や、軽自動車が誤って歩道縁石を跨いで走行したためにガソリンタンクが破損し出火した事例について検討を行った。ワゴン型乗用車では、車室の床面を平坦にするためにタンクを車体中央部に下方に大きく突出した構造となっているなど、車体構造上の問題点もある。道路運送車両の保安基準における燃料タンクの安全基準としては、取り付け位置や強度に関する具体的な数値等は明記されておらず、特にタンク下面に到っては何らの規定もない状態である。また自動車アセスメント(JNCAP)において実施されている前面および側面衝突の試験形態では、変形が燃料タンクまで及ぶことはないことから、事故に起因する燃料漏れで車両火災が生じる危険性をメーカーに周知させるまでには到っていない。
著者
本宮 嘉弘 山内 春夫 松川 不二夫
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.18-24, 2011

道路を横断中の歩行者が跳ねられた事故において、衝突地点を特定することは自動車の衝突速度や運転者の過失を判断するうえで重要なことであるが、靴などによる路面の痕跡によって衝突地点を特定できることは稀であり、ほとんどの場合、運転者の供述や目撃証言に頼らざるを得ないのが実情である。歩行者との衝突地点を特定する1つの方法として、制動痕の屈曲現象がある。実際の事故において歩行者を跳ねた自動車の制動痕がわずかに屈曲していることがあるが、この屈曲がほぼ衝突地点(衝突地点から0〜2m先)で生じることをダミーを用いた衝突実験およびコンピューターシミュレーションで確認した。また、跳ねられた歩行者がかぶっていた帽子が事故現場に落ちている場合があるが、衝突実験の結果、帽子は衝突の瞬間に脱げることが多いため、衝突地点付近に遺留される傾向のあることが確認された。ただし、落下途中で帽子が車両に接触して、数メートルほど飛ばされることもあるので注意を要する。また、歩行者のさしていた傘も衝突地点付近に落下する傾向のあることが実験により確認された。
著者
内藤 笑美子 出羽 厚二 山内 春夫
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
雑誌
生体の科学 (ISSN:03709531)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.746-751, 1995-12-15

ヒトの性別は,通常性染色体により決められている。男性はX染色体とY染色体を各々1本ずつ,女性は2本のX染色体を有している。ヒト細胞の染色体数が46,XY(男性),46,XX(女性)であることが明らかになったのは1956年TjioとLevanによるものであった。DNA分析が盛んになるまでは,性別を判定するために染色体の核型分析(G染色やQバンド)法,あるいは女性のX染色体に由来するX-クロマチン(Barr body)1)やY染色体由来のY-クロマチン(Y-body F-body)2)を検出する方法が行われてきた。現在では,性染色体DNAの塩基配列も次々と解析され,性別判定に利用されている。1985年にPCR法3)が開発されてからは,もっぱらX染色体やY染色体に特異的であるDNA配列をマーカーとした種々のPCR法による性別判定法が行われている。これらの方法は,臨床では胎児の出生前診断4)や性染色体異常の診断5),また異性間で行われた骨髄移植のドナー細胞生着確認6)などに利用されている。法医学領域でも性別の判定は重要である。法医試料について,性別を知ることは個人を識別する上で重要な情報となる。なぜなら各個人の生前の性別はほとんどわかっているからである。特に男女の形態的特徴が欠けている場合,たとえば白骨の一部,バラバラ死体や焼死体などの身元確認に性別判定が役立っている。
著者
本宮 嘉弘 山内 春夫 増渕 一雄
雑誌
交通科学研究資料
巻号頁・発行日
vol.47, pp.138-141, 2006-05-31
参考文献数
1
著者
宮坂 道夫 鳥谷部 真一 山内 春夫 栗原 隆 後藤 清恵 坂井 さゆり 細見 博志 田澤 立之 足立 智孝 中田 光 甲斐 克則
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、【1】医療倫理学の統合的方法論の構築、【2】統合的方法論の実践可能性の検証、【3】統合的方法論の法制度的整合性の検証を目標にしてきた。5年間の研究により、統合的方法論を「修正版四分割表」および「ナラティヴ検討シート」として完成させた。これらにより、原則論に基づくジョンセンらの方法と我々が構築してきたナラティヴ倫理による方法を統合して、臨床現場で実践可能な方法論を提示することができた。また、ハンセン病問題、終末期医療、遺伝子医療等についての臨床倫理の検討方法や諸外国との比較法制度論に関する成果等が得られた。
著者
吉岡 尚文 津金澤 督雄 石津 日出雄 辻 力 山内 春夫 鈴木 庸夫 高浜 桂一
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

自殺率の高い県、低い県あるいは全国平均並みの県等、14県を対象に、平成元年から7年までの7年間の自殺者の総計約31500例(男性19800、女性11700)につき、各県警察本部の協力を得て、個々の内容を詳しく調査し、統計学的に分析、考察した。その結果以下の点が明らかとなった。*秋田県、新潟県、岩手県はどの年も自殺率が極めて高く、交通事故による死亡者の2〜3倍の数である。一方、石川県、滋賀県、三重県、岡山県の自殺率は常に低い。*男女とも高齢者群での自殺者が多い。また、男性では働き盛りの年代での自殺も多く、経済的要因が背景となっている。*高齢者の自殺の背景は病苦とされているものが大部分である。しかし、それが真の動機となった例は少ない。壮年〜中高年では精神疾患を有する人の自殺が多い(女性で顕著)。*自殺の手段はどの年齢層でも縊頸が多く、特に高齢者で顕著である。*自殺者の内、独居者の占める割合は極めて少ないが、独居者の自殺は独居5年目以降で多くなる。*季節的にみると、春から初夏にかけて多く、冬期間はむしろ少ない。以上より、差し当たり着手すべきは、高齢者ならびに精神科的疾患を有する人に的を絞り具体的な防止対策を講ずることであろうと考える。例えば、高齢者の相談にのるシステムの徹底と情宣、市町村単位での自殺防止運動の展開、精神科医を含め医療関係者の自殺防止への積極的な取り組み、マスメディアの自殺防止キャンペーンへの協力などの他、優先されるべきこととして、家庭内、家族内での内面問題の解消が挙げられる。これらと併行して老人自身の自立心向上、精神面の教育がなされる環境を整えることも肝要である。