著者
石塚 譲 川井 裕史 石井 亘 大谷 新太郎
出版者
近畿中国四国農業研究協議会
雑誌
近畿中国四国農業研究 (ISSN:13476238)
巻号頁・発行日
no.14, pp.100-104, 2009-03

大阪府内の異なる2地域において、野生ジカ雌のGPS首輪による行動調査を行った。固定カーネル法による行動圏調査において、一方は水田を含む農耕地周辺を主たる行動圏としており、昼間のコアエリアは森林域に位置するが、夜間のコアエリアは水田周囲に位置し、農業被害を起こす可能性が示唆された。他方は、森林地域を主たる行動圏としており、コアエリアは、夜間、昼間ともにほぼ森林域に位置し、農業被害への関与は少ないと考えられた。また、農耕地周辺を行動圏とする個体は、10月のコアエリアがイネ刈り取り後の水田に位置しており、落ち穂もしくはイネのひこばえを食している可能性が推察された。以上のことから、野生ジカは生息地域の環境によって行動圏が異なる可能性が示唆され、被害対策としての捕獲を実施する際には実施場所と近隣農耕地との位置関係を念頭に置く必要があることが考えられた。また、直接被害とは結びつかないが、防除網がないこと、ひこばえなどが存在することは、シカを水田に引きつける要因となる可能性が考えられた。
著者
松村 嘉久 大谷 新太郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.150, 2009

<B>1.はじめに</B><BR> 新羅時代の古都・慶州市は,韓国屈指の観光地である。世界遺産「石窟庵と仏国寺」(1995年登録)が,市街地東南15kmほどの所にあり,市街地南部から南山地区にかけた「慶州歴史地域」も,2000年に世界遺産登録されている。慶州市での観光開発の歴史は古く,朴正煕大統領の指示で1971年から始まり,普門観光団地などが建設されている。市街地北20kmほどに位置する良洞民俗マウルでも,世界遺産登録申請に向けて集落内外での景観整備や施設建設が進みつつある。<BR> (中略)本発表では,慶州市の主な宿泊施設の集積地域で行ったフィールドワークから,宿泊施設の内実と分布特性を概観し,観光機能の分化に迫りたい。<BR><B>2.慶州市の主な宿泊施設の集積地域</B><BR> 慶州市には統計上は333軒の宿泊施設が存在し,客室総数は1万室を超える。その内訳は,A:等級付きの観光ホテル(13軒2,321室),B:コンドミニアム(8軒2,096室),C:旅館(276軒6,090室),D:旅人宿(36軒398室)となる。最も多いCの内実は,観光・ビジネスホテル的なものからモーテル・ラブホテル的なものまで多様である。ただし,韓国のモーテルやラブホテルは客室を時間貸しする所が少なく,一般的な観光客もよく利用する。C・Dのなかで立地条件の悪い所は,廃業状態にあるものも少なくない。<BR> 慶州市の主な宿泊施設の集積地域は,1:慶州高速バスターミナル周辺(50数軒),2:慶州駅周辺(20数軒),3:普門観光団地(20数軒),4:仏国寺周辺(40数軒)である。以上の四つの集積地域で,慶州市の全宿泊施設数の3分の1強を占め,客室数ならば約8割を占める。我々はこれら宿泊施設の外観と周辺の観察に加えて宿泊料金の確認を行い,宿泊施設が分散分布する2を除いた三地域では,包括的な土地利用調査も行った。<BR> 慶州市役所提供の統計資料によると,近年の外国人観光客は50万人前後,国内観光客は600から800万人くらいで推移している。外国人観光客の4割強は日本人が,国内観光客の4割強は学生が占める。2000年の世界遺産登録を契機とする顕著な観光客増は統計から見出せないが,外国人観光客を中心に宿泊を伴うものが確実に増えてきている。<BR><B>3.慶州市における宿泊施設の分布特性と観光機能の分化</B><BR> 集積地域1の宿泊施設はほぼ全てCに属する。宿泊料金は1部屋で2万₩から6万₩,5階建てまでの小規模なものばかりである。民家も多く残るが,バス停付近にレストランや小売店舗が多く,個人観光客が過ごしやすい空間編成が構築されている。格安ゲストハウス集積地域としての認知度が高く,外国人個人観光客の利用も多く,英語や日本語の看板も散見される。2000年の世界遺産登録の恩恵を受け,1の宿泊需要は増加傾向にあるためか,建設・改装中の宿泊施設もあった。<BR> 2の宿泊施設も全てCに属し,宿泊料金は2万₩から4万₩くらいである。日本でいう駅前旅館が多く,サウナ併設で客室を時間貸しする怪しげな所も数軒あった。2010年に慶州KTX新駅ができ,現在の慶州駅は廃止される予定なので,経営維持は困難になると見込まれる。外国人が宿泊するのは極めて稀で,国内ビジネス客が主な客層である。<BR> 湖畔リゾートである3の宿泊施設は,規模が大きく宿泊料金の高いA・Bが中心であり,カジノ・温泉・プールなど,付属施設も充実している。湖畔から離れた所にCが数軒立地している。主な客層は国内観光客と外国人観光客であり,個人よりも団体やパッケージでの利用が多い。国内観光客は9割以上が普門を訪問するが,外国人観光客は5割前後にとどまる。<BR> 仏国寺周辺4はCが多く,AやBも数軒立地する。国内修学旅行生向けの大規模なユースホステルが数軒あるが,学生の長期休暇が終わると次のシーズンまで事実上閉鎖する所が多い。宿泊料金が3万₩から4万₩くらいの小規模なモーテルも立地するが,利用客は少ない。市内循環バスの乗り場付近以外のレストランや複合商業施設は,実に閑散としている。建物こそ真新しい地域であるが,宿泊施設も含めて,すでに廃業,あるいは開店休業状態の所が目立つ。<BR> 慶州市は釜山からの日帰り観光圏で,KIXの開通でそれはさらに広がるであろうが,集客力の高い観光資源が郊外に点在するため,宿泊を伴う観光客は今後とも増加するであろう。宿泊施設の集積地域1・3・4は,各々が異なるタイプの観光客の受け皿となり,観光機能の分化が生起しつつある。1と4では空間的リストラクチャリングが起こる可能性も高い。<BR>
著者
石塚 譲 川井 裕史 大谷 新太郎 石井 亘 山本 隆彦 八丈 幸太郎 片山 敦司 松下 美郎
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-9, 2007 (Released:2007-08-21)
参考文献数
37
被引用文献数
4

季節や時刻による行動圏の変動をみるために, 成雌ニホンジカ2頭にGPS首輪を用いて, 経時的な位置を調査した. 調査期間は, それぞれ, 392日と372日で, シカの位置は0時から3時間毎に計測した. 2頭の年間行動圏面積はともに森林域と水田周囲とを含む43.7 haおよび16.3 haであり, 行動圏の位置に季節による変動はみられなかった. 個体1の季節別コアエリアは, 四季を通して水田周囲に位置し, 個体2でも夏期以外は水田周囲に位置した. 時刻別コアエリアは, 12時および15時では森林域に, 0時および3時では水田周囲に位置した. 以上の結果から, GPS首輪を装着した2頭の成雌ニホンジカは, 大きな季節移動をせず, 日内では, 森林域 (昼) と水田周囲 (深夜) を行き来していると考えられた. また, 行動圏とコアエリアの位置から農耕地への依存度が高いことが推察された.
著者
石塚 譲 因野 要一 西岡 輝美 出雲 章久 川井 裕史 山田 英嗣 大谷 新太郎 入江 正和 上脇 昭範 庄 澄子 高倉 将士 西田 祐子 大石 武士 安田 亮 おおちやまくじら生産組合 猟友会能勢支部
出版者
大阪府立食とみどりの総合技術センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

野生獣肉(ホンシュウジカ、イノシシ)成分は野生植生の影響を受けていたが、一般成分に捕獲時期の影響は少なかった。成分中では粗脂肪含量が家畜に比して少ないこと、イノシシ肉のα-Toc含量はブタ肉と同等であること、牛肉よりは酸化しやすいことが判った。利用先である西洋料理店は、年間を通じて野生獣肉を利用しており、肉利用にあたり品質や安全性を重視していること、購入価格が高いと考える店が多いことが判った。