著者
檜垣 聡 平木 咲子 大岩 祐介 岡田 遥平 市川 哲也 荒井 祐介 石井 亘 成宮 博理 飯塚 亮二
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.1295-1301, 2014-11-30 (Released:2015-02-27)
参考文献数
16

2008年4月から2012年12月の4年間で大腸憩室出血と診断された141例を対象に当院での治療戦略を検討した。大腸憩室出血に対する治療法には内視鏡的止血術,IVR,バリウム充填術,外科的手術などがある。内視鏡検査施行率は92.1%(130/141件)で,その内,内視鏡的止血術施行率は16.9%(22/130件)であった。止血術成功率は68.1%(15/22件)であった。血管造影検査施行率は9.2%(13/141件)であり,IVR成功率は100%(10/10件)であった。大腸憩室出血では再出血する場合があるが,当院でも止血困難・再出血症例が9例認められた。大腸憩室は多発する場合が多く,それぞれの治療法には長所・短所があり,どの治療法を選択しても再出血の可能性がある。いつでも次なる治療法を行えるように準備しておく必要があると考える。
著者
石塚 譲 川井 裕史 石井 亘 大谷 新太郎
出版者
近畿中国四国農業研究協議会
雑誌
近畿中国四国農業研究 (ISSN:13476238)
巻号頁・発行日
no.14, pp.100-104, 2009-03

大阪府内の異なる2地域において、野生ジカ雌のGPS首輪による行動調査を行った。固定カーネル法による行動圏調査において、一方は水田を含む農耕地周辺を主たる行動圏としており、昼間のコアエリアは森林域に位置するが、夜間のコアエリアは水田周囲に位置し、農業被害を起こす可能性が示唆された。他方は、森林地域を主たる行動圏としており、コアエリアは、夜間、昼間ともにほぼ森林域に位置し、農業被害への関与は少ないと考えられた。また、農耕地周辺を行動圏とする個体は、10月のコアエリアがイネ刈り取り後の水田に位置しており、落ち穂もしくはイネのひこばえを食している可能性が推察された。以上のことから、野生ジカは生息地域の環境によって行動圏が異なる可能性が示唆され、被害対策としての捕獲を実施する際には実施場所と近隣農耕地との位置関係を念頭に置く必要があることが考えられた。また、直接被害とは結びつかないが、防除網がないこと、ひこばえなどが存在することは、シカを水田に引きつける要因となる可能性が考えられた。
著者
藤原 岳 佐藤 格夫 石井 亘 橋本 直哉
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency
雑誌
NEUROSURGICAL EMERGENCY (ISSN:13426214)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-33, 2022 (Released:2022-07-12)
参考文献数
5

タイ王国コンケン病院外傷センターに短期留学する貴重な機会を得たので概要を報告する.本邦では神経外傷をはじめとする重症外傷の症例数は,自動車工学の発展,ヘルメット着用や飲酒運転の厳罰化とそれらに伴う市民意識の高まりにより減少傾向である.本邦での神経外傷研修には限界があると考え諸外国での研修での補完を企図した.コンケン病院において神経外傷の研修としては日本人初の研修生であり,約1ヶ月間の研修で100例を超える神経外傷症例を経験し,12例の緊急手術に参加した.神経外傷の症例数の減少している本邦の若手脳神経外科医において有用な研修であると考えられた.
著者
原 陽子 仲村 美輝 角 典以子 石井 亘 飯塚 亮二
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital (ISSN:03894908)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.45-54, 2019-12

重症外傷では,迅速な初期診療を行うことが患者の予後を左右する.初療室での処置・治療だけでなく,外科的治療を要する場合は迅速および的確に行うことが求められる. 当院は併設型の救命救急センターで,手術室は10 室,手術症例数は年間約7,000 件である.初療室での手術治療は「人,物,場所」の確保が難しい環境のため,主に重症外傷手術は手術室で行っている.しかし,手術を要する重症外傷患者の初療室搬入から手術室入室までの所要時間は,2012 年までは平均で90 分以上かかっていた.2013 年より,重症外傷手術を短時間で開始するため,重症外傷手術に必要な物品・資機材が準備された部屋を夜間帯・休日に一室作成し運用した(ダメージコントロール手ルーム:DCS ルーム).運用後,初療室搬入から手術室入室までの所要時間は平均で約30 分に短縮した. DCS ルーム運用により,重症外傷患者を迅速に的確に安全に受け入れ,医師や手術室看護師が安全な治療を提供できる有用な取り組みであった.
著者
石井 亘 飯塚 亮二 一杉 正仁
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.35-41, 2020 (Released:2021-04-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

自動車乗車中のシートベルト着用が義務化されてから、シートベルトによる胸腹部損傷が顕著になってきた。シートベルトによる損傷の形態と受傷機転を明らかにするために後方視的検討を行った。2013年4月〜2018年3月に京都第二赤十字病院(以下、当院)に入院した外傷患者の中で、シートベルト痕がありシートベルトに起因したと考えられる体幹部外傷例14症例を対象とした。各例で受傷機転、損傷、病院搬入時のバイタルサイン、治療法などを比較した。平均年齢は49歳で10例が運転者、3例が助手席乗員であった。胸腹部のシートベルト損傷のみを認めるのが8例、四肢や頭頸部に合併損傷を認めるのが6例であった。これらの間で平均ISS(Injury Severity Score)に有意差はなかった。また、明らかにシートベルトの着用位置が不適切であったのが4例あり、シートベルトが腹部にかかることで生じた小腸腸間膜損傷、腹壁筋膜下血腫、肩ベルトが頸部にかかることで生じた頸部の皮下血腫などが生じていた。自動車乗員の交通外傷診療では、シートベルト着用の有無を確認することがまず重要である。そして、シートベルトが正しい位置に着用されているかを確認する必要もある。シートベルト痕を認める症例では、経過とともに症状が現れて重症化することがあり、慎重な管理が必要と考える。
著者
岡田 遥平 荒井 裕介 飯塚 亮二 榊原 謙 石井 亘 檜垣 聡 北村 誠
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.295-300, 2014-07-15 (Released:2014-11-01)
参考文献数
20

循環動態の安定している脾損傷に対して,interventional radiologyや保存的加療などの手術を行わない管理(nonoperative management: NOM)が一般に行われている。今回我々は,鈍的脾損傷に対するNOMの経過中に巨大な脾仮性動脈瘤の遅発性破裂を来しながら,動脈塞栓術にて救命できた症例を経験したので報告する。症例は17歳の男性。自転車による転倒で当院救命救急センターをwalk inで受診した。腹部造影CT検査で外傷学会臓器損傷分類脾損傷IIIb型と診断したが,造影剤の血管外漏出を認めず,また循環動態も安定していたため安静臥床の方針とした。第9病日の腹部造影CT検査で脾内に直径38×41mmの脾仮性動脈瘤を認めたが,待機的にTAE (transcatheter arterial embolization:経カテーテル動脈塞栓術)を検討することとし厳重に経過観察の方針とした。第10病日に突然の腹痛を訴えてショック状態となったため腹部造影CT検査を施行し,脾仮性動脈瘤破裂と診断した。直ちに血管造影および塞栓術を施行し止血した。塞栓術後は再出血なく経過し,第30病日に独歩退院となった。鈍的脾損傷による脾仮性動脈瘤を認めた場合,直径10mm以上の症例は手術やTAEなどの治療介入が必要になるとの報告があり,また多くの症例で介入が報告されている。文献検索および本症例報告から,脾仮性動脈瘤の直径が10mm以上であれば,診断後に可及的速やかに血管造影検査,塞栓術を考慮すべきと考えられる。
著者
石塚 譲 川井 裕史 大谷 新太郎 石井 亘 山本 隆彦 八丈 幸太郎 片山 敦司 松下 美郎
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-9, 2007 (Released:2007-08-21)
参考文献数
37
被引用文献数
4

季節や時刻による行動圏の変動をみるために, 成雌ニホンジカ2頭にGPS首輪を用いて, 経時的な位置を調査した. 調査期間は, それぞれ, 392日と372日で, シカの位置は0時から3時間毎に計測した. 2頭の年間行動圏面積はともに森林域と水田周囲とを含む43.7 haおよび16.3 haであり, 行動圏の位置に季節による変動はみられなかった. 個体1の季節別コアエリアは, 四季を通して水田周囲に位置し, 個体2でも夏期以外は水田周囲に位置した. 時刻別コアエリアは, 12時および15時では森林域に, 0時および3時では水田周囲に位置した. 以上の結果から, GPS首輪を装着した2頭の成雌ニホンジカは, 大きな季節移動をせず, 日内では, 森林域 (昼) と水田周囲 (深夜) を行き来していると考えられた. また, 行動圏とコアエリアの位置から農耕地への依存度が高いことが推察された.
著者
赤川 優美 上野 晃弘 池田 淳司 石井 亘 宍戸-原 由紀子 関島 良樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.324-331, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
27
被引用文献数
4 5

症例1は59歳女性.特発性好酸球増多症に対しプレドニゾロンを内服中.脳MRI病変に軽度の造影効果が認められ,炎症の存在が示唆された.症例2は30歳女性.全身性エリテマトーデスに対し免疫治療中.脳生検が実施され,CD4およびCD8陽性細胞の均衡がとれたリンパ球浸潤を認めた.両症例とも神経症状発症早期に進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)と診断し,メフロキン,ミルタザピン,リスペリドンによる治療を行った.症例1は発症から24ヶ月,症例2は45ヶ月経過しているが,症状改善し生存している.PMLの予後は不良とされているが,JCウイルスに対する制御された免疫応答を有する症例では薬物治療が有効である可能性がある.
著者
石井 亘 藤井 宏二 飯塚 亮二 下間 正隆 泉 浩 竹中 温
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.2969-2973, 2007

症例は72歳, 女性. 左乳房のしこりを自覚. 初診時, 左乳房D領域にしこりを1個, 同側腋窩リンパ節腫大を認めた. CT上, 腫瘍本体の長径は34mm, 乳頭腫瘍間距離は30mmであった. 同側腋窩リンパ節の長径は, 25mmであった. informed-consentを行った結果, 経口抗癌剤併用療法を術前に3コース行い, CT上の腫瘍は長径8mmと著名な縮小を認め温存手術を可能にしえた. 以前より当院では, 乳癌患者の経口併用抗癌剤として, DMpC療法 (Doxifluridine+Cyclophosphamide+Medroxyprogesterone acetate) を行ってきた. TS-1がこれまでの経口フッ化ピリミジン系抗癌剤と比較して抗腫瘍効果が高く, 外来治療が可能であるため, DoxifluridineをTS-1に置き換えることによってより高い治療効果が期待される. 現在われわれは, 進行・再発乳癌に対する経口併用化学療法 (TS-1+Cyclophosphamide+Medroxyprogesterone acetate) の第I/II相臨床試験を進行中である.