著者
山近 友里恵 山田 深 山田 卓也 中島 佐和子 寺林 大史 大田 哲生 木村 彰男
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2009 (Released:2010-04-21)

【目的】床面に登坂角度をつけた傾斜トレッドミル歩行における下肢関節運動および筋活動の特性を明らかにし,臨床での有用性について検討する.〈BR〉【方法】対象は本研究の内容について同意を得た健常成人3名(24.0±0.0歳).平地(Flat Floor:FF),傾斜なしトレッドミル(Flat Treadmill:FT),坂道(傾斜角12%)(Up-Slope:US),傾斜トレッドミル(同12%)(Tilt Treadmill:TT)の順に3分間の休憩を挟んで歩行を行った.FF,US歩行速度は主観的快適速度とし,FT,TT歩行はそれぞれFF,USと同一に設定した.歩行中の下肢筋電図および股関節角度変化を記録するために左側中殿筋,大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋筋腹上に表面電極を,股関節に角度計を貼付し,テレメータを介して各波形を記録した(サンプリング周波数2 kHz).また,圧センサーを足底に設置して歩行周期を同定した.解析はオフラインで行い,筋電波形を全波整流した後,50歩行周期分を加算平均し,各条件におけるパターンの相違を検証した.〈BR〉【結果】大殿筋,大腿筋膜張筋および大腿直筋の表面筋電波形パターンは個人差が大きく一定の傾向は見られなかったが,中殿筋においては立脚初期から中期にかけて筋活動の増大が共通して確認された.特にTTおよびUS歩行では二峰性のパターンを示し,中殿筋の筋活動は傾斜のない歩行と比べ相対的に増大していた.また,TT歩行時の筋活動はUS歩行と比べ全般的に高電位であった.股関節角度はTTおよびUS歩行において,遊脚後期から立脚初期にかけて屈曲方向へ増大する傾向が認められた.〈BR〉【考察】斜面歩行は平地歩行と比べ,股関節外転筋群への運動負荷を効率的にかけ得ることを示した.さらに,トレッドミルを用いることで,筋活動をより増大させることが可能であると示唆された.
著者
山田 深
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.676-680, 2016-09-18 (Released:2016-10-20)
参考文献数
3
被引用文献数
1

「ICF CORE SETS-Manual for Clinical Practice」の日本語版である「ICFコアセット 臨床実践のためのマニュアル」は,各ICFコアセットの日本語名称を公式なものとして示し,ICFコアセットの利用方法についての解説を日本語化したものである.個々の用語は原則として「ICF国際生活機能分類―国際障害分類改定版―」に準拠する形で訳出した.ICFコアセットの日本語化がなされたことで,わが国においても統一した基準の下で,医療,福祉の分野において幅広くICFが活用されていくことが期待される.
著者
東條 友紀子 山田 深 門馬 博 前田 直 石田 幸平 松本 由美 栗田 浩樹 西山 和利 岡島 康友 山口 芳裕
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B1137, 2008 (Released:2008-05-13)

【はじめに】 当院は2006年5月に脳卒中センターを開設し、初期治療と平行して発症早期からのリハビリテーション(以下、リハビリ)を積極的に行う脳卒中ユニットケアの実践に取り組んでいる。診療チームにおける理学療法士の重要な役割の一つとして、患者のADLに関する予後を早い段階から見通し、介入方針を決定することが求められるが、急性期からの予後予測モデルに確立されたものはない。今回、入院時の重症度から群分けを行い、退院時のADLを予測する方法を検討したので報告する。【対象】 2006年5月から2007年6月までに当センターに入院しリハビリを行った脳卒中患者のうち、死亡退院および入院期間が1週間以内であったものを除く332名(平均年齢71.8±12.6歳、男性196名、女性136名、平均在院日数29.7±19.2日、リハビリ開始まで平均1.45±1.36日)。【方法】診療データベースを参照し、患者の年齢、入院時NIHSS、入退院時FIM、リハビリ開始までの日数、在院日数、転帰先を後方視的に調査した。対象を入院時NIHSSによって軽症例群(6点以下)、中等症群(7点以上14点未満)、重症例群(15点以上)の3群に分け,それぞれの調査項目を比較した。群間比較については一元配置分散分析を用い、有意水準を5%とした。【結果】 軽症例群、中等症、重症例群における平均在院日数はそれぞれ23.2±15.7、37.0±19.0、40.0±19.0日であり、軽症例群と中等症群間に有意差が認められた。FIM運動項目合計点はそれぞれ76.0±20.0、43.0±26.0、27.0±23.0点、認知項目合計点は31.6±6.0、22.0±11.0、13.0±9.4点で、いずれの得点も各群間で有意差が認められた。退院時FIM合計得点から入院時FIM合計得点を引いた差分(FIM利得)は各群で30.5±19.8、26.0±26.0、16.0±24.0点であり、重症例群は他の2群と比べ有意に低値であった。自宅退院率はそれぞれ61.5%、9.4%、10.1%であり、回復期リハビリ病院への転院は30.8%、54.7%、33.3%であった。【考察】 軽症例は入院期間においてほぼADLの自立が得られるが、リハビリの継続が必要となるものも少なからず存在することが示された。一方で重症例はリハビリ介入によるADLの改善が限られており、自宅への退院が困難であった。入院時NIHSSは退院時のADLや転帰先を予測する上で有用な指標になりうると考えられる。NIHSS得点とFIMの関係はこれまでにも報告がなされているが、大都市圏における急性期脳卒中ユニットとしての特性を踏まえた予後予測モデルとしての有用性が示唆された。