著者
井上 哲也 皆川 邦朋 松田 岳人 山口 芳裕 村田 厚夫 島崎 修次
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.72-76, 2003-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
5
被引用文献数
1

A 40-year-old Japanese man was brought to our hospital presenting with a deterioration of consciousness and respiratory failure after being bitten by an imported snake. On admission, he was in a deep coma with generalized paralysis. Because of his difficulty in breathing, he was intubated orally and controlled mechanical ventilation was started. To identify the snake, we obtained a photocopy of the snake and transferred it to the Japan Snake Institute via E-mail. The snake was identified as Bungarus candidus, and the antivenom was transferred to our hospital by a police car. The antivenom was given 16 hours after the bite, and neostigmine was administered for 10 days. The patient recovered from the respiratory paralysis six days after admission. His muscle weakness gradually improved, and he was discharged from hospital on the 44th hospital day. He continues to complain of fatigue almost one year after the incident.
著者
大森 達矢 樽井 武彦 守永 広征 松田 岳人 八木橋 厳 山田 賢治 松田 剛明 山口 芳裕
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.703-707, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
18

背景:ガイドライン2010(以下,G2010と略す)施行以降,胸骨圧迫の重要性が強調されており,強い胸骨圧迫による合併症の増加や,治療成績に与える影響も懸念される。方法:平成24年に当施設に搬送された院外心停止患者のうち外傷例を除く210例を対象とし,G2010による東京消防庁救急活動基準変更の前後(105例ずつ)で,胸骨圧迫の合併症,自己心拍再開率を比較した。結果:肋骨骨折は105例(50%),気胸は26例(13%)で,救急活動基準変更の前後で有意差はなく,心拍再開率にも差はなかった(前後期とも19%)。合併症は75歳以上で有意に多く発生したが,心拍再開率には影響がなかった。また,気胸が発症した症例では心拍再開率が12%と低い傾向があった。結論:ガイドラインの変更に伴い合併症の増加が心配されたが,本研究はそれを否定するものであった。治療成績向上のためには,効果的かつ合併症を最小限に抑えるような胸骨圧迫が重要である。
著者
土屋 大介 加藤 聡一郎 清水 裕介 田中 佑也 西沢 良平 吉川 慧 落合 剛二 持田 勇希 宮国 泰彦 海田 賢彦 山口 芳裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.397-400, 2023-12-28 (Released:2023-12-28)
参考文献数
16

症例は80歳代の男性。公共施設で腹部を押さえながら倒れたところを目撃され, 救急要請された。救急隊接触時, 傷病者はショック状態であり, 救命対応と判断した救急隊はランデブーポイントへ急行し東京都ドクターヘリと合流した。覚知からドクターヘリフライトスタッフと接触するまでに要した時間は34分だった。フライトスタッフが実施した超音波検査で破裂性腹部大動脈瘤が強く疑われ, この情報から搬送先医療機関では血管内治療に備えた受入体制が整えられた。ドクターヘリ搬送後, 緊急でステントグラフト内挿術が施行された。その後の経過は良好であり, 入院19日目に, 独歩で自宅退院した。破裂性大動脈瘤の救命には, 地域の救急診療体制および搬送中の傷病者管理が大きく影響するとされている。本事案は, 都市部で運用されるドクターヘリと救急隊の連携が, 早期収容と初期蘇生, 専門医療機関への迅速かつ安寧な搬送, および速やかな血管内治療の実施につながったことで, 良好な転帰を得たものと考えられた。
著者
緒方 友紀 持田 勇希 海田 賢彦 山口 芳裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.261-264, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
11

糖尿病の既往のない60歳代男性。入院1週間前より消化器症状が出現し, さらに構音障害と異常行動が出現したため家族が救急要請した。救急隊により脳梗塞を疑われ, 当院脳卒中科へ搬送された。来院直後にショックバイタルとなり, 精査結果から糖尿病性ケトアシドーシスを伴う劇症1型糖尿病と診断し, 集中治療室に入室した。血糖コントロールを含めた全身管理により状態が改善し, 第14病日には一般病棟へ転床となり良好な転帰を得た。劇症1型糖尿病の症状は多彩で急速な経過をたどることが特徴であり, 救急要請の段階で中枢神経症状を呈している可能性が高い。プレホスピタルで脳卒中が疑われた際には初期診療から専門診療科に振り分けられるため, 脳卒中選定患者に当該疾患が潜んでいる認識をもち, 遅滞なく糖尿病ケトアシドーシスに対する治療介入することが肝要である。
著者
東條 友紀子 山田 深 門馬 博 前田 直 石田 幸平 松本 由美 栗田 浩樹 西山 和利 岡島 康友 山口 芳裕
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B1137, 2008 (Released:2008-05-13)

【はじめに】 当院は2006年5月に脳卒中センターを開設し、初期治療と平行して発症早期からのリハビリテーション(以下、リハビリ)を積極的に行う脳卒中ユニットケアの実践に取り組んでいる。診療チームにおける理学療法士の重要な役割の一つとして、患者のADLに関する予後を早い段階から見通し、介入方針を決定することが求められるが、急性期からの予後予測モデルに確立されたものはない。今回、入院時の重症度から群分けを行い、退院時のADLを予測する方法を検討したので報告する。【対象】 2006年5月から2007年6月までに当センターに入院しリハビリを行った脳卒中患者のうち、死亡退院および入院期間が1週間以内であったものを除く332名(平均年齢71.8±12.6歳、男性196名、女性136名、平均在院日数29.7±19.2日、リハビリ開始まで平均1.45±1.36日)。【方法】診療データベースを参照し、患者の年齢、入院時NIHSS、入退院時FIM、リハビリ開始までの日数、在院日数、転帰先を後方視的に調査した。対象を入院時NIHSSによって軽症例群(6点以下)、中等症群(7点以上14点未満)、重症例群(15点以上)の3群に分け,それぞれの調査項目を比較した。群間比較については一元配置分散分析を用い、有意水準を5%とした。【結果】 軽症例群、中等症、重症例群における平均在院日数はそれぞれ23.2±15.7、37.0±19.0、40.0±19.0日であり、軽症例群と中等症群間に有意差が認められた。FIM運動項目合計点はそれぞれ76.0±20.0、43.0±26.0、27.0±23.0点、認知項目合計点は31.6±6.0、22.0±11.0、13.0±9.4点で、いずれの得点も各群間で有意差が認められた。退院時FIM合計得点から入院時FIM合計得点を引いた差分(FIM利得)は各群で30.5±19.8、26.0±26.0、16.0±24.0点であり、重症例群は他の2群と比べ有意に低値であった。自宅退院率はそれぞれ61.5%、9.4%、10.1%であり、回復期リハビリ病院への転院は30.8%、54.7%、33.3%であった。【考察】 軽症例は入院期間においてほぼADLの自立が得られるが、リハビリの継続が必要となるものも少なからず存在することが示された。一方で重症例はリハビリ介入によるADLの改善が限られており、自宅への退院が困難であった。入院時NIHSSは退院時のADLや転帰先を予測する上で有用な指標になりうると考えられる。NIHSS得点とFIMの関係はこれまでにも報告がなされているが、大都市圏における急性期脳卒中ユニットとしての特性を踏まえた予後予測モデルとしての有用性が示唆された。