著者
髙橋 真 岩本 浩二 門間 正彦 水上 昌文
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.138-145, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
19

【目的】大学野球選手における投球側肩関節の外旋角度の増大に伴う上腕骨頭-肩甲骨関節窩後縁の骨間距離(以下,PGHD)を明らかにすることである。【方法】対象は大学野球選手11 名の投球側肩関節11肢とした。MRI 撮像時の肩関節肢位は肩90°外転位から90°,100°,110°外旋位の3 肢位とし,各肢位のPGHD を計測した。【結果】PGHD は肩関節90°外旋位よりも110°で有意に低値だった。【結論】肩関節外旋角度が増大すると,上腕骨頭と肩甲骨関節窩後縁が接近した。
著者
竜田 庸平 福本 礼 橋本 俊顕 岩本 浩二 宮内 良浩 小川 哲史 藤元 麻衣子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P3012-A4P3012, 2010

【目的】<BR> 広汎性発達障害の原因説にはミラーニューロン(以下MN)障害説があり,MNは模倣と運動学習に関連している.今回,MNの存在する44野付近の運動模倣中の賦活状態を計測することを目的に光トポグラフィー(以下NIRS)を用いて測定し,広汎性発達障害児と健常児との間に差があるか検証したので報告する.<BR>【方法】<BR> 広汎性発達障害児群は20名(11.7±3.53歳) 障害別内訳(高機能自閉症10名・アスペルガー症候群10名)男児19名,女児1名であった.健常児群は,健常児10名(12.3±2.95歳),男児8名,女児2名であった.なお,対象は全員右利きであった.NIRSの測定は近赤外光イメージング装置OMM-3000シリーズ;島津製作所を使用した.測定は,Czより11cm側方3cm前方の44野付近を測定した.NIRSのプローペパッドを2枚用意し両側に貼り付けた. 課題には田中の改訂版随意運動発達検査を用いた. 30秒×3を1セット,合計2セット行った.1番目,3番目の30秒は休憩,2つ目の30秒は課題を行った.課題は健常成人の右手のb-4,b-5,b-6を動画撮影し,PC画面に呈示した.対象には動画上の運動を模倣してもらった.分析方法として,ビデオによる行動分析と,ピーク振幅を求めU検定を行った.加えて, 44野付近の平均加算を2群それぞれグラフ化し,目視にて分析を行った. <BR>【説明と同意】<BR> 対象者には十分に説明を行い,同意を得た後測定した.なお,本研究は当校倫理委員会の承認を得た.<BR>【結果】<BR> 広汎性発達障害児群には何らかの異常な模倣行動が認められ,健常児群には認められなかった. 異常な模倣行動の内訳として,課題施行中の集中力低下8例・鏡像模倣1例・左右逆模倣4例・鏡像模倣だが鏡になっていない模倣5例・動画と非同調な模倣13例であった.U検定の結果,課題の1セット目では,24個中10個のチャンネル(以下CH)で,2セット目では24個中8個のCHで広汎性発達障害児群が健常児に比べ有意に低かった. 中でも,健常児群と比較して広汎性発達障害児群は44野付近の12CHと23CHが1セット目2セット目にわたり,有意に低下していた. 44野付近の平均加算の結果,健常児群と比較して広汎性発達障害児群は,平坦なグラフとなり,44野付近の活動が確認できなかった.健常児群では課題施行中にoxy-Hbが上昇するグラフとなり,44野付近の活動が確認できた.<BR>【考察】<BR> 模倣は6歳前半に完成するとされている.模倣には身体図式が関係しているため,広汎性発達障害児群も身体図式に障害があったのではと考える.人が身体図式を利用するにはMNが関係し,広汎性発達障害児の場合,MNに障害があるために身体図式を用いたdirect matchingがうまく機能していないことが考えられた.実際に広汎性発達障害児群は,44野付近のCHで有意差が見られ,平均加算データも,健常児群と比較して平坦になっていた.このことはdirect matchingの機能をうまくコントロールできていない状態をリアルタイムに採取できたと考える.運動学習は3段階に分けられ,このなかでも初期の認知段階では教示・示唆・運動見本の提示が重要となる.この初期の認知段階には模倣を必要とし,模倣を行うことによって運動学習の見本を自己にインプットする.Meltzoff(1989)によると模倣行動は新生児より出現するとの報告があり,新生児の時期からの模倣行動の重要性が伺える.しかし,これら模倣に関連した44野を含むMNシステムに障害があるとされる広汎性発達障害児において,運動学習には不利な状況であることが今回の研究により考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 模倣とコミュニケーション能力,模倣とMNの研究,模倣と身体図式等,いろいろな方面から模倣に対する研究が盛んに行われており,模倣を理解することは,運動学習を教示する立場である私たちにとって有益なものになると考える.
著者
髙橋 真 岩本 浩二 水上 昌文 井波 博 桑水流 学 宮田 賢児 山口 勝也 嶽本 伸敏 井河 武 宮内 幸男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.155-158, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11

〔目的〕本研究の目的は足関節捻挫(捻挫)における外果骨損傷の有病率と治癒過程を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は2015年1月から2017年1月に受診した捻挫患者の37例とし,骨損傷(14例)と靭帯損傷(23例)に分類した.〔結果〕骨損傷の有病率は38%,年齢は47.4歳,安静期間は49.1日,完治期間は102.7日,スポーツ受傷は14例中3例であった.年齢は骨損傷が靭帯損傷と比較して高値を示した.骨損傷はスポーツ動作での受傷が少なかった.〔結語〕骨損傷は捻挫の約4割に認め,年齢が高く,スポーツ動作での受傷が少なかったため,日常生活動作へのアプローチが必要と示唆された.骨損傷は完治期間が約3ヵ月であり,靭帯損傷との有意差がなかったことから,約7週の安静期間は損傷部位の治癒に重要と考察された.
著者
高田 雄一 矢崎 香苗 岩本 浩二 飯島 光博 又村 貴大 山本 可奈子 宮本 重範
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.893-896, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
11

〔目的〕足部形状に変形のない健常足と内側縦アーチが低下した扁平足では地面へ接する部位は異なる.扁平足は足底感覚閾値にどのような影響を与えるのか検討することであった.〔対象と方法〕対象は健常群22名,および内側縦アーチが低下している扁平足群21名とした.モノフィラメント圧痛計を用いて9つの足底部位(母趾中央,示趾中央,中趾中央,環趾中央,小趾中央,母趾球,小趾球,内側縦アーチ中央,踵中央)において足底感覚閾値をそれぞれ測定した.測定した閾値を部位ごとに群間比較した.〔結果〕小趾球でのみ扁平足群で有意に閾値が低かった.〔結語〕扁平足群では健常群に比べ荷重量の少ないと考えられる小趾球の感覚閾値が低いことがわかった.
著者
髙橋 真 桑水流 学 岩本 浩二 宮内 幸男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.741-749, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
24

〔目的〕インターナルインピンジメント症状を呈した高校野球選手に対し全身的介入による改善効果を検討した.〔対象と方法〕症例は後方関節唇損傷,上腕骨大結節背側損傷を呈した高校野球選手であった.理学療法は投球強度を調整し,肩関節の炎症鎮静をはかった.また,肩甲上腕関節,肩甲帯,投球の運動連鎖を考慮に入れた体幹・下肢筋群の機能的アプローチを40分,週1回,10ヵ月行った.〔結果〕肩関節の炎症所見は消失し,肩関節後面筋群の柔軟性,腱板筋群と僧帽筋の筋力,片脚立位姿勢は改善した.理学療法介入から7ヵ月後で投球痛は消失し,9割の投球が可能となり,投手として競技に復帰した.〔結語〕肩関節,投球早期に着目した体幹・下肢筋群の機能的アプローチはインターナルインピンジメント症状の再発,予防に効果を示した.
著者
髙橋 真 岩本 浩二 門間 正彦 水上 昌文
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
2020

<p>【目的】大学野球選手における投球側肩関節の外旋角度の増大に伴う上腕骨頭-肩甲骨関節窩後縁の骨間距離(以下,PGHD)を明らかにすることである。【方法】対象は大学野球選手11 名の投球側肩関節11肢とした。MRI 撮像時の肩関節肢位は肩90°外転位から90°,100°,110°外旋位の3 肢位とし,各肢位のPGHD を計測した。【結果】PGHD は肩関節90°外旋位よりも110°で有意に低値だった。【結論】肩関節外旋角度が増大すると,上腕骨頭と肩甲骨関節窩後縁が接近した。</p>
著者
佐野 歩 岩本 浩二 冨田 和秀 萩谷 英俊 滝澤 恵美 水上 昌文 門間 正彦 大賀 優 居村 茂幸
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P3046-A4P3046, 2010

【目的】<BR>近年、筋圧や筋力評価、筋肉や腱の損傷回復の効果判定など多くの分野に超音波診断装置が用いられてきており、有用といわれている。超音波診断装置による画像診断は、X線では評価しづらい軟骨・筋肉・腱・靱帯・神経を抽出することができ、MRIでは評価しづらい滑膜や関節液の貯留、筋肉や関節の動きを評価することが可能である。また、無侵襲で容易に操作が可能な検査技術である。肩関節や側腹部診断など多くの研究が行われている半面、測定結果への信頼性に対して懐疑的な意見も散見できる。超音波診断装置を用いた測定結果への信頼性研究は少なく、確立されているとは言いがたい現状である。本研究では、肩関節周囲筋のなかでも計測指標が簡単で、筋腹が皮下にて計測できる棘下筋を対象に、本研究では超音波診断装置を用いた筋厚測定の信頼性について検討したので報告する。<BR>【方法】<BR>計測にはHONDA ELECTRONICS社製CONVEX SCANNER HS-1500を用いた。プローブは、周波数7.5MHzのリニアプローブを使用し、全て同一の検査者が実施した。被験者は肩関節に痛みを有しない健常成人男性5名、左右10肩とした。被験者の平均年齢は26.4±4.2歳、平均身長は171.0±5.6cm、平均体重は65.4±5.6kg、平均BMIは22.4±2.4であった。棘下筋の計測部位は、棘下筋のみを計測できる部位として、棘下筋を皮下に直接計測可能な肩甲棘内側1/4、30mm尾側の筋腹にて計測した。計測肢位は椅子坐位で、体幹部は床に対し垂直となる中間位、上腕は体側につけ上腕長軸は床面と垂直に下垂し、肘関節90度屈曲位、肩関節内旋外旋中間位ならびに前腕回内回外中間位とする肢位で、前腕部の高さを調整したテーブルに乗せ、余計な筋収縮が入らずに安楽に配置できるように配慮した坐位姿勢を基本測定姿勢とした。測定は、肩関節中間位、肩関節最大外旋位、肩関節最大内旋位の3肢位である。肩甲骨へのプローブの接触角度は、肩甲骨の傾斜角に垂直とし、傾斜角度を左右ともに測定した。肩関節自動運動での内旋・外旋以外の代償運動が行われないように、第3者が肘関節部を固定して実施した。再現性の確認のために、測定は3日間に渡り実施し、代謝の影響を考慮して同一時間帯にて棘下筋厚を測定した。左右3肢位での棘下筋厚で得られたデータは、各肢位にて3回ずつ測定した際の平均計測値を級内相関係数ICC(1,3)を用いて検者内の信頼性について検討した。統計解析はSPSSを用い,一元配置分散分析により級内相関係数ICCを算出し検討した。<BR>【説明と同意】<BR>すべての被験者に対し、ヘルシンキ条約に基づき、書面にて研究内容を十分に説明し、同意を得た。<BR>【結果】<BR>画像測定での平均値は右中間位10.7±3.04mm、右内旋位9.3±2.32mm、右外旋位18.5±2.88mm、左中間位7.9±2.58mm、左内旋位7.2±1.82mm、左外旋位16.6±4.12mmであった。<BR>級内相関係数では、右中間位ICC=0.964、右内旋位ICC=0.845、右外旋位ICC=0.961、左中間位ICC=0.920、左内旋位ICC=0.958、左外旋位ICC=0.923となり、それぞれ高い信頼性を示した。<BR>【考察】<BR>今回の測定方法により、棘下筋厚の測定値において高い検者内信頼性が示された。測定肢位や検査方法に条件設定を細かく行ったことにより、再現性を高めることができた。今回高い再現性が示された理由として、棘下筋はランドマークがとりやすく、皮下より棘下筋のみの計測が可能なため、機器測定条件の設定が簡便であることがあげられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>今後は得られた信頼性を基に適応を拡大し、肩関節疾患を有する患者に対し、理学療法の効果を超音波診断装置を用いて検討して行きたい。<BR>
著者
榎本 景子 萩谷 英俊 岩本 浩二 六崎 裕高
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学付属病院職員研究発表報告集 : ひろき (ISSN:13448218)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-6, 2010

足関節機能障害に対する外科的治療では、主に関節固定術あるいは人工関節置換術が存在する。人工足関節置換術は、関節固定術に比べると運動性を有するため、除痛ばかりでなく、可動域改善のため基本動作やADLの改善にも効果がある。しかし、合併症(緩み、沈下による再置換など)や正常可動域の獲得が困難である不良例が存在することも報告されており、長期成績に関しては人工膝関節や股関節と比較すると問題があるといわれているのが現状である。 今回、リウマチ性関節炎亜型による右足関節痛を有する症例に対し、人工足関節置換術後5週間の理学療法を実施した。術後は疼痛が消失し、理学療法により術中に確認された足関節角度は獲得され、歩容や耐久性が改善された。退院時には、運動量の確認、浮腫管理やアイシング、マッサージなどを継続することを指導し、在宅生活で必要となる床からの立ち上がりや階段昇降について負担の少ない動作方法について確認を行った。 今後継続的にフォローし、疼痛や緩みなどが出現していないか長期的経過観察をしていくことが重要となる。