- 著者
-
岩田 知之
- 出版者
- 名古屋工業大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
アパタイト型ケイ酸ランタンLa_<9.33-2x>(SiO_4)_6O_<2-3x>は,酸化物イオン伝導体として実用化されている安定化ジルコニアと比較して700℃以下の低温でより高いイオン伝導度を示す材料であり,SOFCへの応用が期待されている.ケイ酸ランタンが高いイオン伝導度を示す本質的な理由が議論され,現時点では「格子間酸素イオンの寄与が最も重要である」と考えられているが,その化学組成を厳密に定量分析した研究例はほぼ皆無であり,不純物が混在した試料を解析している場合が多々認められる.ケイ酸ランタン(x=0)の高分解能X線粉末回折パターンから結晶構造を精密化して,酸化物イオンが比較的動きにくい室温と,比較的動きやすい800℃の結晶構造を比較している.詳細な結晶構造解析は,最大エントロピー法で電子密度分布を三次元可視化することで行なっている.さらにLaとO原子に欠陥を持つアパタイト型ケイ酸ランタン(x>0)の存在を初めて明らかにした.xの増加とともに,席占有率g(La1)とg(La2),g(O4)は減少した.一次元トンネル中の酸化物イオンO4の異方性原子変位パラメターの値は,xの増加(g(O4)の減少)にともない減少した.ごく最近の研究では,Bechade博士と共同で,分子動力学法とbond valence sum法を用い,格子間隙の酸化物イオンサイトと伝導メカニズムを解明している.以上の知見を踏まえて,ケイ酸ランタンの温度と化学組成による結晶構造の変化を基に,イオン伝導度と結晶構造との関連を解明した.