著者
松河 秀哉 大山 牧子 根岸 千悠 新居 佳子 岩﨑 千晶 堀田 博史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.233-244, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3

本研究では,様々な制約から活用が難しかった授業評価アンケートの自由記述の分析に関し,ある大学で実施された9年分,約6万件のデータに対して,潜在ディリクレ分配モデル(LDA)に基づいたトピックモデルによる分析を行い,170のトピックを抽出した.抽出したトピックに対しては,一定の手順に従ってラベルを付与し,ラベルの妥当性を検証した.その結果,ラベルには十分な妥当性が確認され,トピックモデルによる分類が全体的には人間の感覚に適合したものであることが示された.本研究ではさらに,自由記述を科目群の情報と紐付けて分析を行い,各科目群に存在するトピックの割合や,全体の傾向と比較した各科目群のトピック分布の特徴について,クロス表による情報の可視化を行った.こうした分析手法は今後Institutional Research (IR),Learning Analytics (LA)等での応用が期待される.
著者
岩﨑 千晶
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.281-296, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
35

本研究の目的は,教員が「初年次教育で学習支援に従事する学生スタッフ」に対して求める能力・経験と彼らの育成方法を明示することである.教員5名にインタビューをし,分析考察をした結果「課題探究において考えるプロセスを深める」「活動を振り返るためにフィードバックをする」「受講生のロールモデルとなる」等,11の能力・経験が導出された.これらは「初年次生の課題と初年次生に培ってほしい能力」への密接な関わりや,「受講生に共感し,共に考える」「教員と受講生の架け橋になる」等,教員に担えない学生ならではの能力を含んでいた.また教員は能力別にレベル分けをする段階性の方法ではなく,複数の学生スタッフが足りない部分を補い合える学びあいや模倣学習を重視し,どの学生スタッフも活動できる場を提供し,活動にフィードバックをすること等による方法で学生スタッフを育成していることが示された.
著者
山田 嘉徳 森 朋子 毛利 美穂 岩﨑 千晶 田中 俊也
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
no.6, pp.21-30, 2015-03

本稿では学びに活用するルーブリックの評価に関する方法論を検討する。ルーブリックを用いた評価が注目されるようになった背景を確認し、ルーブリックのタイプとその特徴を整理する。ルーブリックを用いた評価主体・方法に着目しながら、クラスルーブリック、コモンルーブリック、VALUE ルーブリックのそれぞれの活用実態を示す。また、先行研究の知見を踏まえ、ルーブリックによる評価にまつわる課題を指摘した上で、学びに活用するルーブリックの評価の質を保証するための方法論について検討する。特に、質的研究における妥当性に関する議論を手がかりに、ルーブリックを学びに活用するための知見を提示する。具体的には、ルーブリックの評価基準の妥当性の担保において、トライアンギュレーション概念が有効であるのに対し、ルーブリックの学びへの活用という点においては、妥当化、決定に至る足跡といった概念が有効であることを示す。最後に、評価活動への参加という観点から、学びとしての評価における学習メカニズムの仔細な検討が学びに活用するルーブリックの可能性を議論する上で重要な課題となることを指摘する。
著者
岩﨑 千晶
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46090, (Released:2023-04-06)
参考文献数
35

本研究の目的は,教員が「初年次教育で学習支援に従事する学生スタッフ」に対して求める能力・経験と彼らの育成方法を明示することである.教員5名にインタビューをし,分析考察をした結果「課題探究において考えるプロセスを深める」「活動を振り返るためにフィードバックをする」「受講生のロールモデルとなる」等,11の能力・経験が導出された.これらは「初年次生の課題と初年次生に培ってほしい能力」への密接な関わりや,「受講生に共感し,共に考える」「教員と受講生の架け橋になる」等,教員に担えない学生ならではの能力を含んでいた.また教員は能力別にレベル分けする段階性の方法ではなく,複数の学生スタッフが足りない部分を補い合える学びあいや模倣学習を重視し,どの学生スタッフも活動できる場を提供し,活動にフィードバックをすること等による方法で学生スタッフを育成していることが示された.
著者
岩﨑 千晶
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.137-140, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
11

本研究の目的は初年次教育における学習支援に従事する学生スタッフに対し,教員が求める能力・経験を明らかにすることである.教員5名に対し半構造化インタビューをし,分析考察を加えた結果「課題探究において考えるプロセスを深める」「活動を振り返るためにフィードバックをする」「受講生のロールモデルとなる」「課題探究における一連のプロセスを経験している」等,11の能力・経験が導出された.これらは「初年次生の課題と初年次生に培ってほしい能力」への密接な関わりや,「受講生に共感し,共に考える」「教員と受講生の架け橋になる」等,教員には担えない学生ならではの能力を含むことがわかった.
著者
岩﨑 千晶 川面 きよ 村上 正行
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Suppl., pp.157-160, 2018-12-20 (Released:2018-12-21)
参考文献数
7

本研究では大学がラーニングコモンズ(LC)をどう評価しているのか整理し,評価方法に関する動向を明らかにする.具体的にはCiNii を活用し「ラーニングコモンズ」で検索収集し,LC の評価を扱った文献66件に対し,評価目的,評価手法,評価項目に着目して分析し,結果を整理した.分析の結果,LC の評価は6つの目的に分けられ,LC の利用動向を明らかにする調査が最も多く約半数を占めた.一方で学習成果を明らかにする調査は限られており,その評価項目には汎用的な能力が用いられていた.評価手法は質問紙調査に次いで,観察調査・ヒアリング調査の採用がされていた.また量的な調査が全体の約70%を占めていることが明らかになった.
著者
柴 健次 森田 雅也 岩﨑 千晶
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
no.3, pp.31-52, 2012-03

第一主題「高大連携」は、高大の「接続のための連携」という関係において正当に位置づけられる。この関係において、学力選抜による高大接続から非学力選抜による高大接続への傾きと、入学者の数の確保のための高大連携から入学者の質の確保のための高大連携への傾きが、同時に起きているという現状と、その方向性を確認した。第二主題「経営リテラシー」については、具体的に新設ビジネス高校でその定着を試みるテキスト『ビジネス・アイ』に一定の効果を期待すると評価する一方で、中等教育に経営リテラシーの定着を図ることすなわち部分最適が、中等教育の全体最適を損なわないように注意すべきであると指摘した。我々はビジネス教育に従事する教員に上記2 主題に関連付けた調査を実施した。その結果、経営リテラシーの定着の担い手である教員自体の困惑振りが確認できた。つまりは定着の目的、その教育内容と教育方法に課題が山積していることを指摘した。最後に中等教育に限定されずに経営に関する専門職教育に範囲を拡大して課題を確認した。その結果、高等教育機関においても経営者を専門職と位置づけた教育が普及していない現状において、この国でその教育が必要とされるなら、専門職研究と専門職に対応する教育内容と教育方法の研究が必要であると主張した。
著者
岩﨑 千晶 川面 きよ 遠海 友紀 村上 正行
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45095, (Released:2021-10-21)
参考文献数
9

本稿では日本の4年制大学のラーニングコモンズ(LC)を対象に調査を行い,LC での学習支援の現状に関して分析をした.研究目的は,①LC で提供する学習支援の内容,②授業に関わる学習支援の内容,効果と課題を明示することである.調査の結果,図書館に関連する学習支援に加えて,ライティングやIT といったアカデミックスキルや外国語を扱う学習支援が実施されていることが示された.また授業に関わる学習支援により,学習者の能力向上やLC 利用者の増加につながる効果が見受けられたが,対応できる学生数に限りがあるという課題も示された.大学によっては授業に関する学習支援の拡充を控える傾向もあり,過渡期にあることがわかった.
著者
岩﨑 千晶 池田 佳子
出版者
関西大学教育開発支援センター
雑誌
関西大学高等教育研究 (ISSN:21856389)
巻号頁・発行日
no.4, pp.9-17, 2013-03

本稿は、協同的な学習や学習者が自律的に学ぶことにより、自ら考え行動する「考動力」を育むための学習環境"コラボレーションコモンズ"をいかにデザインしたのかについて論じている。具体的には、学習環境を構築する際に検討すべきScott(2012)の提示する6つの質問に答えていくことで、コモンズで生成することが望ましい学びや育成したい学生像を検討し、コモンズの運用や学習支援の在り方について述べる。