著者
大山 牧子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46092, (Released:2023-04-17)
参考文献数
32

大学生のリフレクションと学習成果との関係は,専門教育課程や体験・実習型科目で主に検討されており,また,リフレクションの測定も精緻になされていなかった.本研究では,リフレクションのプロセスモデルの特徴を整理し,講義・演習科目でも適応可能なリフレクションを測定する尺度を開発した上で,リフレクションと学習成果としての成績,能力の獲得感との関係を検討することを目的とした.大学生942名のデータをもとに因子分析を行った結果,「内容の想起・分析」「活動の想起・分析」「活用」の3次元からなるリフレクション尺度が開発された.さらに,クラスタ分析によって,それら3下位次元から6つのタイプを同定した.積極的にリフレクションを行うタイプの学生が,他のタイプよりも能力の獲得感が高い傾向にあることを示した.
著者
松河 秀哉 大山 牧子 根岸 千悠 新居 佳子 岩﨑 千晶 堀田 博史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.233-244, 2018-01-31 (Released:2018-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3

本研究では,様々な制約から活用が難しかった授業評価アンケートの自由記述の分析に関し,ある大学で実施された9年分,約6万件のデータに対して,潜在ディリクレ分配モデル(LDA)に基づいたトピックモデルによる分析を行い,170のトピックを抽出した.抽出したトピックに対しては,一定の手順に従ってラベルを付与し,ラベルの妥当性を検証した.その結果,ラベルには十分な妥当性が確認され,トピックモデルによる分類が全体的には人間の感覚に適合したものであることが示された.本研究ではさらに,自由記述を科目群の情報と紐付けて分析を行い,各科目群に存在するトピックの割合や,全体の傾向と比較した各科目群のトピック分布の特徴について,クロス表による情報の可視化を行った.こうした分析手法は今後Institutional Research (IR),Learning Analytics (LA)等での応用が期待される.
著者
大山 牧子 松田 岳士
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.211-220, 2019-01-20 (Released:2019-02-02)
参考文献数
41

アクティブラーニングでは学習者の活動が多様であり,授業内・外,教室内・外のように,時間や空間の制約を越えて,他者と共に学習することが求められる.そのような特性の授業において学習者を効率的に支援するためには,情報の蓄積や共有を可能にするICT の活用が不可欠である.本稿では,アクティブラーニングにおいて,ICT がどのように機能・活用・研究されているのかを整理した上で,今後の研究動向を模索することを目的とする.具体的には,研究目的を3種(デバイス等の開発研究・ソフトウェア等の開発研究・デバイスやソフトウェアを活用した研究)に大別した上で,アクティブラーニングにおいて学習を深めるためのプロセスである,内化―外化を促すための学習活動(知識の獲得・協調活動・表出活動・リフレクション)について,それぞれICT が何を支援しているのかという観点で検討する.
著者
大山 牧子 田口 真奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.129-143, 2013
被引用文献数
3

本研究では,大学のアクティブ・ラーニング型のコースにおいて教員が自らのコースの中で,グループ学習をデザインするための手がかりとなる枠組みをグループ学習の類型化とプロセス分析を通して提示することを目的とする.まず,大学における32のグループ学習実践事例を「事前作業」の有無と「事後作業」の在り方に着目して整理したところ(A)交流型,(B)意見獲得型,(C)課題解決型,(D)主張交換型,(E)理解深化型,(F)集約型という6類型が抽出された.さらに本類型が学生の学習プロセスに与える影響を検討した.具体的には(C)課題解決型と(F)集約型に関して,異なるグループ学習課題を遂行した同一グループを対象に,1コースの授業観察を行い,学生の学習プロセスを分析した.その結果,グループ学習の「事前作業」の有無は学生の既有知識,「事後作業」の在り方はコースの学習能力目標の設定と関連することが明らかになった.
著者
見城 佑衣 大山 牧子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45015, (Released:2021-08-24)
参考文献数
20

震災や災害を題材とした探究学習はフィールドワークを伴うことが多いが,遠隔地でも学習できるようICTを活用した学習環境の構築が求められる.本研究の目的は,フィールドワークの代替としてのVRの活用を組み込んだ東日本大震災を題材とする中学生向け探究学習プログラムを開発・実践することである.その結果,学習者は震災についての関心・理解が高まるとともに,探究活動で必要とされる汎用的能力を獲得した感覚があることが確認された.VR映像の体験は,提示できる情報に限りがある点や使用感で課題があるものの,学習者が現地の構造物の高度を実感したり,没入感を抱いたりすることができる点において有効で,震災や災害を題材とした探究学習の理解の一助となる可能性が示された.
著者
大山 牧子 畑野 快
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.217-228, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
31

大学生のリフレクションと学習成果との関係は,専門教育課程や体験・実習型科目で主に検討されており,また,リフレクションの測定も精緻になされていなかった.本研究では,リフレクションのプロセスモデルの特徴を整理し,講義・演習科目でも適応可能なリフレクションを測定する尺度を開発した上で,リフレクションと学習成果としての成績,能力の獲得感との関係を検討することを目的とした.大学生942名のデータをもとに因子分析を行った結果,「内容の想起・分析」「活動の想起・分析」「活用」の3次元からなるリフレクション尺度が開発された.さらに,クラスタ分析によって,それら3下位次元から6つのタイプを同定した.積極的にリフレクションを行うタイプの学生が,他のタイプよりも能力の獲得感が高い傾向にあることを示した.
著者
村上 正行 佐藤 浩章 大山 牧子 権藤 千恵 浦田 悠 根岸 千悠 浦西 友樹 竹村 治雄
出版者
教育システム情報学会
雑誌
教育システム情報学会誌 (ISSN:13414135)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.276-285, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)
参考文献数
8

In this paper, we introduce school-wide teaching and learning support practices by using digital learning tools for students and faculties during the COVID-19 pandemic. Right after the COVID-19 pandemic affected the higher-education in Japan, Osaka University built a Teaching Class Support and Response Team during the new semester to develop school-wide online teaching and learning supports due to the campus closure. The team offers multi-faceted support tools such as LMS help desk, orientation videos via YouTube channel for first-year students, and teaching online guidelines during the semester. Through our practices, we find the significant issue of teaching at the university during the COVID-19 era. The issue is: how we conduct classes to combine face-to-face and learning online in the same semester. To resolve this issue, we believe that universities need to develop an organizational comprehensive support system for teaching and learning. We also expect that scholars would share their expertise, idea, and practices of teaching under practices the COVID-19 pandemic by using an academic society.
著者
鳥居 朋子 岡田 有司 高橋 哲也 林 透 村上 正行 山田 剛史 串本 剛 大山 牧子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、4年間の研究期間において下記の5点を一体的に進める。(1)教育プログラムの評価と改善の好循環システムの先進事例を検討するため、米国・英国等の大学への訪問調査を行い、優れた循環システムの要件を抽出、(2)日本の大学の全国的な量的調査により、教育プログラムの評価と改善に関わる実態分析や主要な問題を特定、(3)学習成果測定や教育プログラムの評価を推進している日本の大学への訪問調査、(4)日本の大学において教育プログラムの評価と改善の好循環システムを形成する際に考慮すべき点やシステム構築上の要件等の抽出・整理、(5)好循環システムを組織的に構築するための具体的な手法をティップスの形式にまとめ公表。
著者
野瀬 由季子 大山 牧子 大谷 晋也
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.176, pp.48-63, 2020-08-25 (Released:2022-08-26)
参考文献数
28

内省を通して実践を創造していく自己研修型教師としての日本語教師の養成・研修は喫緊の課題であり,その一手法として授業観察が存在する (岡崎・岡崎 1997)。授業観察の支援環境の構築を目指して,本研究では,国内の日本語学校で教師研修として実施される授業観察を対象に,観察者と授業者の授業観察への目的意識を明らかにする。日本語学校の常勤3名 (観察者) と非常勤3名 (授業者) に半構造化インタビュー調査を実施し,逐語録に対してSCAT (大谷 2019) による質的分析をおこない,授業観察に対する目的意識を,筆者らが作成した【評価志向型】【実践公開志向型】【内省共有志向型】の枠組みで考察した。その結果,各観察者/授業者は基本的に特定の志向型を軸に授業観察を捉えながらも,同時に別の志向型の要素を持ち合わせていたり,軸とする志向性を徐々に変容させたりしていくことが明らかになった。このことから日本語学校での役割や教師間の関係性を考慮した活動デザインの重要性が示唆された。
著者
見城 佑衣 大山 牧子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
2022

<p>震災や災害を題材とした探究学習はフィールドワークを伴うことが多いが,遠隔地でも学習できるようICTを活用した学習環境の構築が求められる.本研究の目的は,フィールドワークの代替としてのVRの活用を組み込んだ東日本大震災を題材とする中学生向け探究学習プログラムを開発・実践することである.その結果,学習者は震災についての関心・理解が高まるとともに,探究活動で必要とされる汎用的能力を獲得した感覚があることが確認された.VR映像の体験は,提示できる情報に限りがある点や使用感で課題があるものの,学習者が現地の構造物の高度を実感したり,没入感を抱いたりすることができる点において有効で,震災や災害を題材とした探究学習の理解の一助となる可能性が示された.</p>
著者
大山 牧子 根岸 千悠 山口 和也 オオヤマ マキコ ネギシ チハル ヤマグチ カズヤ Oyama Makiko Negishi Chiharu Yamaguchi Kazuya
出版者
大阪大学全学教育推進機構
雑誌
大阪大学高等教育研究 (ISSN:21876002)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.15-24, 2016-03-31

This study aimed to suggest an opinion for the design of a flipped classroom through examining acase study in which the practicality of a flipped classroom in chemistry lessons was studied. In recent years, deep learning for students has become a matter of strong interest for higher education. Flipped learning has become widespread in higher education. This new instructional strategy is different from the ones used in a conventional classroom in which students carry out desk work. In a flipped classroom, instructional content is delivered online and outside the classroom. On the other hand, group work is conducted inside the classroom. This study focused on the use of a flipped classroom in a “Basic Inorganic Chemistry” class for sophomores in Osaka University. It was found that most students were satisfied with this method. Students established their own strategy of self-learning through watching videos and deeply understood the instructional content through mutual teaching and learning in group work. The findings demonstrated that the factors that promote a flipped classroom include designing students’ activities, learning objectives, and learning environment inside and outside of class (both before and after class).
著者
大山 牧子 村上 正行 田口 真奈 三上 達也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.109, pp.37-42, 2007-06-16
参考文献数
13
被引用文献数
2

本発表では,オンデマソド型e-Learning語学教材について,学習者側の視点から,教材の構造と学習者の学習スタイルに注目して行った評価研究について述べる.2つの中国語語学教材の構造を分析した上で,教材の構造と学習者の学習スタイルとの関係に着目して,学習者のつまずきと興味関心を質的・量的に調査した.その結果,学習者をFelderの学習スタイルで分類した場合,問題を解決する際,自分で考えて解決する〔内省的〕なタイプの人は,教材に自由度があり,自分の学習方法が確立しやすいものを選択し,一方で人と議論して考えを深める〔活動的〕なタイプの人は,教材内にナビゲータが存在し,学習をわかりやすく促してくれるような教材を選択すると,継続的かつ効果的な学習が得られるということを見出した.
著者
大山 牧子 村上 正行 田口 真奈 松下 佳代
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.105-114, 2010

本論文では,構造の異なる大学生対象の中国語e-Learning教材を用いて,学習者特性と学習行為の関連性を明らかにすることを目的とする.学習者特性としては,FELDERによってモデル化された学習スタイルのうち<活動-内省>の軸に着目し,協力者を選定した.その上でケーススタディを行い,学習行為のプロセスを詳細に分析し1面で見られるように可視化した.その結果,学習スタイルの違いが学習行為を決定付ける1つの要因としてあげられることが示唆された.