著者
岸田 広平 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.61-72, 2019-05-31 (Released:2019-08-23)
参考文献数
27

本研究の目的は、子ども用快活動尺度(Children’s Pleasant Activity Scale: CPAS)を作成し、CPASの信頼性と妥当性を検討することであった。CPAS、および、抑うつ/不安症状、正負感情、社会的スキルを測定する質問紙を用いて、児童331名に対する調査を実施した。COSMIN(COnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments: de Vet et al., 2011; Terwee et al., 2011)に基づいて、CPASの信頼性と妥当性が検討された。その結果、いくつかの限界はあるものの、CPASの信頼性(内的整合性、再検査信頼性、測定誤差)と妥当性(表面的妥当性、構造的妥当性、仮説検証)が確認された。項目反応理論を用いて検討した結果、CPASは平均的に快活動に従事しているものに対して高い測定精度を有する尺度であることが示唆された。最後に、児童青年の快活動への介入に関する示唆および本研究の限界と今後の課題が議論された。
著者
岸田 広平 石川 信一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.91.19311, (Released:2020-03-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This study was a preliminary examination of follow-up effects and an exploration of potential predictors of treatment outcomes associated with an open trial of a transdiagnostic intervention for anxiety and depressive disorders in children and adolescents. Eight children or adolescents with anxiety or depressive disorders participated in the Avoidance Behavior-focused Transdiagnostic Intervention Program (ATP). Follow-up effects at 3 and 6 months were assessed using a multi-source (clinician, youth, parent) and multi-domain (diagnoses, symptoms, general difficulties) approach. The clinician-rated clinical severity rating of principle diagnosis and number of diagnoses were lower at both follow-up time points compared to pre-intervention. In addition, separation anxiety disorder, selective mutism, and chronic school refusal might predict poorer ATP treatment outcomes. Limitations and emerging issues in ATP were discussed.
著者
岸田 広平 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.73-85, 2019-05-31 (Released:2019-08-23)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究の目的は、児童青年の不安症と抑うつ障害に対する回避行動に焦点化した診断横断的介入プログラムの有用性と有効性に関する予備的検討を行うことであった。プログラムは個別形式の全6回であり、第1回は感情の心理教育、第2回は機能的アセスメント、第3回は回避行動の同定、第4回は回避場面の同定、第5回は回避行動への挑戦、第6回は振り返りと目標の設定であった。プログラムの対象者は、不安症または抑うつ障害を抱える児童青年8名であり、すべての対象者がプログラムを完遂した。介入の結果、臨床家評定の主診断の重症度と診断の数、自己評定の不安症状と抑うつ症状、親評定の不安症状、自己評定の情緒への有効性が示され、プログラムの有効性と有用性が示唆された。最後に、いくつかの限界はあるものの、プログラムの不安症と抑うつ障害への有効性について、エクスポージャーと行動活性化療法に基づく作用機序が議論された。
著者
武部 匡也 岸田 広平 佐藤 美幸 高橋 史 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.169-179, 2017-09-30 (Released:2017-10-31)
参考文献数
28

本研究の目的は、児童青年期の感情としての怒りの測定に特化した子ども用怒り感情尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生~中学3年生を対象に予備調査(n=101)および本調査(n=1,088)を実施した。その結果,1因子7項目の子ども用怒り感情尺度が作成され、「COSMIN」に基づいて検討したところ,十分な信頼性と部分的な妥当性が確認された。また,性別と発達段階で得点に差が認められ,男女ともに発達段階が上がるにつれて怒りを強く抱く傾向があること,そして,男子は女子に比べてその傾向が顕著であることが示唆された。さらに,項目反応理論による項目特性の分析では,子ども用怒り感情尺度は怒りを母平均よりも強く抱いている子どもに対して十分な測定精度を有していた。最後に,子ども用怒り感情尺度が怒りの認知行動療法に関する研究と実践の発展に貢献する可能性と本研究の限界,そして今後の課題が議論された。
著者
阿部 望 岸田 広平 石川 信一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.64-78, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
参考文献数
39
被引用文献数
4

本研究では,学校の実情に合わせた2つの強み介入を実施し,強み介入が中学生の精神的健康(生活満足度・抑うつ症状)に及ぼす効果について検討することを目的とした。研究1の強み認識・注目介入(自己や他者の強みを認識・注目させる介入)では中学3年生128名が対象であり,研究2の強み認識・注目・活用介入(自己や他者の強みを認識・注目させ,自己の強みを活用させる介入)では中学3年生87名が対象であった。分析の結果,研究1で実施した強み認識・注目介入は,生活満足度の向上に対してのみ効果があることが示唆された。一方,研究2で実施した強み認識・注目・活用介入は,生活満足度の向上と抑うつ症状の低減の両方に対して有効であることが示唆された。次に,効果的な強み介入の構成要素を探るために,介入の構成要素と対応する既存の強み変数の変化と精神的健康の変化の関連について探索的に検討した。その結果,強みの認識と他者の強みへの注目の変化が生活満足度の変化と正の関連を示し,強みの活用感の変化が抑うつ症状の変化と負の関連を示した。これらの結果から,生活満足度を向上させるためには強みの認識と他者の強みへの注目が重要であり,抑うつ症状を低減させるためには強みの活用が重要である可能性が示された。最後に本研究の課題と今後の展望について議論された。
著者
武部 匡也 岸田 広平 佐藤 美幸 高橋 史 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.169-179, 2017

<p>本研究の目的は、児童青年期の感情としての怒りの測定に特化した子ども用怒り感情尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。小学4年生~中学3年生を対象に予備調査(<i>n</i>=101)および本調査(<i>n</i>=1,088)を実施した。その結果,1因子7項目の子ども用怒り感情尺度が作成され、「COSMIN」に基づいて検討したところ,十分な信頼性と部分的な妥当性が確認された。また,性別と発達段階で得点に差が認められ,男女ともに発達段階が上がるにつれて怒りを強く抱く傾向があること,そして,男子は女子に比べてその傾向が顕著であることが示唆された。さらに,項目反応理論による項目特性の分析では,子ども用怒り感情尺度は怒りを母平均よりも強く抱いている子どもに対して十分な測定精度を有していた。最後に,子ども用怒り感情尺度が怒りの認知行動療法に関する研究と実践の発展に貢献する可能性と本研究の限界,そして今後の課題が議論された。</p>
著者
田辺 雄一 岸田 広平 佐田久 真貴
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.160-163, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
14

本研究の目的は,日本の小学校教師の抑うつ症状に対する教師ストレッサー及び自動思考の影響を検討することであった。日本の小学校教師164名を対象として,教師ストレッサー,自動思考,抑うつ症状について質問紙調査を行った。構造方程式モデリングにより,教師ストレッサーはネガティブな自動思考を介して抑うつ症状に正の影響を与えることが示された。さらに,ポジティブな自動思考は,抑うつ症状に負の影響を与えることが示された。最後に,日本の小学校教師の抑うつ症状に対する今後の研究と実践の課題が議論された。
著者
岸田 広平 武部 匡也 石川 信一 キシダ コウヘイ タケベ マサヤ イシカワ シンイチ Kishida Kohei Takebe Masaya Ishikawa Shin-ichi
出版者
心理臨床科学編集委員会
雑誌
心理臨床科学 = Doshisha Clinical Psychology : therapy and research (ISSN:21864934)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.3-16, 2016-12-15

研究動向本論文の目的は,児童青年期の怒りに対する認知行動療法に関する展望を行うことであった。まず,児童青年期の怒りに関連する代表的な診断基準として,秩序破壊的・衝動制御・素行症群や抑うつ障害群について概観したうえで,怒りに関連した診断基準に最も近いものとして,重篤気分調節症が紹介された。次に,怒りに関連する代表的な理論として,学習理論,社会的情報処理モデル,ストレス相互作用説,認知モデルに関する説明を行った。さらに,それらの理論に基づく介入技法として,社会的スキル訓練,問題解決スキル訓練,自己教示訓練,リラクセーション,認知再構成法が紹介された。続いて,児童青年期の怒りに対するメタ分析の結果と代表的な治療プロトコルの概要が紹介された。その後,児童青年期の怒りに関する自己記入式のアセスメントの展望が行われた。最後に,児童青年期の怒りの問題点として,診断基準の洗練化,アセスメントにおける構成概念の混同,怒りに関連する認知的側面に関する基礎研究とそれに基づく介入の必要性が議論された。