著者
尾上 仁志 前田 慶明 田城 翼 福井 一輝 島 俊也 仁井谷 学 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-19, 2022-09-30 (Released:2022-10-01)

【目的】脊椎圧迫骨折後の腰部多裂筋の筋断面積を各腰椎レベルで比較し、脊柱後弯変形の予防の一助とすること。 【方法】対象は、圧迫骨折群6名と非圧迫骨折群6名であった。各腰椎レベルの腰部多裂筋の筋断面積を測定するために、超音波画像診断装置を使用した。また、徒手筋力計を用いて、等尺性体幹伸展筋力を測定した。統計学的解析には、各腰椎レベルの腰部多裂筋の筋断面積および、等尺性体幹伸展筋力を2群間で比較するために、対応のないt検定を使用した。有意水準は5%とした。 【結果】L1とL2での各腰椎レベルの腰部多裂筋の筋断面積は、両群で有意な差はなかった。L3からL5では、圧迫骨折群で有意に小さかった(p<0.05)。等尺性体幹伸展筋力は、両群で差はなかった。 【結論】本研究の結果から、脊椎圧迫骨折の有無で等尺性体幹伸展筋力に差は認めないが、脊椎圧迫骨折群は、L3からL5の腰部多裂筋が小さいことが示された。
著者
大岡 恒雄 金澤 浩 島 俊也 白川 泰山
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AdPF1015, 2011

【目的】<BR> 当院では2009年11月よりロボットスーツHAL福祉用(Hybrid Assistive Limb,以下 HAL)を導入し,これまでに延べ約60名の患者を対象に実施してきた.HALは,下肢に筋力低下や麻痺などの障害を持つ対象者に対して脚力や歩行を補助するツールとして現在約40の医療機関や施設等で使用されている.しかし,その方法や効果についての報告は少なく,疾患別の症例報告もほとんどみられない.今回,当院にてHALを使用した脳卒中片麻痺患者について筋電図学的分析を中心に検討したので報告する.<BR><BR>【方法】<BR> 症例は70代男性,身長168.0cm体重78.0kgであった.平成13年頃より数回脳梗塞を繰り返し,平成18年にさらに脳梗塞を発症し右片麻痺となった.以降,近医にてリハビリテーションを実施し,平成22年2月より当院にてHALを用いた歩行練習が開始となった.Brunnstrom stageは上肢VI,手指VI,下肢VIであり,歩行能力は四点支持歩行器を使用し自立レベル,階段昇降は不能であった.Demandは「立ち座りがスムースになれば」,「ユンボに乗りたい」であった.これまでのHALの実施回数は1ヶ月に1または2回の合計12回であった.当初はHAL装着下での膝関節及び股関節の屈伸練習,立ち上がり練習,歩行練習を実施した.HAL実施3回目より階段昇降練習を追加した. HALに対する感想は,介入時は「重たい」,「歩きにくい」が,HAL実施3回目より「脚があがるようになった」,「階段が昇れるようになった」とHALに対する肯定的なコメントが聞かれ,HAL実施10回目以降は「ユンボに乗れた」というコメントが聞かれた. <BR> HAL実施12回目において,HAL装着の有無が歩行に与える影響を調査する目的で表面筋電図(Tele MyoG2 EM-602,Noraxon)を使用した.導出筋は,両側の大腿直筋,内側広筋,半腱様筋,大殿筋,腓腹筋内側頭,前脛骨筋の12筋とし,筋電図解析ソフトウェア(Myoresearch XP, Noraxon)を用いて解析を行った.測定は,HAL装着前(以下,装着前),HAL装着時(以下,装着時),HAL装着後(以下,装着後)の歩行中の筋活動を測定した.解析に用いた歩行は10m歩行区間の中間時の安定した1歩行周期を解析し,得られたデータより各筋の平均振幅を算出し,合計3回の平均値を各筋の平均振幅とした.同時に歩行動作を三次元動作解析システム(ICpro-2DdA,ヒューテック株式会社)を使用し歩幅の解析を行った.毎回のHAL実施前後には,10m歩行テスト,各動作のVTR撮影を実施した. また,毎回のHAL実施前後にHALの使用感を聴取した.<BR> <BR>【説明と同意】<BR> 対象には事前に本研究の趣旨と測定内容に関する説明を十分に行い,紙面で同意を得た.また,医療法人エム・エム会マッターホルンリハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て行った(MRH1002).<BR><BR>【結果】<BR> 各筋の平均振幅のうち,右側の内側広筋の立脚期は装着前は34.4±5.67μV,装着時は55.5±0.6μV,装着後は41.2±7.77μVであった.右側の内側広筋の遊脚期は装着前は14.7±6.43μV,装着時は19.8±2.48μV,装着後は19.4±0.99μVであった.左側の内側広筋の立脚期は装着前は20.4±2.23μV,装着時は46.4±3.55μV,装着後は28.1±2.75μVであった.左側の内側広筋の遊脚期は装着前は11.9±4.07μV,装着時は31.8±8.17μV,装着後は51.2±10.9μVであった.右側の大殿筋の立脚期は装着前は19.4±4.38μV,装着時は35.5±3.46μV,装着後は28.2±7.00μVであった.その他の筋については装着による変化を認めなかった.また,右側の歩幅は装着前が28.9cm,装着時は35.6cm,装着後は32.1cmであった.HAL介入前(以下,介入前)とHAL実施12回目(以下,介入後)の測定結果を比較した.10m歩行テストは,介入前は独歩にて21.5秒28歩であったが,介入後は16.1秒21歩と歩行時間の短縮がみられた.<BR><BR>【考察】<BR> 筋電図の結果から,HAL装着によって両側の立脚期及び遊脚期の内側広筋や右側の大殿筋の筋活動が増大していた.これは,麻痺側下肢の立脚期における支持性や遊脚期の際の振り出しをHALのアシスト機能によってもたらしたと考えられる. また,HAL装着による右下肢の振り出しの増大が右側の歩幅を増大させたと考えられる.10m歩行テストの結果からもHAL実施後,顕著な歩行能力の改善を認めた.発症後約9年が経過している本症例の歩行機能はプラトーに達していたと考えられた.しかし,HALの介入により,歩行能力や階段昇降能力に改善がみられたことから,心理面にも良い効果をもたらしHALの長期継続が可能となっていると考えられる.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本症例の結果から脳卒中片麻痺患者に対してHALの実施には効果が期待され,理学療法の新たな発展に寄与するものではないかと考えられる.今後は脳卒中片麻痺患者のさらなるデータの収集を行い,その効果や適応について検討していきたい.<BR><BR>
著者
松島 俊也 内藤 順平 並河 鷹夫 前多 敬一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

(1) 摂食行動における視覚弁別学習と記銘内容に関する行動学的解析生まれたばかりのヒナ鳥は「何が餌であるか」を生得的には知らない。非選択的に啄んだ後、味覚と視覚との連合によって対象選択性を絞り込む。この一回性回避学習課題は不可逆的でありかつ一回性を持つ点で、広義の「刷り込み」学習と見なされる。啄み行動の頻度に基づいて、物体の諸特徴に関する知覚地図の変化を追跡したところ、苦い物体の忌避カテゴリーが学習初期相(15分〜1時間)は色によって表現されているのに対し、長期相(〜24時間)では形および提示位置に置き換わっていくことがわかった。(2) 大脳視覚連合野における視覚記憶の細胞表現に関する単一ニューロン解析ヒナ鳥の視覚連合野(IMHV核)より、無拘束・覚醒・自由行動下にて、2つ以上の単一ニューロンから同時に数時間以上にわたる神経活動を導出する技術を確立した。上記の視覚弁別課題(一回性回避学習課題)の直前・直後の活動を解析したところ、特徴的なコヒーレント・バースト活動を記銘直後に示すニューロン群を同定した。(3)大脳基底核に共発現する長期増強と長期抑圧に関する神経生理学的解析大脳基底核(LPO核)は回避課題の記憶痕跡が保存されていると考えられている。スライス標本にパッチ電極を適用してLPOニューロンへのシナプス入力を解析した.同一のニューロン群に収束する2群の興奮性シナプスは、両者に加えたシータ・テタヌスが同期した場合に限って、一方の長期増強と他方の長期抑圧が同時に発現した。長期増強はドーパミンD1受容体の活性化を必要とすることから、回避学習の素過程と見なしうる。
著者
藤川 博樹 宮下 浩二 浦辺 幸夫 井尻 朋人 島 俊也
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, 2007-04-20
被引用文献数
1

【はじめに】野球は全身を使うスポーツであり、ピッチングやバッティングは特に身体の回旋運動が重要となる。この回旋運動には股関節の内旋が関与しており、その制限は腰痛や投球障害などの外傷発生やパフォーマンスの低下につながると考えられている。しかし、野球選手のなかには、非荷重位で股関節内旋可動域に制限がないにも関わらず、荷重位で骨盤を回旋させると股関節内旋に制限が発生し、結果として骨盤回旋運動が制限される者がみられる。そこで、今回は荷重位での骨盤回旋運動制限の影響について3名の選手の例を提示し、その問題点と対応について報告する。<BR>【症例紹介】選手Aは27歳、身長178cm、体重75kg、右サイドスローの投手である。主訴はピッチングのフォロースルーにおける右肩棘下筋の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも10°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で骨盤の左回旋運動に制限がみられた。ピッチングのフォロースルーでも同様に骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に右肩関節の水平内転、内旋運動が過剰になっていた。選手Bは22歳、身長175cm、体重75kg、右オーバーハンドスローの投手である。主訴はピッチングの加速期における右肩関節前方の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも30°だった。しかし、荷重位で骨盤を回旋させると左股関節の内旋が不十分で、骨盤の左回旋運動に制限がみられ、これを代償するように脊柱の左回旋運動が強まっていた。ピッチングの加速期でも骨盤の左回旋運動が制限され、代償的に脊柱の左回旋運動が大きい、いわゆる「上体の開いた」フォームとなり右肩関節の水平外転、外旋運動が強まっていた。選手Cは29歳、身長176cm、体重78kg、左投、左打の内野手である。主訴はバッティングのインパクト時に生じる右腰部の痛みであった。非荷重位での股関節内旋可動域は左右とも20°であったが、荷重位で骨盤を回旋させると右股関節の内旋が不十分で、骨盤が右に水平移動して脊柱の左側屈が強まっていた。バッティングのインパクト時にも同様の運動がみられた。<BR>【問題点】上記の3選手は、荷重位での股関節内旋が不十分で、これが骨盤回旋運動を減少させていた。その結果、投球動作や打撃動作に変化が生じ、肩関節や腰部への負担が増大し、痛みが発生したと考えた。<BR>【経過】荷重位でのみ股関節内旋に制限がみられたことから、関節可動域ではなく、いわゆる「身体の使い方」に問題があると考えた。これらに対し、股関節を中心とした骨盤回旋運動のエクササイズを実施した。その際、足部の荷重位置、脊柱や骨盤のアライメントも意識して行わせた。その結果、3選手とも荷重位での骨盤回旋運動制限は消失し、主訴であったプレイ中の肩関節や腰部の痛みが解消した。また、パフォーマンス面でも満足感が得られた。<BR>
著者
松島 俊也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

鶏雛(ヒヨコ)を対象として実験心理学的に統制された行動実験を実施し、動物の採餌選択における文脈依存性に関して、以下の3点の知見を得た。1. ヒヨコはリスク感受性を示し、量のリスクを嫌う。2. 収益逓減の強さに応じて、餌パッチからの離脱を決定している。3. 競争採餌の条件は、異時点間選択における衝動性を亢進する。このように、ヒヨコは採餌状況の文脈に応じて採餌決定を適応的に変化させることが判明した。
著者
松島 俊也 青木 直哉
出版者
日本認知科学会 = Japanese Cognitive Science Society
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.177-187, 2005-09

孵化後1週間のニワトリのヒヨコは、餌によって強化される色弁別課題を容易に獲得する。連合が成立した後に二つの色手がかりの択一選択を行わせたところ、短期的な採餌効率を正しく予期して選択することが分かった。さらに大脳の腹側線条体・側座複合(基底核)と弓外套腹側部(大脳連合野のひとつ)は、採餌効率の予期値の異なる時間因子に預かることが判明した。基底核を破壊すると、餌までの待ち時間を忌避するように選択がシフトした。他方、連合野を破壊した場合には、採餌局面における処理時間を忌避するように選択がシフトした。以上の結果から、ヒヨコの選択は①待ち時間(報酬遅延)と処理時間(労働コスト)の和を分母とする採餌効率の予期値に基づくこと、②これら二つの時間要素は脳内の別の領域に神経的基盤を持ち、神経生態学的に独立な因子であること、が判明した。Week-old chicks quickly learn to peck colored beads when reinforced by food rewards. In binary choice tests, the trained chicks made choices based on anticipated values of foraging efficiency. Two forebrain regions proved to be involved in the anticipation, i.e., ventral striatum / nucleus accumbens complex (basal ganglia) and arcopallium (an association area of lateral forebrain). Localized lesions of the basal ganglia caused an impulsive choice away from a long waiting time. On the other hand, lesions of the association area caused an impulsive choice away from a long consumption time. These results suggest that 1) chicks make choices based on foraging efficiency, in which sum of the waiting time (or time-to-reward) and the consumption time (or work cost) serve significant denominator, and 2) these two time domains have distinct neural substrates, thus are assumed to be neuro-ecologically distinct factors.