著者
川村 博文 西上 智彦 伊藤 健一 大矢 暢久 辻下 守弘
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.604-609, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本稿では,疼痛に対する治療としての物理療法,運動療法について,有効性に関わる理論的な裏付けから臨床のエビデンスを交えて解説した.急性痛と慢性痛とでは,対応が異なり,急性痛には,過度な不活動は避け,原因となる組織損傷の治療を可及的早期に進めることと,可能な限り疼痛を抑制し長期化を阻止する目的で物理療法,運動療法などを実施することとなる.慢性痛には,感覚面に着目する以外に,情動面や認知面などの多面的・複合的な側面での特性の認識理解が不可欠であり,ADLやQOL向上を目的として,TENSなどの物理療法,運動療法,認知行動療法,ニューロリハビリテーション,学際(集学)的治療を導入することが重要である.
著者
岡崎 大資 甲田 宗嗣 川村 博文 辻下 守弘 鶴見 隆正
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.E0723-E0723, 2004

【はじめに】<BR> 本研究は高齢者に対する継続的転倒予防教室(以下教室)において、行動分析学的介入による自主運動の継続的実施の可能性と参加者間のソーシャルネットワークの確立の可能性について検討したので報告する。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は地域在住の高齢者25名(男性7名、女性18名)、平均年齢72.9±5.9歳であった。<BR> 方法は全6回の教室において指導した7種類の自主運動(柔軟性に関する運動3種類・筋力に関する運動3種類・ウォーキング)を教室開催時以外の自宅での実施頻度を向上させるための介入を行った。教室終了後の半自主的に継続されている教室の8回をフォローアップ期とした。介入は行動分析学的介入方法を用い、ベースライン期とフォローアップ期は用意したカレンダーに自宅での運動実施毎にシールを貼りその頻度を研究者が確認するのみとし、介入期Bは自主運動実施頻度が多い者に対する注目・賞賛(社会的強化子)、介入期Cは自主運動実施の報酬として実施頻度に応じて簡単なパズル(付加的強化子)を渡すこととした(A・B・C・Aデザイン)。また、フォローアップ期の後半で7名の対象者に、各期を通じての自主運動に対する意識の変化や参加者同士の関係についてインタビューした。<BR>【結果】<BR> 全員の自主運動実施頻度の平均はベースライン期:171.7±82.5回、介入期B:256.9±38.9回、介入期C:588.9±104.9回、フォローアップ期:413.2±33.2回であった。また、インタビューではベースライン期には「健康に良いと言われたので運動した」、「カレンダーへシールが貼れように運動を頑張った」との内容が含まれていた。介入期Bでは「他人が読み上げられて誉められることが羨ましい」、「自分が読み上げられて誉められたことが嬉しかった」やその反面「読み上げられるのは恥かしい」などの内容も含まれていた。介入期Cでは「パズルは痴呆防止にいい」、「パズルが面白かった」や、パズルをもらえることを理由に運動したのではなく「友人同士で一緒に運動するから楽しい」、「自主運動が自分の生活の一部に定着した」、「運動すると体が楽になる、気持ち良い」などの内容が含まれていた。<BR>【考察】<BR> 自主運動実施頻度が向上した理由として、介入期B・Cにおいて注目・賞賛やパズルをもらえるという強化子が影響したと考えられる。しかし、参加者はフォローアップ期に強化子を提示しなかったにもかかわらず介入期Bより高い頻度で自主運動を実施していた。これは賞賛やパズルを強化子とするのではなく、自主運動の実施に内在した強化子(楽になる、気持ち良い)や参加者同士で自主運動を実施するといったソーシャルネットワークを確立し維持することで保たれていると考えられる。このように教室の役割は転倒予防のための機能的かかわりを持つのみならず、参加者間のソーシャルネットワークの確立と共に生きがいやQOLの維持にも繋がることと考えられる。
著者
鶴見 隆正 畠中 泰司 川村 博文 菅原 憲一 藤田 峰子 米津 亮 甲田 宗嗣 辻下 守弘 岡崎 大資 常川 幸生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1048, 2007

【目的】多発性脳梗塞、頚髄症による不全四肢麻痺、大腿骨頚部骨折などによって不安定な立位、歩行レベルを余儀なくされている高齢者、術後患者は多い。しかしながら彼らに対する立位・歩行練習の運動療法では、転倒や突然の膝折れなどの危険性があるため難渋することも事実である。このような立位・歩行の不安定な患者に対するアプローチは、傾斜台での段階的な立位感覚と支持性を高める方法のほかに、PTが患者の腰部を徒手で支えた状態での平行棒内立位、簡易式膝装具などを用いた平行棒内立位・歩行練習など行われているが、いずれの方法においても共通するのは安全面への配慮である。安全優先と物理的な介助負担量の増大から、ややもすれば間欠的な休憩を取り過ぎて、結果的に立位・歩行練習の総時間不足に陥っていることも少なくない。そこで立位・歩行不安定者に対する立位・歩行練習が、実際どのような方針で実施されているかを調査し、同時に歩行車の活用法についても検討したので報告する。<BR><BR>【方法】調査対象の施設は特定機能病院2施設、一般病院1施設、介護老人保健施設2施設である。調査方法は郵送アンケートと直接訪問による実態調査を実施し、その内容は立位・歩行不安定者に対する運動療法なかで、基本的アプローチ方法が平行棒内でのPT介助なのか、装具装着、傾斜台、歩行車など活用実態の把握を行った。アンケートは施設の主任PT5名に郵送し、且つ直接訪問による実態調査は、1日の運動療法室を観察法にて実施した。<BR><BR>【結果】立位・歩行不安定者の基本的アプローチではPT介助(装具装着含め)73%、歩行車25%、傾斜台2%であった。PT介助の平行棒内立位時間は1回つき1~3分間、平行棒内連続歩行も1~5往復と短時間であった。PT介助は徒手で患者の腰部を把持しながら患者の前面、側面からの支持が大半であった。歩行車はシート付のタイプであるため突然の膝折れに対応できるほか、下肢への部分荷重調整した介助立位・歩行が連続的に可能となっていた。<BR><BR>【考察】下肢の支持性や立位感覚の弱化に転倒の危険性も大きい立位・歩行不安定者ほど、目標指向性のある集中的な運動療法を実施する必要性がある。PT介助の立位・歩行練習では、運動機能誘発や歩行パターンの改善には効果的であるが、その反面、PT介助の方法にもよるが患者、PTの両者にとって身体的負担も大きく、頻回な休憩を入れる間欠的な立位・歩行練習に陥りやすい。このため立位・歩行の総時間が少なくなり、車椅子坐位時間の増大は「座らせきり状態」になる危険性も否定できない。一方、立位・歩行練習をより量的にも効率的に実施できる歩行支援機器を活用したアプローチでは、自主練習の実効性、転倒への心理的不安の軽減、業務上の安全管理などのプラス面も多く、今後はPT介助と歩行車などの歩行支援機器を上手く織り交ぜたアプローチ法を確立する必要性があることを強調したい。<BR><BR>
著者
大矢 暢久 富田 知也 太田 祐敏 川村 博文
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.176-183, 2013
参考文献数
31

【目的】急性期肩関節周囲炎患者の肩関節痛に対する消炎・鎮痛に関わるパルス超音波療法の非温熱効果を検証することである。【方法】肩関節周囲炎と診断された者のうち急性期の者12名を対象とし,コンロトール(C)群6名と超音波照射(US)群6名の2群に無作為に割つけて実施した。パルス超音波療法は,周波数1MHz,出力0.5W/cm^2,照射時間率20%,照射時間10分間の照射条件で3回/週,2週間実施した。効果判定は,C群,US群とも治療前後に,超音波検査,疼痛(VAS),関節可動域,主観的健康感(SF-36)などの評価を行い,有効性を検証した。【結果】US群はC群に比べ超音波検査での棘上筋腱厚,夜間時痛,関節可動域(屈曲,外旋)で有意差が認められた。【結論】肩関節周囲炎の急性期患者に対して,本研究での照射条件のパルス超音波療法による非温熱効果は,有効であることが示唆された。
著者
鶴見 隆正 川村 博文 辻下 守弘
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.635-638, 1991-11-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
2

多忙な臨床現場の中で関節可動域訓練(以下 ROM訓練)が実際にどのように行なわれ, その科学性をどのように感じているか, などについてアンケートを実施し, また ROM訓練時にどのような筋活動が生じているかを中心に電気生理学的な検討を行なった。
著者
内田 賢一 高木 峰子 鈴木 智高 川村 博文
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.G4P3234, 2010

【目的】<BR>「ハビリテーション」という言葉は,全国民にほぼ浸透していると思われるが,リハビリテーションと同程度に「理学療法士」という職名が周知されているか,と問われれば疑念の意を抱かずにはいられないのが現状ではないだろうか.理学療法士が「理学療法士及び作業療法士法」という法律で規定されている以上、国会の場でどの程度発言されているのかを調査することは,「理学療法士」が我が国においてどの程度周知されているのかを知る一つの手段になるのではないか,と考えられる。そこで今回、国会会議録を基に調査を行い、発言があった委員会名や時期などについて知見が得られたので報告する。<BR>【方法】<BR>国立国会図書館がインターネット上で提供している国会会議録データベースを基にして、昭和36年1月1日を基準日として平成20年12月31日までの57年間の国会会議録すべてを対象に、会議録中に「理学療法士」が一回でも記録されている会議録の調査検討を行った。国会の各種委員会の会議は,国会会期中毎日開催されており,1回の委員会では様々な案件が審議される.そのため,1回の委員会の中で「理学療法士」という言葉が何度記録されても,1回の委員会は1件として取り扱った.あわせて,国会図書館憲政資料室の請願資料一覧から,理学療法士に関する請願資料をすべて収集し検討した.<BR>【説明と同意】<BR>国会会議録は,国籍を問わず誰でも閲覧できる資料であり,倫理的に問題はない.<BR>【結果】<BR>57年間にわたって開催された国会各種委員会の会議録は、総計60,032件であり、そのうち「理学療法士」との記録がある会議録は377件認められた。内訳は,社会労働委員会の133件が最も多く,続いて厚生委員会が39件、厚生労働委員会が36件、予算委員会が19件、内閣委員会が18件認められた.本会議、文教委員会、予算委員会第三分科会がそれぞれ16件、決算委員会が12件、予算委員会第四分科会が9件、国民福祉委員会が7件、法務委員会、および国民生活・経済に関する調査会がそれぞれ4件であった.予算委員会第二分科会、予算委員会公聴会、文部科学委員会、国民生活に関する調査会、決算行政監視委員会はそれぞれ3件,労働委員会、予算委員会第五分科会、逓信委員会、地方行政委員会、税制問題等に関する調査特別委員会、交通安全対策特別委員会、決算行政監視委員会第三分科会でそれぞれ2件ずつ認められた.農林水産委員会、少子高齢社会に関する調査会、国際問題に関する調査会、行政監視委員会、個人情報の保護に関する特別委員会、議員運営委員会、環境特別委員会、外務委員会、科学技術振興対策特別委員会、沖縄及び北方問題に関する特別委員会で,それぞれ1件ずつ認められた。<BR>377件のほとんどが,会議録に名前が出てきた程度であり,「理学療法士」が議論として壇上に上がっていたのは,わずか44件のみであった.44件の会議は,そのほとんどが厚生省,もしくは厚生労働省管轄の会議においてであり,昭和40年代は「理学療法士及び作業療法士法」に関わる特例措置などが主な議題となっていた.当時は,全日本鍼灸按マッサージ師会の多くの会員から,国会に対して特例期間延長に関する請願が提出されていた.なお,昭和47年11月4日,日本理学療法士協会の野本卓会長は,理学療法士の養成を4年制大学で行うよう理学療法士作業療法士の国家試験受験資格の法改正の必要性を請願し,昭和49年5月7日,参議員の社会労働委員会において日本社会党の藤原道子議員から法改正案として議題にあげられたが,審議されず廃案となっていた.<BR>昭和50年代は,大学における教育など養成方法に関することが多く,特に昭和60年12月10日の参議員社会労働委員会においては理学療法士の養成過剰が議論されており,竹中浩治厚生省政策局長からは,今後は質の向上に努力したいとの発言が認められた.<BR>昭和60年代および平成に入ってからは,職域に関する議論が多く,介護保険や老人保健施設における理学療法士の役割などに関する議題が多かった.<BR>【考察】<BR>国会会議録を概観すると,その時代に即した議題が目立っていた.しかし,「理学療法士」が議論として壇上に上がったのはわずか44件しかなく,国会の場で理学療法士があまり述べられていない現状を鑑みると,診療報酬において理学療法の重要性が反映されていないことにつながっているように感じられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>第45回衆議院総選挙においては,比例東北ブロックから山口和之氏が初当選したことで,国会の場で理学療法士について議論されることが今後は多くなることが予想される.理学療法士が国会論戦に参加することで,議論の内容がどのように変わるのか,基礎資料となる.