著者
藤川 咲子 川村 周三
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.37-44, 2013-01-01 (Released:2014-12-03)
参考文献数
21
被引用文献数
4

市販流通している牛乳66銘柄,延べ84点の理化学特性の測定と官能評価を東京と札幌の2地域で行い,牛乳の成分や調整加工処理が牛乳の食味に与える影響を検討した。乳脂肪は色調L*/値と有意な相関(r=0.90,p<0.001)が認められ,乳脂肪が低い牛乳は暗い色と評価される傾向が示された。官能評価の結果,牛乳の総合的なおいしさに関して,乳脂肪の低い牛乳を色調と香りが悪くてコクがなくおいしくないと判断することが示唆された。また,パネルは間接加熱によるUHT殺菌牛乳をおいしいと評価することが認められた。
著者
横江 未央 川村 周三 樋元 淳一 伊藤 和彦
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.121-125, 2005-07-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
5

大型精米工場で普通精米と無洗米, および普通精米と同程度の搗精歩留の無洗米 (高歩留無洗米) を調製し, その品質特性について調べた。その結果, 普通精米と無洗米の品質特性の違いは, 一部は主として歩留低下に起因するものであるが, 多くは主として米粒表面の研磨と除糠に, または歩留低下および表面研磨と除糠の双方に起因していることが明らかとなった。高歩留無洗米は, 白度が高く洗米水の濁度や乾固物量が低いなど無洗米としての品質特性を備えていた。しかし, 無洗化処理では胚芽がほとんど除去されないため, 高歩留無洗米は普通精米に比べて炊飯米外観が悪く, 食味評価が低かった。
著者
横江 未央 川村 周三
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.55-62, 2008

本研究は, 市販の普通精米と無洗米を用いて貯蔵試験を実施し, 理化学測定と官能試験を行い, 精米の賞味期限を設定することを目的とした。本報では特に貯蔵中の精米の理化学特性の変化について検討した。貯蔵試験は-20℃, -5℃, 5℃, 15℃, 25℃の温度で1年間行った。さらに翌年-20℃, 5℃, 15℃, 20℃, 25℃で6ヵ月の貯蔵試験を行った。その結果, 脂肪酸度は貯蔵に伴い貯蔵温度が高いほど大きく増加したが, 多くの理化学測定項目において普通精米, 無洗米ともに, 温度15℃以下では貯蔵終了時まで変化が認められなかった。炊飯米外観および米飯粘弾性では, 貯蔵前の品質が良い米は貯蔵中の品質劣化が小さく, 貯蔵前の品質が悪い米は貯蔵中の品質劣化が大きかった。
著者
川村 周三 夏賀 元康 河野 慎一 伊藤 和彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.328-332, 1996-03-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

カリフォルニア産あきたこまち,コシヒカリ,ササニシキの食味を,国内産米の同一品種を比較対照として,調査した.その結果,次のことが認あられた.(1) 理化学的特性においてカリフォルニア産米は,玄米の整粒が少なく,精白米の透光度が低く,タンパク質含量が低く,ヨード呈色度が大きかった.(2) カリフォルニア産米は精白米と炊飯米の外観が悪く,香りが悪く,粘りが弱く,その結果,総合評価が悪かった.(3) 供試したカリフォルニア産米の食味評価が低かった原因は栽培条件にあると考えられた.
著者
川村 周三
出版者
日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.55-60, 2012-01

1.はじめに: 北海道の豊かな自然と広い大地。日本の一般消費者の多くは北海道で生産する農作物、畜産物、水産物に「新鮮で美味しくて安全」という良いイメージを持っている。実際にも、北海道の食料自給率(カロリーベース)は約200%であり、日本の食料基地として本州の大都市圏に多くの食料を供給している。東京、名古屋、大阪などの百貨店において、"客寄せイベント"として北海道物産展が定期的に開催される。北海道物産展の目玉商品の多くは農畜水産物やその加工食品である。数年前までは、その目玉商品に中に「北海道米」が登場することは決してなかった。従来から、日本で一般消費者に最も人気のある(一番美味しいと思われている)米は「コシヒカリ」である。一方、北海道は高緯度寒冷地であるために府県で育成されたイネの品種を栽培することができず、北海道で育成された品種のみを栽培してきた。また、府県に比較すると北海道はイネの登熟期間が短く登熟期の気温も低いために、イネにとって生育環境が悪い。その結果、古くから「北海道米は美味しくない」とされており、「北海道米は売れないお米の"やっかいどう米"」とも揶揄(やゆ)されてきた。そこで、北海道では米の食味向上を目指して、農家、農協、試験場、大学などの米の生産とその技術に携わる数多くの人たちが連携して、長年にわたる努力を積み重ねてきた。その結果、近年は百貨店の北海道物産展の目玉商品に北海道米が登場するようになった。ここでは、北海道から発信するフード・イノベーションとして、長年にわたり実施してきた米の食味試験の結果をとおして、北海道米の食味向上の軌跡と奇跡について述べる。
著者
横江 未央 川村 周三
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業食料工学会誌 (ISSN:2188224X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.170-178, 2014-03-01 (Released:2017-03-27)
参考文献数
17
被引用文献数
1

パネルは官能試験における重要な分析機器である。本研究では官能試験においてパネルの地域間差や年齢間差が米の官能評価に与える影響について検討した。さらに,米の官能試験において,官能試験の経験がないパネルを用いた際のパネル数が官能評価の精度に与える影響について検討した。その結果,米の官能評価ではパネルの地域間差は認められなかった。パネルの年齢間差は特定の傾向は認められなかったが,パネルの年齢は官能評価の結果に影響を与える可能性があることがわかった。また,官能試験の経験のないパネルであっても,その人数を40人以上とすることで精度が良い官能評価が可能であることがわかった。
著者
川村 周三 夏賀 元康 河野 慎一 伊藤 和彦
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.95-104, 1996 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

機器分析による米の食味評価法が開発され実用化されている。しかし, 機器分析による米の食味評価が官能試験の食味評価に換えて利用できるか, それぞれの機器で得られた食味評価に相関があるか, などの客観的データに少ない。そこで, 近赤外分光法を利用した3機種と電磁波を利用した1機種を用い, 61種類の米の機器分析と官能試験とを行った。機器分析による食味評価と官能試験の総合評価との相関は低かった。したがって, これらの機器は食味評価として数値を示すほどの精度はなく, 食味別に米をグループ分けすることに用いるのが適当であった。各機器の食味評価値の間に互換性はなかった。機器分析法による米の食味評価の今後の発展のためには食味評価尺度の統一が不可欠である。
著者
川村 周三
出版者
文永堂出版
雑誌
獣医畜産新報=Journal of Veterinary Medicine (ISSN:04470192)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.577-581, 2005

大規模酪農では,乳牛の群管理技術と同時に個別管理技術が必要とされている。そこで近赤外分光法を用いた搾乳時のリアルタイム乳質診断技術の研究開発を行っている。試作した近赤外センサにより搾乳中の乳成分や体細胞数をリアルタイムに測定することができた。同時に搾乳1回分の平均の乳成分や体細胞数を搾乳終了時に求めることが可能となった。この技術により搾乳時に潜在性乳房炎の乳牛を診断することが可能となる。近赤外分光法によるリアルタイム乳質診断技術は,搾乳ロボットと組み合わせることにより乳牛の個別管理に利用可能であり,酪農における精密農業の発展に貢献する技術である。