著者
幾石 尚美 塚原 裕 福田 直子 鈴木 絢子 神田 理恵子 川村 良 橋村 尚彦 中村 亜矢子 土子 綾
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.31-35, 2014-02-01 (Released:2015-05-22)
参考文献数
18

本症例は子宮頸部高度異形成の術前診断であったが,年齢と根治性を考え子宮全摘術を行った.病理診断は子宮頸部上皮内がんで切除断端は陰性であった.しかし術後4 か月目に腟断端部に異型細胞を認めた.その原因には術前から長期間認めていたハイリスク型ヒトパピローマウィルス human papillomavirus (HPV) 感染が強く考えられ,術後の定期的なエストリオール錠の腟内投与にて異型細胞が著明に減少した.
著者
藤井 晶子 丸山 広達 柴 珠実 田中 久美子 小岡 亜希子 中村 五月 梶田 賢 江口 依里 友岡 清秀 谷川 武 斉藤 功 川村 良一 髙田 康徳 大澤 春彦 陶山 啓子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.300-307, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:飲酒と認知症に関する海外の研究のメタ分析では,飲酒量が少量の場合には発症リスクが低く,大量の場合には高い結果が示されている.しかし,アルコール代謝や飲酒文化が異なるわが国のエビデンスは限定的である.そこで本研究では,平均飲酒量と認知症前段階の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment,以下MCIと略)との関連について検討した.方法:2014~2017年に愛媛県東温市の地域住民に実施した疫学研究「東温スタディ」に参加した60~84歳の男性421名,女性700名を本研究の対象とした.質問調査によって飲酒頻度,酒の種類別飲酒量を把握し,1日あたりの平均飲酒量を推定した.またJapanese version of Montreal Cognitive Assessmentを実施し,26点未満をMCIと定義した.男女別に現在飲まない群に対する平均飲酒量について男性3群,女性2群に分け各群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をロジスティック回帰モデルにて算出した.さらに,ビール,日本酒,焼酎(原液),ワインについては,日本酒1合相当あたりの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)を算出した.結果:男性212名(50.4%),女性220名(31.4%)がMCIに判定された.男性では,現在飲まない群に比べて,1日平均2合以上の群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は1.78(0.93~3.40,傾向性p=0.045)であったが,女性では有意な関連は認められなかった(「1合以上」群の多変量調整オッズ比:95%信頼区間=0.96:0.39~2.38,傾向性p=0.92).この関連は,高血圧者において明確に認められた.また酒の種類別の解析では,男性において焼酎(原液)については多変量調整オッズ比(95%信頼区間)が1.57(1.18~2.07)と有意に高かった.結論:男性において平均飲酒量が多いほどMCIのリスクが高い可能性が示された.この関連は高血圧者においてより明確であった.
著者
青木 実枝 三澤 寿美 鎌田 美千子 新野 美紀 川村 良子
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-10, 2006-03-31
被引用文献数
1

本研究は,地域で活動する保健師の災害時ヘルスケアニーズに対する役割意識を明らかにすることを目的に行った.調査対象者はA県の市町村および保健所に勤務する保健師358人である.回答者282人(回答率77.5%)現施設の平均従事年数14.4プラスマイナス9.5年である.調査内容は、全災害サイクルにおけるヘルスケアニーズと災害時救護・救援活動に関する研修・訓練・シミュレーションの参加状況,および役割を遂行するに当たって気になることである.全災害サイクルにおけるヘルスケアニーズは先行研究を参考にして52の質問項目を設定した.その結果,50%以上の対象者が自分の役割であると回答したものが22項目あり,保健師は全災害サイクルにおけるヘルスケアニーズに対して役割意識が高いことが明らかになった.中でも,保健師が自分の役割であると強く意識する傾向にあったのは,発災時期から亜急性期のヘルスケアニーズである,1被災地の衛生状況や被災住民の健康状態および災害弱者の把握,2健康障害を予防するための巡回活動や広報活動および環境の工夫,3心理的影響への対応,4感染予防に関する項目であった.保健師が自分の役割ではないと意識する傾向にあったのは,災害休止期や復興期のヘルスケアニーズである,1被災者の生活の立て直しに関する項目,2組織作りや資源マップ作り等であった.しかし,保健師の災害看護や災害時救護・救援活動に関する研修等の受講経験者は18.4%のみであった.さらに、保健師が自分の役割意識に基づいて役割行動を起こすことに対して,自信がないと回答したのは84.4%であった.以上の結果から,地域で活動している保健師は,大規模災害が発生した場合,発災時期から亜急性期のヘルスケアニーズへの役割意識の方が,災害休止期や復興期のヘルスケアニーズへの役割意識よりも高いことが明らかになった.しかし,実際には,地域で看護活動を展開する保健師であるがゆえに,復興期における地域住民の生活の立て直しや,生活の立て直しに関連した健康問題への対処などのヘルスケアニーズに対する役割に期待が高いと考えられる.このことから地域住民のヘルスケアニーズによって期待される役割と実際の保健師の看護活動との乖離が予想される.また,保健師のヘルスケアニーズに対する役割意識は広範囲で高いが,意識している役割に基づいて行動するために必要な知識・技術が不十分であることが明らかになった.
著者
松下 由美 高田 康徳 松田 藍 川村 良一 大沼 裕 大澤 春彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.475-481, 2016-07-30 (Released:2016-07-30)
参考文献数
15

低血糖により自律神経系の活動と関連した不整脈や心血管イベントが増加することが報告されている.今回,インスリン依存状態の1型糖尿病症例において,continuous glucose monitoring(CGM)とホルター心電図を同時に施行し,夜間低血糖時における心電図と自律神経活動の変化を解析し得たので報告する.症例は77歳男性,病歴30年の緩徐進行1型糖尿病患者.入院中のCGMで,睡眠中に約4時間持続する低血糖を認めた.ホルター心電図の心拍変動解析では,同日の睡眠中の非低血糖時に比し,低血糖時に交感神経活性指標(LF/HF)の亢進,副交感神経活性指標(HF)の減少,同時に心室性期外収縮,QTc延長を認めた.CGMとホルター心電図の併用は,夜間低血糖の把握のみならず,低血糖時の自律神経系の変化およびそれと関連した不整脈を検出するのに有用と考えられる.