著者
川田 菜穂子 平山 洋介
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.215-225, 2016 (Released:2017-08-10)

『全国消費実態調査』(1989・1994・1999・2004年)の匿名データを用いて家計における住居費負担の動向を把握し,所得格差と相対的貧困の拡大における住居費負担の影響を検討した。住居費負担率は経年に従って増加しており,とくに『公団・公社の借家』や『民営借家』に居住する世帯の負担増が顕著であった。また,住居費控除後所得を基準に貧困率を算出すると,住居費控除前所得を基準にした場合と比較して上昇した。さらに,低所得世帯を対象としたヒアリング調査の事例分析から,狭小・老朽で低廉な借家に居住せざるを得ない世帯や住宅を選好できず住居費負担が過重になる世帯の具体的な生活状況を把握した。
著者
川田 菜穂子 平山 洋介
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.649, pp.681-687, 2010-03-30 (Released:2010-06-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

This paper explores the housing conditions of single people in Japan with particular reference to cross-national comparison. Marital status has played a key role in differentiating housing opportunities, disadvantaging non-married people. This has been more notable for Japan than for European countries. In Japan where the housing policy system has explicitly been focused on encouraging family households to acquire their own homes, many single people have lived in parental homes with limited housing choice.
著者
塩崎 賢明 阪東 美智子 川崎 直宏 稲葉 剛 見上 崇洋 岡本 祥浩 川田 菜穂子 鈴木 浩
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集・実践研究報告集 (ISSN:2433801X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.25-36, 2018

本研究は,2006年に制定された住生活基本法とそれにもとづく一連の住宅関係法制を「住生活基本法体制」とし,その到達点を明らかにすることを通して,人間らしい住まいと環境を享受できていない居住弱者の実態を明らかにし,居住弱者をなくし国民の住生活の向上を図るうえでの課題を導こうとした。住生活基本法と住宅セーフティネット法の法的性格を検討し,ホームレス,若者,被災者等の居住弱者の実態を明らかにし,居住貧困に対して住生活基本法体制及びそのもとにある住宅セーフティネット法とその改正の施策について評価を加えた。
著者
甲斐 彩香 川田 菜穂子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 住宅金融における市場化や規制緩和,ライフコースの多様化や雇用の不安定化といった社会経済状況のもと,家計における住居費負担や住宅ローンの利用がどのように変化しているのかを明らかにすることを目的とする. <br><b>方法</b> 家計における住居費負担について,総務省が実施する全国消費実態調査や家計調査等の公刊統計を用いて,その動向を明らかにする.また,著者らが福岡県と大分県を対象に実施した住宅ローン利用世帯へのヒアリング調査をもとに,住宅ローン利用の実態とそのリスクについて検討する.<br><b>結果</b> 近年,住宅ローンを利用した住宅取得が拡大している.また1990年代以降,可処分所得に占める住居費の割合は徐々に増加しており,家計における住居費負担が高まっている.住宅ローン利用世帯の事例分析からは,多くの世帯が,低金利であることを理由に変動金利型の住宅ローンを選択していること,頭金なしの住宅取得を経験していること,住宅取得後に所得の低下を経験していることなどが明らかになった.また,完済年齢が高齢期におよぶが,繰り上げ返済が計画的に実施されていない事例が多いことも明らかになった.住宅ローン利用のリスクは拡大している。
著者
川田 菜穂子
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

戦後日本の住宅システムは、世帯主である男性勤労者が持家を取得することを前提としてきた。しかし日本では結婚や家族形成のあり方が大きく変化し、離婚の増加が顕著である。本研究は、日本と異なる住宅システムとジェンダーの傾向をもつ欧州諸国を比較対象として、離別女性の住宅経歴の実態分析を行うところから、日本の住宅システムの実態と課題を明らかにするものである。国際機関が提供するパネル調査や独自調査の結果を分析したところ、住宅システムの違いにより、各国の離別女性の住宅経歴には異なる傾向がみられた。日本では離別時の女性の転居率が顕著に高く、移動を経験した女性は厳しい住宅条件におかれている。