著者
綾木 雅彦 森田 健 坪田 一男
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.85-95, 2016 (Released:2017-08-10)

生活環境内の自然光と人工照明中のブルーライト成分を試作した光センサーを使用して測定した。ブルーライトを発する光源を使用して眼の角膜上皮細胞への光毒性の培養実験を行って,眼障害の可能性と対策について考察した。ブルーライトならびにブルーライトの覚醒度への影響を検証した。新たに作成した網膜電位図記録装置により,ブルーライトに反応する内因性光感受性網膜神経節細胞の電気活性をヒトで記録することに成功し,住環境で曝露するブルーライトの生体反応の新たな検査法を開発することができた。以上の結果から,通常の視力や視野の確保以外にも眼と全身の健康に配慮した照明,遮光が使用されるべきであると結論した。
著者
原戸 喜代里 木口 なつみ 大場 修
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.121-132, 2015 (Released:2017-08-10)

本研究は,第二次大戦後の占領期,,京都において将校用家族住宅として接収された住宅を取り上げ,京都府立総合資料館所蔵の連合軍接収住宅関連史料を中心とする史料調査と,現存する遺構調査及び接収住宅の所有者に対し聞き取り調査を行った。京都における接収住宅は,その約半数が占領軍将校家族と日本人家族の同居という形態をとり,接収された住宅は洋風住宅だけでなく和風住宅も含まれていた。これらの住宅が連合軍将校の家族住宅として転用される際,接収住宅の間取りは変更されなかったが,住宅設備については大きく改変された。接収期,日本の住宅に持ち込まれた住生活に対する意識や西洋の生活様式は,接収解除後の日本人の住生活に影響をもたらした。
著者
池上 重康 木方 十根 砂本 文彦 鈴木 貴仁
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.53-64, 2012 (Released:2017-08-10)

路面電車郊外とは,19世紀末に米国で展開した路面電車沿線に開発された郊外住宅地のことを指す。日本の地方都市における路面電車郊外像を探るべく,10の事例報告を通して類型化し,郊外住宅地の概念にどう位置づけられるか考察した。人口変動に伴う宅地化圧力と都市計画の実施状況を軸に以下の類型を見出した。人ロポテンシャルの高い都市では典型的な路面電車郊外が形成されたが,それ以外の都市では土地区画整理を計画したが連続的な宅地形成には至らず,都市計画事業を実現できず宅地化の萌芽に留まる例もあった。日本の路面電車郊外は自発性を含み,理念先行ではなく都市のポテンシャルに即して形成された郊外住宅地であると位置づけられる。
著者
川田 菜穂子 平山 洋介
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.215-225, 2016 (Released:2017-08-10)

『全国消費実態調査』(1989・1994・1999・2004年)の匿名データを用いて家計における住居費負担の動向を把握し,所得格差と相対的貧困の拡大における住居費負担の影響を検討した。住居費負担率は経年に従って増加しており,とくに『公団・公社の借家』や『民営借家』に居住する世帯の負担増が顕著であった。また,住居費控除後所得を基準に貧困率を算出すると,住居費控除前所得を基準にした場合と比較して上昇した。さらに,低所得世帯を対象としたヒアリング調査の事例分析から,狭小・老朽で低廉な借家に居住せざるを得ない世帯や住宅を選好できず住居費負担が過重になる世帯の具体的な生活状況を把握した。
著者
中島 伸 田中 暁子 初田 香成
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.181-192, 2015 (Released:2017-08-10)

本研究は,城南住宅組合を対象に組合活動を通時的に分析し,住環境を下支えしてきた土地所有の状況など明らかにすることで,住環境の形成・維持へとつながる住民主体のまちづくりへの知見を得ることである。組合の活動記録の一次史料と土地所有形態の変遷を調べることで,理想的田園生活を目指した城南住宅組合は当初こそ別荘利用の形態で住宅地化が進まなかったものの,戦中,戦後より住宅地として居住実態が伴ってくると,当初より定めた規約による各住宅地での環境整備が進んだ。共同借地経営の住宅組合という組織ではあるが,土地所有など前提となる経営基盤が大きく変化する中で,住環境維持を目標にしつつも,居住者のコミュニティ活動を相互補完的に行う中で,組織活動を継続してきていることがわかった。
著者
白川 葉子 高見沢 実 尹 莊植 水沼 淑子 嶋田 昌子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.133-144, 2016 (Released:2017-08-10)

本研究は,外国人居留地としての歴史的背景と資産をもつ横浜山手に現存する個人所有の住宅(洋館)を取り上げ,その土地・建物の履歴・変遷に関する歴史的資料の調査と現所有者・居住者の聞き取り調査を行った。横浜山手には公開施設である「山手西洋館」,学校や教会が所有する元「住宅(洋館)」,個人所有の住宅(洋館)が現存しているが,そのうち個人所有は,21 棟であり,その多くは近年所有者を変えながらも,住まいとして機能し続けている。そしてその建物は,横浜山手において,地域の特徴を形成する重要な要素として,その存在意義を確立しているといえる。
著者
滝口 良 坂本 剛 井潤 裕
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.173-184, 2017 (Released:2017-08-10)

都市定住のなかで遊牧の住文化が継承されているウランバートルの周辺居住区(ゲル地区)において住居と住民の生活史の調査を実施し,当該地区固有の住文化について検討した。ゲル地区の住文化として(1)ハシャーという居住ユニット,(2)移動式ゲルとセルフビルド住宅,(3)割り込み居住といった要素が明らかになり,家庭環境の変化に応じた家屋の増改築や共同居住,移動を行う柔軟な住文化が浮かび上がった。さらにアンケート調査の結果,上記の住文化の要素がゲル地区の近隣関係や地域改善に向けた住民の意図に影響を与えることが明らかとなり,現行のゲル地区のコミュニティ開発にあたり地域固有の住文化を考慮する必要性が示唆された。
著者
藤井 容子 若林 清彦
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.37-48, 2016 (Released:2017-08-10)

高齢者や障がい者が住み慣れた地域で共に暮らしていける社会システムの構築および施設計画の提案に向けて,彼らがひとつ屋根の下で生活し設備も共有する共生型グループホームに着目し,国内外の共生型施設において調査を実施した。その結果を,運営的・財政的支援や入居者参加など社会システムの構築や施設計画への提案,施設・生活の質的向上や施設のあり方の計画理論的検討,求められる空間デザインの3つの視点から分析・考察した。
著者
花里 俊廣 佐々木 誠 温井 達也
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.89-100, 2012 (Released:2017-08-10)

本稿は,別荘地「普賢山落」の人間関係の豊かなコミュニティの形成に関して,1)別荘の所有者に「ものづくり」志向を持った人が多くおりコミュニティとして成立しやすかったこと,2)コミュニティの運営方法のルールやイベント等に特徴がみられたこと,3)別荘地特有の現象として滞在の時期が重なっていること,4)いくつかの出来事や事件などが偶然にコミュニティ形成にプラスに働いたこと,5)最小限で開放的な別荘建築がコミュニティ形成に好影響を与えたこと,という5点に基づき議論し,また,写真等で別荘建築について紹介するものである。
著者
窪田 亜矢 田中 大朗 池田 晃一 森川 千裕 李 美沙 砂塚 大河
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.97-108, 2016 (Released:2017-08-10)

千葉県浦安市は,1960年代まで小さな漁村集落であった。水害を避けるため限定的な地形を有効に活用する必要があり,密度の高い住空間が展開されていた。工場汚水,地下鉄開通,首都圏の巨大化など多様な影響を強く受けて,漁業は完全になくなり,物理的環境も社会的関係も激変した。木造密集市街地は,大震災時の火災などの突発性リスクからも,高齢化や日中の活動低下という進行性リスクからも,行政の立場からは改善すべき特性となった。しかし,浦安の「ガワ・アン街区」と「ロジ空間」は地域の住文化を支えている。市有地を空地としたまま活用することで,リスクを軽減しつつ,ガワ・アンやロジという空間構造とそれに依る住文化を継承できる可能性がある。
著者
山田 信博 藤田 忍
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.133-143, 2015 (Released:2017-08-10)

本研究は,公営住宅の「住戸」を使用した地域支援活動拠点を対象としている。実態把握により住戸使用の基礎的知見を得て,利用者・団地住民・地域住民の評価から,問題点や有効性を明らかにした。障害者の居住支援,高齢者の生活・見守り支援,地域住民支援など,地域福祉の推進により,今後地域内に求められる支援活動の場として,公営住宅の住戸使用は可能であり,活動に支障はみられない。また,住民コミュニティの活性化など団地再生の効果もみられた。他にも,新設に比べ拠点の設置費や運営費が低く,NPOや社会福祉法人等の団体が活動を開始しやすい。使用戸数の増加に向けて,公営住宅管理主体の積極的な姿勢が求められる。
著者
堀 裕典 田中 暁子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.83-94, 2014

本研究は,日本やアメリカと同じゾーニング制を取り,イギリスやフランスの影響を受けているカナダ諸都市における裁量的デザインレビュー制度の運用実態を明らかにすることを目的とした。研究の方法として,人口50万人以上の都市を対象に,特徴的なケーススタディ都市を選定し,制度の詳細分析と運用実態及び周辺状況との調和について調査を行った。その結果,バンクーバーを除く主要都市で,制度導入の際にトライアル期間を設けていたことや,分権の度合いにより大きな課題がある都市も存在したが,多くの場合,デザインレビュー制度が存在することで,周辺環境へのインパクトを軽減し,事業計画の改善が図られていたということが分かった。
著者
平井 太郎 祐成 保志
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.37-48, 2015

本研究では現代日本の集合分調主宅における主体形成の過程を社会学的に分析した。前半では,集合分譲住宅の管理をめぐる法制度にかんする議論の分析とハウジング研究における理論的展開を踏まえ,住宅に関わる主体の変化可能性や複数性に配慮する視点を提起した。それを受け後半では,ある集合分譲住宅における社会学者と居住者双方の反省的な討議の過程を記述したそこでは,かつて管理の客体にすぎないと見なされていた居住者=所有者が組識的に主体化してきた実態を確認したうえで,その主体化の過程をコミュニティ形成ではなくインフォーマルな関係を組み込んだ官僚制化として理解できる可能性を居住者自身とも共有した。
著者
安野 彰 大井 隆弘 須崎 文代 田中 和幸 水野 僚子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.137-148, 2017

本研究は,近代住宅における水まわり空間の変容過程を明らかにするため,住宅改良が活発に展開された大正から昭和期にかけて活躍し,平面形式等に都市住宅の典型的傾向を示す建築家・吉田五十八の住宅作品を分析した。具体的には,水まわりの設備が描かれた平面図,展開図,詳細図等を用いて,台所・浴室・便所・女中室について,住宅全体の動線計画における位置づけや室内空間の変遷を検討した。その結果,1940 年頃と1950 年から55 年頃に変化が集中していることが確認された。そこでは,住宅における表と裏の性格と水まわり空間の関係性が段階的に変化していく様子や,新しい材料や技術の導入がそうした変化に与えた影響が捉えられた。
著者
綾木 雅彦 森田 健 坪田 一男
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.85-95, 2016

生活環境内の自然光と人工照明中のブルーライト成分を試作した光センサーを使用して測定した。ブルーライトを発する光源を使用して眼の角膜上皮細胞への光毒性の培養実験を行って,眼障害の可能性と対策について考察した。ブルーライトならびにブルーライトの覚醒度への影響を検証した。新たに作成した網膜電位図記録装置により,ブルーライトに反応する内因性光感受性網膜神経節細胞の電気活性をヒトで記録することに成功し,住環境で曝露するブルーライトの生体反応の新たな検査法を開発することができた。以上の結果から,通常の視力や視野の確保以外にも眼と全身の健康に配慮した照明,遮光が使用されるべきであると結論した。
著者
伊藤 裕久 菊地 成朋 箕浦 永子 伊藤 瑞季
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.97-108, 2015 (Released:2017-08-10)

本研究は,博多における地縁的結合の重層に注目しながら,個別の「町」と「流」の内部構造について社会=空間構造の実態と特性,さらに近代への変容過程について解明した。祭礼組織である「流」は近世を通じて地縁的結合の柱として行政機構の末端にも位置づけられていったが,明治期には行政区や学校区による新たな地縁的結合が形成されたことにより,再び祭礼組織として相対化されたことが明らかとなった。博多の社会=空間構造は,「流」による南北通を主軸とした構造から,近代の都市インフラの影響を受けつつ,行政区,学校区,商工人分布ともに東西通を主軸とした構造に変容していった。
著者
熊谷 亮平 稲坂 晃義 濱 定史 渡邊 史郎
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.23-34, 2017

木密地域である神楽坂地域では,既存木造建築の改修・用途変更による商業店舗が増加し,来街者の多い住商混在エリアを形成している。これらのリノベーションは建物や環境を維持しながらエリアの活性化に資する可能性を持っている。本研究では特に近年この傾向が顕著な神楽坂上を対象としてエリア特性や建物属性を把握し,その分布や集積の実態を明らかにした。用途変更を含めた木造建築の活発な更新実態,花街エリアである神楽坂下との地域的差異,改修工事における課題や施工方法・体制の一端を示した。また比較対象として木密地域のリノベーションが活発な大阪の中崎町・空堀地区などの分析を行い,用途や分布の傾向などを考察した。
著者
葛西 リサ 上野 勝代
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.35-46, 2014 (Released:2017-08-10)

本調査では,地域生活移行後のDV 被害者の生活課題を明らかにし,被害者向けアフターケアの先駆事例を取り上げ,その内容,運営課題やその可能性について整理した。具体的には,1)被害者の多くは貧困問題,暴力の後遺症による精神問題を抱えながらも,人的ネットワークを喪失し,地域から孤立する傾向が高いこと,2)多くの民間団体が経済的な保障がない中で被害者のアフターケアを実施している実態があること,3)被害者へのアフターケア構築の可能性として,県独自で被害者のアフターケアを展開する長崎県の事例及び障害者総合支援法の枠組みを使った被害者のアフターフォローの実践について提示した。
著者
奈良岡 聰智 小川原 正道 川田 敬一 土田 宏成 梶原 克彦 水野 京子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.189-200, 2013

本研究は,各国の駐日大使館の立地,建築様式,およびその機能について解明することを目的としたものである,駐日大使館については研究の蓄積が浅いため,まずは建築史料,外交文書など,一次的史料やデータを収集することを通して,今後の大使館研究の基盤を構築することを目指した。また,それらの史料情報を得るにあたって,旧華族への聞き取り調査を行った。特に研究対象としたのは,重要な外交上のパートナーであったアメリカ,フランス,およびベルギーの3国である。本研究を通じて,大使館が両国の外交関係を「象徴」する存在として,重要な機能と特徴的な建築を有していたことが確認された。
著者
奈良岡 聰智 小川原 正道 川田 敬一 土田 宏成 梶原 克彦 水野 京子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.189-200, 2013 (Released:2017-08-10)

本研究は,各国の駐日大使館の立地,建築様式,およびその機能について解明することを目的としたものである,駐日大使館については研究の蓄積が浅いため,まずは建築史料,外交文書など,一次的史料やデータを収集することを通して,今後の大使館研究の基盤を構築することを目指した。また,それらの史料情報を得るにあたって,旧華族への聞き取り調査を行った。特に研究対象としたのは,重要な外交上のパートナーであったアメリカ,フランス,およびベルギーの3国である。本研究を通じて,大使館が両国の外交関係を「象徴」する存在として,重要な機能と特徴的な建築を有していたことが確認された。