著者
市倉 加奈子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.79-88, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
33

身体疾患患者は、それぞれの疾患に特有な問題を抱えている。たとえば、がん患者は診断や余命の告知が衝撃や絶望をもたらす。心疾患や糖尿病患者はセルフケアや長期療養に伴う苦痛が大きい。これらの心理社会的問題や苦痛の改善に、認知行動療法(Cognitive behavioral therapy: CBT)が有用であることが先行研究で明らかにされてきた。がんのCBTは、認知療法、行動活性化療法、問題解決療法、マインドフルネス認知療法などで構成される。一方で心疾患や糖尿病のCBTは認知療法、生活習慣改善を目指す行動療法が用いられることが多い。チーム医療において、上記の身体疾患患者に対するCBTを適用していくために、公認心理師の役割や行動コンサルテーションなどのCBT活用方法について議論する必要がある。今後はさらにエビデンスを蓄積し、身体疾患患者に広く心理的支援が提供されることが求められている。

4 0 0 0 OA 精神運動制止

著者
松島 英介 市倉 加奈子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.1000_4, 2017 (Released:2017-10-01)

精神運動抑制ともいわれ,抑うつ気分や意欲の低下などとともに,うつ病の主症状の1つである.思考や決断力などの精神活動が停滞し,会話の減少,思考過程の遅延や緩慢な動作となって現れる.患者は,根気がない,集中できない,決断ができない,億劫や面倒などと訴える.重症になると,口数が極端に減って行動も不活発となり,臥床したまま動かなくなることもあり,うつ病性昏迷と呼ばれる状態になる.
著者
市倉 加奈子 日野 亜弥子 田上 明日香 井村 里穂 石田 陽菜 深瀬 裕子 村山 憲男 村瀬 華子 島津 明人 平井 啓 田ヶ谷 浩邦
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.94.21046, (Released:2023-02-01)
参考文献数
39

Workplace changes, such as remote work during the COVID-19 pandemic, have caused serious psychological distress for workers. The aim of this study was to examine job stressors and coping strategies among Japanese workers during the pandemic. The study was a qualitative methods approach using a web-based survey for Japanese workers in May 2020. We asked about job stressors and coping strategies with free text comments. We performed context analysis and categorized job stressors and coping strategies. Of the participants, 59.2 % suffered psychological stress from workplace changes during the pandemic. We identified 11 categories of job stressors including “work-life balance,” “lack of communication,” “overwork,” and “diminishing work role.” We also identified 16 categories of coping strategies including “distraction,” “dealing with work tasks,” “looking for ways to communicate,” “environmental coordination of work-at-home,” “online chatting,” and “psychological disengagement.” This study shows that Japanese workers tried many ways to manage their job stressors under the burden of the state of emergency. In the future, we should examine the association between coping strategies and psychological distress during the COVID-19 pandemic.

2 0 0 0 OA 女性のうつ病

著者
松島 英介 市倉 加奈子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.984-988, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
24

うつ病は男性に比べ女性に多い精神疾患であるが、これには生物学的、心理社会的、人為的要因が関係しているといわれている。また、女性のうつ病の臨床的特徴としては、非定型的症状が多かったり、疼痛などの身体症状や不安を多く訴えたり、精神運動制止や社会的役割における機能障害が目立つ。こうした女性のうつ病患者の薬物治療に際しては、体重増加、高プロラクチン血症、性機能障害などに注意し、Quality of Life(QOL)を念頭においた対応が必要である。