著者
成田 健一 三上 岳彦 菅原 広史 本條 毅 木村 圭司 桑田 直也
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.403-420_1, 2004-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
31
被引用文献数
33 30

新宿御苑を対象に夜間の冷気の「にじみ出し現象」の把握を主眼とした微気象観測を夏季約7日間連続して行った.緑地の境界に多数の超音波風速温度計を配置し,気流の直接測定から「にじみ出し現象」の把握を試みた.その結果,晴天かつ静穏な夜間,全地点でほぼ同時に緑地から流出する方向への風向の変化と約1°Cの急激な気温低下が観測された.にじみ出しの平均風速は0.1~0.3 m/sで,にじみ出し出現時にはクールアイランド強度が大きくなる.このときの気温断面分布には流出した冷気の先端に明確なクリフが現れ,その位置は緑地境界から80~90 mであった.このような夜間の冷気の生成に寄与しているのは樹林地よりも芝生面で,芝生面は表面温度も樹冠より低い.芝生面の顕熱流束は夜間負となるが,にじみ出し出現夜はほぼゼロとなる.すなわち,クールアイランド強度の大小と大気を冷却する効果の大小は,別のものと考えるのが妥当である.
著者
亀野 勝彦 永谷 結 柄澤 孝和 梅木 清 本條 毅 三上 岳彦
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.22(第22回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.197-202, 2008 (Released:2011-01-07)

本研究では,ヒートアイランド分布への風向の影響を首都圏スケールで明らかにすることを目的とし,夏季における広域METROSの気温データおよびAMeDASの降雨量と風向,風速データを使用して,観測領域内で1日の内に卓越する風向を東西南北別に解析に用いた。気温差を時系列解析した結果,ヒートアイランドは夜間に都心を,日中に都心および関東平野中央部を中心とし,風向変化から影響を受け,風下側に移動することが明らかになった。この移動は2~3時間の短い期間の風向変化に伴って,急速に起こることがあった。また南東の時には神奈川県沿岸部で,東京湾沿岸部と比較して,海風による強い冷却効果を受けることが明らかになった。
著者
加藤 顕 沖津 優麻 常松 展充 本條 毅 小林 達明 市橋 新
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.169-174, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
21
被引用文献数
5 1

ヒートアイランド現象の緩和対策として,都市緑地による熱環境緩和効果が期待されている。これまでの緑化対策では樹高しか着目されておらず,樹冠構造については考慮されなかった。樹冠構造の異なる緑地を対象に,樹冠構造の発達が地表面温度に影響するか検討した。その結果,樹冠の厚みが増すと日中の表面温度を下げ,夜間の表面温度を下げないことがわかり,昼夜間の温度変化を緩和する効果があった。そのため,樹冠構造を発達することが,都市林におけるヒートアイランド現象緩和機能を強化することがわかった。
著者
ソ ユファン 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.32(第32回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.125-130, 2018 (Released:2018-12-07)
参考文献数
9

天空率は,都市構造を表す指標の一つである。天空率測定を,魚眼レンズカメラ,全天球カメラ,Google Street View,DSM などの手法を用いて行い結果を比較した。その結果,従来使用されてきた魚眼レンズカメラに加え,これらの方法で全て実用的に天空率を求められることが分かった。Google Street View やDSM を使用する場合には,撮影した時期の建物や土地利用などが,変化していないかの確認が必要であった。樹林内や街路樹のある道路での天空率測定の場合,二値化後の枝や葉の大小が誤差の原因であり,二値化の閾値の選定に注意が必要であることが分かった。
著者
ソ ユファン 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.125-130, 2018

天空率は,都市構造を表す指標の一つである。天空率測定を,魚眼レンズカメラ,全天球カメラ,Google Street View,DSM などの手法を用いて行い結果を比較した。その結果,従来使用されてきた魚眼レンズカメラに加え,これらの方法で全て実用的に天空率を求められることが分かった。Google Street View やDSM を使用する場合には,撮影した時期の建物や土地利用などが,変化していないかの確認が必要であった。樹林内や街路樹のある道路での天空率測定の場合,二値化後の枝や葉の大小が誤差の原因であり,二値化の閾値の選定に注意が必要であることが分かった。
著者
山﨑 雄大 常松 展充 横山 仁 梅木 清 本條 毅
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.30(第30回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.43-48, 2016 (Released:2016-11-28)
参考文献数
10

本研究では2020年の東京五輪のマラソンコースを例に,その温熱環境を把握することを目的として,MRT(平均放射温度)とWBGT(湿球黒球温度)の計算事例を示した。その結果,猛暑日である2015年8月7日の事例では,9時~18時でコース上のすべての地点でWBGTが熱中症の「厳重警戒レベル」とされる28℃以上となった。またコース上にできる影によってWBGTが低下するため, 日陰を選んでコース取りをすることにより,ランナーが体感するWBGTを低く抑えられる可能性が示唆された。
著者
斎藤 馨 熊谷 洋一 本條 毅 趙 東範 吉岡 太郎 筒井 一貴
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.197-200, 1995-03-31
被引用文献数
7 4

東京大学キャンパス樹木調査GISデータを用いて,建築物を含む樹木景観の現況把握・予測に必要な情報処理手法について検討した。GISデータから樹木・建築物の3次元データ生成・可視化するシステムを整備し景観シミュレーション画像を試作した。その結果,(1)既往樹木調査GISデータに植物成長モデルを適用して樹木景観を効率的かつリアルな予測,(2)市販GIS建築物データをベースにして設計CADシステムで景観予測に有効な建築物データの効率的な作成,(3)GISとCADとが相互にデータ共有して都市内樹木景観の現況・将来像の予測ができることを示し,今後の都市内における景観情報処理システムのプロトタイプを明らかにした。
著者
本條 毅
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

都市気候の形成による環境の悪化に対して、有効な対策は非常に少ない。特に日本の場合、夏期の冷房による電力消費の増大とそれによる気温の上昇は、深刻な都市問題の一つであり、地球温暖化の原因の一つでもある。都市内の緑地は、植物の蒸発散による潜熱放出が大きいため、高温乾燥化を緩和する機能を持つと考えられ、緑地の存在は、いわば、パッシブな冷房装置として、都市の高温化に対する数少ない対策の一つである。保水性のよい材質で、道路や壁面を覆うのも同等の効果が望まれる。都市緑地や保水性材料舗装面(以下まとめて緑地とよぶ)の微気象の測定は、気温、湿度分布の測定、熱収支の測定などが多く行われており、緑地などが低温であることや潜熱輸送量が大きいことが示されてきたが、緑地の影響がどの程度の範囲まで及ぶかや、緑地による冷却効果がどの程度などの、都市計画に必要な知識については、まだ不足している部分が多い。本研究では、従来の地上部を中心とした測定に加えて、従来測定例の少ない地下部の温度分布にも着目した。地温は深ければ深いほど、長期の地表面上温度を平均、平滑化した値となるため、長期の地上部での気温の影響を地温分布測定からある程度推定することが可能である。長期的な緑地による冷却効果も、緑地内外の地温分布から推定できる可能性がある。新宿御苑を対象として、緑地内外での気温、地温分布、風速、熱収支などの測定を行った。このような測定をもとに、都市緑地での地温分布の実態や、熱収支の推定を行った。