著者
平田 一郎 Ichiro Hirata
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1-19, 2018-09

本稿はJ.J. ギブソンの生態学的知覚論と、相互関係的な過程存在論という点でギブソンと立場を同じくするホワイトヘッドの知覚論を比較して、知覚や自然についての見方を深めようとする。まずギブソンの知覚論において特徴的な直接知覚論やアフォーダンスを取り上げ、ホワイトヘッドの主張と通じるところがあることを示した。しかし神経生理学的な問題、アフォーダンスの特定化の問題では、ホワイトヘッドによって補える部分がある。さらにギブソンの知覚の問題点を示した。それは過去の知覚物が現在のものとして現前している時、何らかの「表象」を認めざるを得ないのでは、という問題である。その点でホワイトヘッドの知覚論では直接知覚を根底に置きながら、表象の可能性を残している。総じてホワイトヘッドの哲学は、ギブソンの生態学的知覚論の主張を包含しながらも、それを補える部分が多いということを示した。
著者
平田 一郎 Ichiro Hirata
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.157-176, 2021-09

現在の心の哲学において主流となっているのは、世界の全ての物事は物理的であり、全ての現象は物理的な性質に還元されるという物理主義である。一方ホワイトヘッドのコスモロジーは無機的なものも含めたすべての生起が何らかの経験をしている経験の主体であるという汎経験論であるため、バークリー的な主観的観念論であるという印象さえ与えている。しかし興味深いことにホワイトヘッドは自然科学に敵対的どころかむしろ数学者出身で自然科学をも取り入れる形で、自らのコスモロジーを構想した。そのような彼のコスモロジーが物理主義とどのような関係にあるのか、むしろあえて経験という心的な出来事が遍在するということに何らかの意義はないのか。そういった問題意識によりながら、本稿ではホワイトヘッドのコスモロジーの持つ考え方を物理主義やそれを巡る諸々の主張と比較しながら、新たな自然観の可能性を考察したい。
著者
平田 一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.44-53, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
22

IBD(UC,CD)と鑑別を要する主な炎症性腸疾患(広義)について,それら疾患の概要とIBDとの形態学的鑑別診断について述べた.UCとの鑑別を要する疾患として主にキャンピロバクター腸炎,アメーバ性大腸炎,出血性大腸炎,サルモネラ腸炎,NSAID腸炎(大腸炎型)などが挙げられる.CDとの鑑別を要する疾患として主に腸結核,腸管Behçet病,虚血性大腸炎,エルシニア腸炎,NSAID腸炎(潰瘍型)などが挙げられる.UCおよびCD両者との鑑別を要する疾患はCMV腸炎,アメーバ性大腸炎,腸管出血性大腸菌腸炎などである.
著者
齊藤 治 小島 敬史 寺西 務 中川 憲 萱澤 正伸 南里 昌史 江頭 由太郎 平田 一郎 勝 健一
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1307-1312, 1999-09-25

要旨 患者は29歳の女性.1985年(14歳時)に下痢が出現.1986年に発熱,関節炎が出現し,大腸型のCrohn病と診断された.その後,steroid,salazosulfapyridineなどで治療されていたが,入退院を繰り返した.1993年5月には上行結腸の狭窄のため結腸唖全摘術を施行した.その後,salazosulfapyridineで治療されていたが,1997年2月には発熱,貧血,低蛋白血症で入院.腸管狭窄(回腸S状結腸吻合部およびその口側の回腸)のため回腸,S状結腸の部分切除術を施行した.1998年8月には貧血,低蛋白血症で入院.大量の蛋白尿を認め,ネフローゼ症候群を呈していた.腎生検の結果,アミロイド(AA型)の沈着を認めた.
著者
斎藤 豊 松田 尚久 中島 健 坂本 琢 山田 真善 斎藤 彰一 池松 弘朗 和田 祥城 岡 志郎 河野 弘志 佐野 寧 田中 信治 藤井 隆広 工藤 進英 浦岡 俊夫 小林 望 中村 尚志 堀田 欣一 堀松 高博 坂本 直人 傅 光義 鶴田 修 樫田 博史 竹内 洋司 町田 浩久 日下 利広 吉田 直久 平田 一郎 寺井 毅 山野 泰穂 金子 和弘 山口 裕一郎 玉井 尚人 中野(丸山) 尚子 林 奈那 岩館 峰雄 石川 秀樹 吉田 茂昭 The Japan NBI Expert Team (JNET)
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.2314-2322, 2016 (Released:2016-11-20)
参考文献数
14

現時点で日本から提唱されている大腸NBI拡大分類(佐野分類,広島分類,昭和分類,慈恵分類)の臨床研究の結果から,大腸病変における質的・量的診断に対して,NBI拡大観察の有用性が数多く報告されている.また欧米と日本の共同グループから非拡大でも使用可能な分類としてNICE分類が提唱された.学会・研究会で討論を重ねるに従い,ⅰ)同一類似所見に対して複数の定義呼称が存在する,ⅱ)拡大内視鏡分類におけるSurface patternの必要性の有無,ⅲ)隆起型,表面型病変におけるNBI所見の相違などの問題点が議論されるようになった.2011年,この問題を解決するべく,大腸拡大NBI統一分類作成を目的とするThe Japan NBI Expert Team(JNET)が吉田茂昭先生の声かけのもと結成され,国立がん研究センターのがん研究開発費の班会議で検討が行われた.まずワーキンググループが結成され,JNET分類の元となるスケールが形成され,会議で了承を得た.このJNETスケールを元にWeb-baseでVessel pattern, Surface patternの診断精度を検討し,単変量・多変量解析の結果を基に議論を重ねたのち,2014年6月大腸拡大NBI統一分類がmodified Delphi methodによるコンセンサスを得て提唱されるに至った.JNET大腸拡大NBI分類はVessel pattern, Surface patternのカテゴリーからなるType 1,2A,2B,3の4分類に分類される.Type 1は過形成性ポリープ,Type 2Aは腺腫~低異型度癌(Tis),Type 2Bは高異型度癌(Tis/T1a),Type 3は高異型度癌(T1b~)の病理所見に相関する.所見の目合わせに関して現在班会議,日本消化器内視鏡学会附置研究会において議論を重ねている段階である.