著者
張 子見
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25 (Released:2015-01-22)

今年度は、当初から研究計画であった、福島第一原子力事故由来のホットパーティクル(HP)の破壊分析に史上はじめて成功した。帰宅困難区域で採取された環境試料から、オートラジオグラフィーによって強放射能源の位置を特定し、最終的に顕微鏡下でHP粒子を取り出した。単離されたHPを、高純度ゲルマニウム半導体検出器で測定し、HPに含まれる放射性セシウムを定量した。この放射能測定の結果から、Cs-134/Cs-137放射能比が得られる。この放射能比は、福島第一原子力発電所の原子炉ごとに異なる値をとるため、それらの値との比較から、今回採取されたHPがすべて一号機から放出されたことが推測できた。アルカリ溶融法によってHPを溶液化したのち、固相抽出―イオン交換法によってSr-90を分離した。分離されたSr-90を含む溶液をチェレンコフ光測定することで、Sr-90の放射能を定量した。これまで、計6つのHPに対して上記のSr-90分析を行った。HPに含まれるSr-90は最大で1.3 Bqであった。また、Sr-90/Cs-137放射能比は、すべて0.0001のオーダーであった。これらの結果から、今回分析対象としたHPのSr-90の含有量は低く、Sr-90による人体への被ばく影響はCs-137に比べて無視できると言える。この傾向は、事故後に行われた大規模な陸域の調査からも知られている。一般的に、原子炉過酷事故において、Csは、核燃料から放出されやすい揮発元素として知られており、Srは、比較的放出されにくい非揮発性核種として知られている。定性的にいえば、SrはCsに比べて核燃料からの放出率が低いために、最終的に環境中に放出された放射性物質のSr-90/Cs-137放射能比は低い傾向にある。これら成果は、測定試料の公開手続きを経て、随時論文化して発表する予定である。
著者
箕輪 はるか 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 二宮 和彦 稲井 優希 大槻 勤 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 高宮 幸一 竹内 幸生 土井 妙子 上杉 正樹 遠藤 暁 奥村 真吾 小野 貴大 小野崎 晴佳 勝見 尚也 神田 晃充 グエン タットタン 久保 謙哉 金野 俊太郎 鈴木 杏菜 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 髙橋 賢臣 竹中 聡汰 張 子見 中井 泉 中村 駿介 南部 明弘 西山 雄大 西山 純平 福田 大輔 藤井 健悟 藤田 将史 宮澤 直希 村野井 友 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 山守 航平 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【はじめに】日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として本研究プロジェクトを実施した。2016年6月から9月にかけて、のべ9日間176名により、帰還困難区域を中心とする福島第一原子力発電所近傍105箇所において、空間線量率の測定および土壌の採取を行った。プロジェクトの概要については別の講演にて報告するが、本講演では福島県双葉郡大熊町・双葉町の土壌中の放射性セシウム134Csおよび137Csのインベントリ、土壌深部への移行、134Cs/137Cs濃度比、また空間線量率との相関についての評価を報告する。【試料と測定】2016年6・7月に福島県双葉郡大熊町・双葉町の帰還困難区域内で未除染の公共施設36地点から深さ5 cm表層土壌を各地点5試料ずつ採取した。試料は深さ0-2.5 cmと2.5-5 cmの二つに分割し、乾燥処理後U8容器に充填し、Ge半導体検出器を用いてγ線スペクトルを測定し、放射性物質を定量した。【結果と考察】137Csのインベントリを航空機による空間線量率の地図に重ねたプロットを図1に示す。最大濃度はインベントリで137Csが68400kBq/m2、比放射能で1180kBq/kg・dryであった。インベントリは空間線量率との明確な相関がみられた。深部土壌(深さ2.5-5.0 cm)放射能/浅部土壌(深さ0-2.5 cm)放射能の比はおおむね1以下で表層の値の高い試料が多かったが、試料ごとの差が大きかった。また原子力発電所より北北西方向に134Cs/137Cs濃度比が0.87-0.93と明確に低い値を持つ地点が存在した。