著者
大塚 康徳 徳永 幸彦
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.284, 2004 (Released:2004-07-30)

インゲンゾウムシの幼虫の豆への侵入率は幼虫が1頭しか存在しないときよりも複数頭存在している場合の方が高い侵入率を示す。これには幼虫が豆に侵入する際の方法が2通り存在することが深く関わっている。2通りの方法とは「自ら豆に穴を開けて豆に侵入する方法」と「他の幼虫によってすでに開けられた穴を利用して豆に侵入する方法」である。自ら穴を開けて豆に侵入した幼虫をpioneer、すでに開いていた穴を利用して豆に侵入した幼虫をfollowerと呼ぶ。pioneerとfollowerをわける大きな要因は豆の表皮にあり、豆の表皮が存在しない状態の侵入率は豆の表皮が存在する場合の侵入率を大きく上回る。そこでpioneerとfollowerをより厳密に次のように定義した。pioneerとは豆の表皮を食い破って豆に侵入した個体であり、followerとは表皮を食い破らずに豆に侵入した個体である。過去の研究や著者の実験から幼虫はすでに開いている穴を好んで利用しており、pioneerとして豆に侵入できる幼虫も好んでfollowerとして豆に侵入していた。しかし、少なくとも1頭はpioneerにならなければどの個体も豆に侵入することができない上に、1個の豆という限られた資源に多数個体が侵入すれば当然資源が枯渇し個体数の減少につながる。よってインゲンゾウムシの幼虫の豆への侵入行動は、他の幼虫の存在に依存した戦略行動といえる。今回の研究では資源量は無視して問題を単純化し、豆への侵入に限定して幼虫が複数等存在するときの幼虫の最適戦略、つまり最適なpioneerの比率について実験を行った。また、pioneerとして豆に侵入できる幼虫も好んでfollowerとして豆に侵入していたこと、そして少なくとも1頭がpioneerにならなければ全個体が豆に侵入できずに死んでしまうということからインゲンゾウムシの豆への侵入行動をn人のチキンゲームとしてとらえモデルを作成した。
著者
藤田 剛 土方 直哉 内田 聖 平岡 恵美子 徳永 幸彦 植田 睦之 高木 憲太郎 時田 賢一 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-168, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
29

アマサギは人に運ばれることなく急速に分布拡大した例とされるが,分散や渡りなど長距離移動には不明な点が多い.筆者らは,茨城県で捕獲されたアマサギ2羽の長距離移動を,太陽電池式の人工衛星用送信器を使って追跡した.2羽とも,捕獲した2006年の秋にフィリピン中部へ移動して越冬したが,その内1羽が翌春に中国揚子江河口周辺へ移動し,繁殖期のあいだそこに滞在した.そこは,前年繁殖地とした可能性の高い茨城県から1,900 km西に位置する.この結果は,東アジアに生息するアマサギにおいて長距離の繁殖分散を確認した初めての例である.
著者
星野 力 丸山 勉 HUGO deGaris 徳永 幸彦 佐倉 統 池上 高志 葛岡 英明
出版者
筑波大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究課題でなされた研究をいくつかのカテゴリーに分け、概要を記す。(1)自己複製・自己組織化○マシンによって書き換えられるテープと、テープによって書き換えられるマシンの共進化を研究した。(池上)○自己複製のモデルを観察し、その条件とクラス分けを行なった。(田中、津本)○生物(大腸菌、酵素)による無細胞自己増殖系を実験した。(2)群と生態、進化○魚相互間の運動が創発的に出現する観察を行ない魚群行動を調べた。(三宮、飯間、中峰)○自然界の進化の特徴である進化と共に丸くなる適応度地形を考察した。(徳永)○個体の繁殖と分散のみを仮定した人工生命的シミュレーションを行った(河田)○多重遺伝子族におけるコピー数の増加シミュレーションを行ない、種々の遺伝的冗長性を調べた。(館田)(3)中立進化と頑健性○8つの赤外近接センサーと2つの車輪からなるロボットの行動モデルにおける中立変異の爆発的発現を解析した。(星野)○ロボットの行動進化において、フラクタル性と頑健性との関係を明らかにした。未解決の難問(3階層以上の多段創発の困難)を指摘した。(佐倉)(4)その他○ニューライトネットの進化を10万ニューロンの回路を進化させることで研究した。(deGaris)○細菌の走行性を支える分子機構をシミュレーションによって再現した。(大竹、辻、加藤)○脊椎植物の力学対応進化学を確立した。(西原、松田、森沢)○所要時間最短という利己的な行動を行なうカ-ナビの設計を研究した。(星野、葛岡)○FPGA(適応的に構造を再構成するゲートアレイ)を多数並列に結合しテープとマシンの共進化モデルを長時間計算しようとしている。(丸山)