著者
志田 雅宏
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.75-99, 2019 (Released:2019-09-30)

中世キリスト教世界のユダヤ教文学では、キリスト教文化に対抗する言説がみられる。本論文では、そのなかで中世ユダヤ教の民間伝承に注目する。まず、『トルドート・イェシュ』というユダヤ版イエス伝では、「神の名前の使い手」としてのイエスの姿が描かれる。その物語は、福音書のイエス物語を題材とし、メシアとしてのイエスというキリスト教正典における描写を転覆させることによって、イエスをラビ・ユダヤ教の規範を逸脱する魔術師として語りなおすものである。次に、イエスの弟子たちの物語や中世ユダヤ教の指導者ナフマニデスの聖人伝を取り上げる。これらの民話は、中世ヨーロッパのユダヤ人が直面したキリスト教への改宗という問題と結びついている。そして、ユダヤ人の強制改宗者に対して宗教的な使命を見出し、その改宗を意味づけることや、改宗の歴史を逆転させたもうひとつの「歴史」を語ることをその特徴とする。
著者
志田 雅宏
出版者
University of Tokyo(東京大学)
巻号頁・発行日
2018

審査委員会委員 : (主査)東京大学教授 市川 裕, 東京大学教授 鶴岡 賀雄, 早稲田大学教授 矢内 義顕, 京都大学准教授 勝又 直也, 明治学院大学准教授 高木 久夫
著者
市川 裕 佐藤 研 桑原 久男 細田 あや子 高井 啓介 月本 昭男 高橋 英海 菊地 達也 長谷川 修一 葛西 康徳 江添 誠 牧野 久実 小堀 馨子 鎌田 繁 中西 恭子 土居 由美 嶋田 英晴 志田 雅宏 櫻井 丈 小野 塚拓造 山野 貴彦 アヴィアム モルデハイ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ユダヤ教の歴史を調べていくと、のちに出現する二つの一神教、キリスト教とイスラーム、を生み出す基盤になっていることがわかる。宗教学の歴史は信仰を基盤とする西欧のキリスト教を宗教の一般モデルとしたため、このモデルから外れる諸要素は関心から外れた。しかし、イスラームとラビ・ユダヤ教はそれぞれ、シャリーアとハラハーを特徴とする啓示法の宗教であり、預言者に啓示された神の意志は、日常生活の行動様式を詳細に規定している。これら一神教の二つの異なる類型がともに古代ユダヤ社会に起源を有することを示して、一神教の歴史全体を動態的に理解する道筋を示すことは、人類の宗教史を考察する上で文明史的意義を持つものである。