著者
椛島 健治 成宮 周
出版者
一般社団法人 日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症・再生 (ISSN:13468022)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.535-541, 2002-11-30 (Released:2010-04-12)
参考文献数
12

One of the major risk factors triggering or worsening human inflammatory bowel disease (IBD) is the administration of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) . Since NSAIDs share inhibition of the enzyme-cyclooxygenase (COX) that catalyzes production of prostanoids, some prostanoids are formed and negatively modulate the extension of IBD. We used mice deficient in prostaglandin (PG) E2 receptor EP1, EP2, EP3, and EP4, and examined the roles of prostaglandin E2 in DSS-induced colitis model. Among the PGE2 receptor-deficient mice, only EP4-deficient mice developed severe colitis with 3% DSS treatment, which induced only marginal colitis in wild-type mice. Conversely, administration of an EP 4-selective agonist (AE 1-734) to wild type mice ameliorated severe colitis normally induced with 7% DSS, while that of an EP 4 agonist, AE 3-208, suppressed recovery from colitis and induced significant proliferation of CD 4+ T cells. In vitro AE 3-208 enhanced and AE 1-734 suppressed the proliferation and Th 1 cytokine production of lamina propria mononuclear cells from the colon. DNA microarray analysis revealed elevated expression of genes associated with immune response and reduced expression of genes with mucosal repair and remodeling in the colon of EP 4-deficient mice. We conclude that EP 4 maintains intestinal homeostasis by keeping mucosal integrity and downregulating immune response.
著者
牛首 文隆 成宮 周 吉田 進昭 平田 雅一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

8種類のプロスタノイド受容体遺伝子のエクソン内にネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだターゲティング・ベクターをそれぞれ129ola由来胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、相同細換えを起こした。C57BL/6マウスの胚にES細胞を注入後、擬妊娠したICRマウスの子宮に戻してキメラマウスを作出した。キメラマウスをC57BL/6マウスと交配し、F1マウスを得た。組換えalleleをもつF1ヘテロ接合体同士を交配し、F2ホモ接合体を得た。結果、8種類の各プロスタノイド受容体欠損マウスが得られた。また、遺伝的背景を均一にする目的で、各プロスタノイド受容体欠損マウスをC57BL/6マウスに繰り返し交配する戻し交配を行った。現在、一部のプロスタノイド受容体欠場マウスで房し交配が完了し、他のものは継続中である。また、balb/cやDBA1マウスなどへの戻し交配も予定している。IP欠損マウスの解析により、PGI_2は心血管系での抗血栓作用以外に炎症反応の場での血管透過性の亢進や疼痛の伝達等非常に重要な役割を持つことが示された。FP欠損マウスの解析では、分娩時にPGF_<2α>がまず黄体退縮を引き起こし、これが血中プロゲステロン濃度を低下させ、続いて子宮でのオキシトシン受容体の発現を誘導するという一連の機構が解明された。EP4受容体欠場マウスの解析により、PGE_2はEP4受容体を介して出生直後の動脈管の閉鎖に重安な役割を果たすことが示された。以上、本研究によりプロスタノイド受容体欠損マウスの作成がなされ、その解析を通してプロスタノイドの重要な生理・病態生理的役割の一端が解明された。今後、これらの結果が各プロスタノイドの示す多彩な作用を選択的に制御する薬物の開発とその適用の指標に資することが期待される。
著者
山本 雅 渡邊 俊樹 吉田 光昭 平井 久丸 本間 好 中地 敬 永渕 昭良 土屋 永寿 田中 信之 立松 正衛 高田 賢蔵 澁谷 均 斉藤 泉 内山 卓 今井 浩三 井上 純一郎 伊藤 彬 正井 久雄 村上 洋太 西村 善文 畠山 昌則 永田 宏次 中畑 龍俊 千田 和広 永井 義之 森本 幾夫 達家 雅明 仙波 憲太郎 菅村 和夫 渋谷 正史 佐々木 卓也 川畑 正博 垣塚 彰 石崎 寛治 秋山 徹 矢守 隆夫 吉田 純 浜田 洋文 成宮 周 中村 祐輔 月田 承一郎 谷口 維紹 竹縄 忠臣 曽根 三郎 伊藤 嘉明 浅野 茂隆
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

近年、がん遺伝子、がん抑制遺伝子の研究が進み、がんを遺伝子ならびにその産物の機能に基づいて理解することが可能になった。それと共に、細胞増殖のためのシグナル伝達機構、細胞周期制御の機構、そして細胞死の分子機構の解明が進んだ。また細胞間相互作用の細胞社会学的研究や細胞表面蛋白質の分子生物学的研究に基づく、がん転移の機構についての知見が集積してきた。一方で、がん関連遺伝子の探索を包含するゲノムプロジェクトの急展開が見られている。また、ウイルス発がんに関してもEBウイルスとヒトがん発症の関連で新しい進展が見られた。このようながんの基礎研究が進んでいる中、遺伝子治療のためのベクター開発や、細胞増殖制御機構に関する知見に基づいた、がんの新しい診断法や治療法の開発が急速に推し進められている。さらには、論理的ながんの予防法を確立するための分子疫学的研究が注目されている。このような、基礎研究の急激な進展、基礎から臨床研究に向けた情報の発信とそれを受けた臨床応用への試みが期待されている状況で、本国際学術研究では、これらの課題についての研究が先進的に進んでいる米国を中心とした北米大陸に、我が国の第一線の研究者を派遣し、研究室訪問や学会発表による、情報交換、情報収集、共同研究を促進させた。一つには、がん遺伝子産物の機能解析とシグナル伝達・転写調節、がん抑制遺伝子産物と細胞周期調節、細胞死、化学発がんの分子機構、ウイルス発がん、細胞接着とがん転移、genetic instability等の基礎研究分野のうち、急速な展開を見せている研究領域で交流をはかった。また一方で、治療診断のためには、遺伝子治療やがん遺伝子・がん抑制遺伝子産物の分子構造に基づく抗がん剤の設計を重点課題としながら、抗がん剤のスクリーニングや放射線治療、免疫療法に関しても研究者を派遣した。さらにがん予防に向けた分子疫学の領域でも交流を図った。そのために、平成6年度は米国・カナダに17名、平成7年度は米国に19名、平成8年度は米国に15名を派遣し、有効に情報交換を行った。その中からは、共同研究へと進んだ交流もあり、成果をあげつつある。本学術研究では、文部省科学研究費がん重点研究の総括班からの助言を得ながら、がん研究の基盤を形成する上述のような広範ながん研究を網羅しつつも、いくつかの重点課題を設定した。その一つは、いわゆるがん生物の領域に相当する基礎生物学に近いもので、がん細胞の増殖や細胞間相互作用等の分子機構の急激な展開を見せる研究課題である。二つ目の課題は、物理化学の分野との共同して進められる課題で、シグナル伝達分子や細胞周期制御因子の作用機構・高次構造に基づいて、論理的に新規抗がん剤を設計する試みである。この課題では、がん治療薬開発を目的とした蛋白質のNMR解析、X線結晶構造解析を推進する構造生物学者が分担者に加わった。三つ目は、極めて注目度の高い遺伝子治療法開発に関する研究課題である。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターの開発に関わる基礎側研究者、臨床医師、免疫学者が参画した。我が国のがん研究のレベルは近年飛躍的に向上し、世界をリ-ドする立場になってきていると言えよう。しかしながら、上記研究課題を効率良く遂行するためには、今後もがん研究を旺盛に進めている米国等の研究者と交流を深める必要がある。また、ゲノムプロジェクトや発生工学的手法による、がん関連遺伝子研究の進展によって生じる新しい課題をも的確に把握し研究を進める必要があり、そのためにも本国際学術研究が重要な役割を果たしていくと考えられる。