著者
田中 信之
出版者
富山大学国際機構
雑誌
富山大学国際機構紀要 = Journal of the Organization for International Education and Exchange, University of Toyama (ISSN:2434642X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-11, 2018-12

本研究では初級文法クラスにおける授業引継ぎの授業記録の分析により,教師が共有しようとする中身を明らかにした。テキストマイニングにより授業記録を分析した結果,「授業の様子」では日本語学習や体調や態度について,どのような学生が多かったかを記述していた。また,文型や会話の練習に関する記述があり,そこには教師の振り返りも見られた。「学生の様子」では,理解と形の頻度が高かった。理解は文法や文型と共起し,形は活用形として使用される場合や,変換や間違えるなどの語と共起していた。これには文法積み上げ型の授業の実施が背景にあると考えられる。授業記録と講師ミーティング議事録と比較した結果,語の一致率が低く,両者は異なる役割があることが確認された。その一方で,どちらにも教師の内省があまり見られなかった。今後,授業引継ぎや講師ミーティングは教師が振り返り,それを教師間で共有していく場としていく必要がある。
著者
味澤 幸義 赤羽 健司 赤羽 増夫 佐藤 和明 玉井 哲郎 斉藤 勝 田中 信之 鎌田 晃爾 小林 通洋
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 = Journal of the Pharmaceutical Society of Japan (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.116, no.9, pp.735-747, 1996-09-25
参考文献数
13

A number of benzimidazole derivatives were synthesized and tested for cholecystokinin A (CCK-A) receptor inhibitory activity in order to study structure-activity relationships. Significant CCK-A receptor inhibitory activities were found in the compounds having carboxyl or tetrazolyl group. As the most preferred compound, 4-(5,6-dichlorobenzimidazol-2-yl)-N-(3-methoxypropyl)-N-pentylglutaramic acid (4g) was selected.
著者
田中 信之
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.162, pp.113-128, 2015 (Released:2017-12-26)
参考文献数
23

本研究は文章産出過程における辞書使用の実態を調査した。中国人学習者20名を対象に,再生刺激法を用い,電子辞書の使用状況を分析した。その結果,中日辞典と日中辞典が主に使用され,中日辞典は翻訳機的な機能,日中辞典は文産出の支援的な機能を果たしていた。検索成功率は約7割で,検索失敗後は過半数が検索を継続していたことから,学習者の辞書への期待が窺えた。一方,辞書を用いて書いた箇所の正用率は約6割で,検索失敗後,自力で書いた箇所の正用率と大差なかった。用例参照率の低さが原因の一つだと推測できるが,用例を参照して書いた箇所の正用率は6割を下回った。この結果は学習者が用例を参照しても文産出に活かせていないことを示している。誤用の原因は文法やコロケーションで,用例参照により文法情報は得られるが,コロケーション情報は読み取り困難なことがわかった。学習者がこの性質を知らないことが正用率に影響したと考えられる。
著者
田中 信之
出版者
日本医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々は、解糖系阻害剤2-Deoxy-D-glucose (2-DG)が、解糖系の阻害ではなく、マンノース代謝からタンパクの糖鎖修飾(N-結合型鎖)を抑制することで、炎症性サイトカイン受容体の糖鎖修飾を抑制し、そのことで炎症反応が抑えられるということを明らかにした。実際に、2-DGやtunicamycin等の糖鎖修飾阻害剤を投与することで、細胞及びマウス個体でのIL-6やTNF-αの受容体への結合と応答が阻害された。更に、炎症性腸疾患、敗血症、関節リウマチ等のマウスモデルの発症を抑制する結果を得た。よって、糖鎖修飾を標的として炎症性疾患を効果的に治療することが可能であると考えられた。
著者
田中 信之
出版者
富山大学国際機構
雑誌
富山大学国際機構紀要 = Journal of the Organization for International Education and Exchange, University of Toyama (ISSN:2434642X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-11, 2018-12

本研究では初級文法クラスにおける授業引継ぎの授業記録の分析により,教師が共有しようとする中身を明らかにした。テキストマイニングにより授業記録を分析した結果,「授業の様子」では日本語学習や体調や態度について,どのような学生が多かったかを記述していた。また,文型や会話の練習に関する記述があり,そこには教師の振り返りも見られた。「学生の様子」では,理解と形の頻度が高かった。理解は文法や文型と共起し,形は活用形として使用される場合や,変換や間違えるなどの語と共起していた。これには文法積み上げ型の授業の実施が背景にあると考えられる。授業記録と講師ミーティング議事録と比較した結果,語の一致率が低く,両者は異なる役割があることが確認された。その一方で,どちらにも教師の内省があまり見られなかった。今後,授業引継ぎや講師ミーティングは教師が振り返り,それを教師間で共有していく場としていく必要がある。
著者
味澤 幸義 赤羽 健司 赤羽 増夫 佐藤 和明 玉井 哲郎 斉藤 勝 田中 信之 鎌田 晃爾 小林 通洋
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.116, no.9, pp.735-747, 1996-09-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

A number of benzimidazole derivatives were synthesized and tested for cholecystokinin A (CCK-A) receptor inhibitory activity in order to study structure-activity relationships. Significant CCK-A receptor inhibitory activities were found in the compounds having carboxyl or tetrazolyl group. As the most preferred compound, 4-(5, 6-dichlorobenzimidazol-2-yl)-N-(3-methoxypropyl)-N-pentylglutaramic acid (4g) was selected.
著者
田中 信之
出版者
富山大学国際交流センター
雑誌
富山大学国際交流センター紀要 = Journal of Center for International Education and Research, University of Toyama (ISSN:21891192)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-11, 2017-12

本研究はアカデミック・ライティング活動であるテキスト批評において学習者の主体性や自律性,協働性の育成をめざした評価活動を試みた。この評価活動とはルーブリックによる記述式内省活動と対話的推敲活動を組み合わせたものである。研究目的は学習過程の中に埋め込まれた評価活動における学習者の認識のプロセスを探ることである。学期末に学習者にインタビューを行い,M-GTAを用いて分析した。結果,学習者の認識のプロセスには《不足部分の気づき》《評価項目の意識化》から《実行できる》という方向へ進むことがわかった。また,5つの機関の学習者の認識プロセスを分析した原田他(2017)と比較すると,本研究には《自己内対話》《学びの実感》が存在しない点が大きく異なる。学習者の内省記述量の少なさからみると,《自己内対話》が不十分であったため,《実行できる》より自律的・発展的な《学びの実感》が持てなかったと推察できる。
著者
石井 俊輔 田中 信之 浜田 博司 影山 龍一郎 山本 雅之 平井 久丸 安田 國雄 鍋島 陽一 垣塚 彰 佐竹 正延
出版者
理化学研究所
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

多細胞生物における高次生命現象の分子的基盤を理解するためには、転写因子レベルでの遺伝子発現調節機構を解明することが不可欠である。個体発生や細胞系列の分化などを分子レベルで理解するために、本研究では発生・分化を時間軸に沿った遺伝子発現カスケードの流れとして捉え、転写因子がそれぞれの細胞系列、発生時期で細胞増殖・細胞死・分化などにどのように関与しているかを検討した。具体的には、以下のような研究結果を得た。1.コリプレッサーSkiの関連遺伝子産物Snoの変異マウスを作製・解析し、もともと発がん遺伝子産物として見い出されたSnoががん抑制因子としても機能することを明らかにした。2.促進性bHLH型転写因子Math3とMash1はニューロンへの分化決定因子として機能することが明らかになった。両者はお互いに補いあって幹細胞からニューロンへの運命決定を行うことが明らかとなった。3.転写因子Pitx2の発現は左側でのみ発現するが、この左側特異的なな発現はNodalシグナル伝達経路によって誘導され、転写因子NkxZによって維持されることが明らかにされた。4.lRF-1は新規の高発がん感受性遺伝子であるが、癌抑制に関わるlRF-1及びp53の標的遺伝子の同定を進め、その過程でp53依存性に転写誘導される新規遺伝子Noxaを単離した。5.遺伝子制御領域内のGATA配列を認識するDNA結合蛋白GATA-3はそのアセチル化状態が変化することにより生体内でのT細胞の生存およびホーミングを制御することが示された。6.転写因子小Maf群因子が,その存在量により,MAREを介する転写を正にも負にも制御し得ることが,トランスジェニックマウスと遺伝子破壊マウスを用いて巨核球における小Maf群因子の発現量を操作することにより,証明された。
著者
谷口 維紹 田中 信之 畠山 昌則
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1987

サイトカイン系におけるシグナル伝達の機構を解析するため、インタ-ロイキンー2(ILー2)系をモデルとして抱え、昨年度にはすでにILー2受容体β鎖の構造解明を行ったが本年度は更にこのβ鎖の下流に位置し、β鎖と共役するシグナル伝達分子の存在について解析を行った。その結果、ILー2受容体β鎖と相互作用を持つ分子としてリンパ球に特異的に発現するsrcファミリ-チロシンキナ-ゼであるp56^<eck>を同定することに成功した。更にβ鎖とp56^<eck>分子の相互作用に必要な領域を両分子において同定することにcDNA発現法を用いることによって成功した。またILー2刺激によってp56^<eck>のチロシンキナ-ゼ活性が上昇することも明らかにした。サイトカインの遺伝子発現機構の解析をインタ-フェロン系において推進した。すでにこの系を制御する転写調節因子IRFー1、IRFー2を同定、構造解明に成功しているが本年度はEC細胞へのcDNA導入実験によってIRFー1がインタ-フェロン遺伝子やインタ-フェロン誘導遺伝子の転写活性化因子としてIRFー2が抑制因子として機能することを明らかにした。
著者
田中 信之
出版者
金沢大学人間社会環境研究科 / 金沢大学
雑誌
金沢大学人間社会環境研究科博士論文 199p.
巻号頁・発行日
2011-09

The purpose of essay writing guidance in Japanese language education is not only to improve the student’s ability in essay writing but to also enhance the student’s autonomy, or sense of self-responsibility when writing. Students carried out the peer response activity, were then surveyed and after analysing their responses, improvements were made to the peer response activity. In addition, the effectiveness of using peer response in feedback activities and whether the use of peer response leads to improvement in the student’s autonomy was reviewed. This study, based on the analysis of these 2 aspects, examined the significance of peer response in Japanese language education. After exploring the effectiveness of peer response, it was evident that peer response played a large influence in how students revised the organization and content of their essays. In order to carry out peer response activities effectively, it is implied that the method and content of instruction needs to be considered carefully. Furthermore, it was clear that students were able to judge the relevance of peer feedback and there were indications that this activity contributed to how students revised their work from peer response. It was understood that students adapted to peer response from analyzing their reflective writings after carrying out the peer response activities. Students who were teacher dependent can adapt to collaborative learning, which leads to autonomous learners. This is a result of the effectiveness of peer response improving autonomy. Based on this study, it became clear the effectiveness feedback has on peer response and at the same time, the possibilities as an activity to cultivate an autonomous writer. 本研究は、日本語教育におけるピア・レスポンス(peer response)を有効性と自律性の観点から考察したものである。 日本語教育における作文指導の目的は、学習者の作文能力を向上させることだけではなく、文章執筆における学習者の自律性を高めることにある。しかしながら、従来の作文指導の中心である、文法・語彙等を直接訂正する教師添削では、学習者を教師に依存させてしまうおそれがあり、学習者の自律という目的とは相反する結果となることがある。このような状況において、本研究では、学習者同士が協働的に推敲活動を行うピア・レスポンスを取り上げ、検討した。 ピア・レスポンスは、多様な仲間からのフィードバックが受けられることや、それらのフィードバックを通して、批判的思考が身に付くことなどの利点がある一方、東アジア系学習者はピア・レスポンス活動に適応しにくいという指摘もある。そのため、本研究では、ビリーフ調査を行い、その調査結果をもとに実践を改善することを目指した。そのうえで、本研究では、(1)ピア・レスポンスがフィードバック活動として有効か、(2)ピア・レスポンス導入により、学習者の自律性にどのような影響を及ぼすのかを検討した。本研究の目的は、これらの二つの研究課題の分析によって、日本語教育におけるピア・レスポンスの意義を考察することである。 本研究は、大きく分けて、ピア・レスポンスの改善を目的とする研究(第2章)と、研究課題を実証する研究(第3章および第4章)という二つの部分で構成されている。 第2章は、ピア・レスポンスに対するビリーフを調査することにより、実践の改善を行うことを目的とした。 第1節ではアンケートによるビリーフ調査を行った結果、先行研究ではピア・レスポンスについて否定的な結果が見られたが、本節ではむしろ学習者の積極的な意識が見られた。しかしながら、仲間に作文を読まれたくないという活動に消極的な意識が見られたこと、クラスの仲間の作文を訂正することに否定的な意識も見られたことから、ピア・レスポンスの実施方法を十分に検討する必要があることが明らかとなった。 第2節では、第1節の結果をもとに、記述ピア・レスポンスを取り入れた作文授業を行い、ピア・レスポンスに対し、どのようなビリーフを持つか調査した。その結果、コメントを書くこと、仲間のコメントの効果には否定的なビリーフが見られた。しかし、これらはすべての学習者に共通するものでなく、仲間の作文を読むこと、仲間に作文を読まれることには肯定的なビリーフが見られた。これらのことから、東アジア系学習者(本節では中国人学習者)は必ずしもピア・レスポンスに否定的だとは言えないことが明らかとなった。 以上の結果に基づき、改善策として、(1)話し合いの方法を取り入れること、(2)導入法の充実を図ること、(3)教師の介入を多くすることの3点を提案した。 第3節では、前節の改善案を受け、口頭ピア・レスポンスを実践し、ビリーフ調査をもとに話し合いの問題点を考察した。その結果、学習者は記述コメントより、仲間と話し合う方法のほうを好む傾向があることがわかった。しかし一方で、(1)教師への依存度の高さ(自律性の低さ)、(2)個性の差異、(3)日本語能力の制限、により活動に適応できないということが明らかとなった。 話し合いについては、「基本的には日本語で話し、うまく表現できないときは母語で話したい」と考えている学習者が多かったにもかかわらず、実際の話し合いでは母語を多用している学習者が多く見られた。以上のことから、母語利用を検討する必要があるが、まずは学習者のできるだけ日本語で話したいという意識を活動に生かすべきだという提案をした。 第4節では、前節で課題となった話し合いにおける母語利用について検討した。ピア・レスポンスにおける話し合いの言語、および、それと深く関わるグループ編成について、実践を行い、ビリーフ調査をもとに改善を行った。 前期授業では教師がグループ編成をし、日本語で話し合いを行った。授業後の調査の結果、①母語で話し合いたい②グループに不満がある等の意見があった。そこで、後期授業では話し合いの言語を特定せず、グループ編成も自由にした。後期授業の後、調査した結果、前期授業の問題点は解決できたが、新たな問題が出てきた。①日本語で話し合いたい学習者がその機会を失った、②活動に集中しなくなった、等である。今後は以下のように実践を改善し、実施することを提案した。(1)話し合いの言語については、日本語と母語のどちらがいいということではなく、なぜ教師の指示する言語を用いるのかを学習者に明確に説明する必要があること、(2)グループ編成は教師が行うが、一部に自由な編成を取り入れること、の2点である。 第2章には残された課題が二つある。一つ目は、教師依存の学習者に対する活動改善である。二つ目の課題はグループの人間関係作りである。前者については第4章で考察した。後者については、作文の完成まで仲間とのかかわりを増やすこと、作文の目標を共有化すること、グループの存続期間を見直すことを提案した。 第3章では、ピア・レスポンスの有効性を検証した(研究課題1)。 第1節では、作文プロダクトの観点からピア・レスポンスの効果を検証した。先行研究では、ピア・レスポンスは作文の内容や構成の評点を向上させるという結果がある一方で、ピア・レスポンス後の推敲は表面的な推敲の割合が非常に高いという矛盾した結果が見られた。そこで、先行研究における分析方法の問題点を整理したうえで、次の2点を提案した。(1)ピア・レスポンス後の推敲において、作文評価が向上するかどうかを調べるため、第一作文と推敲作文を比較すること、(2)ピア・レスポンス後の推敲作文の変化についてアイデア・ユニットを用いた分析を行うこと、である。 このような分析方法を用い、ピア・レスポンスの有効性を分析した結果、ピア・レスポンス後の推敲により、作文評価、特に内容の評点が向上する傾向が示された。 しかし、第1節には、第一作文と推敲作文の比較方法や、推敲ソースを分析していないことなど、課題が残った。さらに、フィードバックに関する教示(instruction)も再検討する必要があることを指摘した。この二つの課題については第3節で分析した。 第2節では、フィードバックの教示の観点から、どのように推敲を指導したらよいかを考察した。 推敲に関する講義が推敲結果にどのような効果を及ぼすのか調査した。二つの条件(講義を受ける群、講義を受けない群)を設定し、作文を推敲させた。講義では作文の内容・構成の推敲を促すために、推敲基準を示した。講義の効果を調べるために、推敲前と推敲後の作文を量的、質的、誤用率、および作文評価の面から分析した結果、本節における講義は、作文の質的変化を大きくさせたが、作文評価は向上させなかった。すなわち、講義の効果は認められるが、講義内容および方法は再検討する必要があると言える。このような結果から、第3節では、推敲基準を示すだけではなく、学習項目をもとにした講義を検討し、ピア・レスポンスを実践した。 第3節では、第1節および第2節の結果を踏まえ、ピア・レスポンスを実施した。第1節で述べた分析方法、(1)ピア・レスポンス後の推敲において、作文評価が向上するかどうかを調べるため、第一作文と推敲作文を比較すること、(2)ピア・レスポンス後の推敲作文の変化についてアイデア・ユニットを用いた分析を行うこと、に加え、(3)推敲におけるピア・レスポンスの影響を明らかにするため、推敲の際のソースをポスト・インタビューにより特定すること、を提案した。 本節におけるフィードバックの教示は、学習項目(論理性、文章構成など)に基づき、作文の内容・構成のみについてフィードバックを行わせるものであった。ただ内容・構成に関する推敲基準を示すのではなく、授業において学習した知識をもとにして、推敲するように促した。 ピア・レスポンスの実施後、上述した三つの方法によって分析した結果、以下の二つの効果が確認できた。(1)ピア・レスポンスは推敲全体の約7割に影響していた。また、文章の意味内容に影響を及ぼす推敲のうち、約9割がピア・レスポンスによるものであった。(2)第一作文に比べ、第二作文の評点は、作文の「構成」では有意に向上し、「内容」では向上する傾向が見られた。 これらのことから、ピア・レスポンスが作文の内容・構成の推敲に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、ピア・レスポンスを効果的に行うためには、単にフィードバックの焦点を絞った教示をするだけではなく、講義やフィードバックの練習等と有機的に結びついた教示を行う必要があることが示唆された。 第4節では、フィードバックの教示と推敲の二つの観点から、学習者作文に対する学習者のフィードバック(ピア・フィードバック)を分析した。内容・構成に関するフィードバックのみを行うように教示し、ピア・レスポンスを実施した後、ピア・フィードバックを分析した。その結果、(1)フィードバックに関する教示がピア・フィードバックの対象や妥当性に強く影響していること、(2)書き手である学習者はピア・フィードバックの妥当性を判断し、採用するため、推敲成功率が高いことがわかった。 ピア・フィードバックは教師フィードバックのように完全なものではない。だが、ピア・フィードバックの不完全さを補うものとして、学習者にはピア・フィードバックの妥当性を判断する能力があることが明らかとなった。 第4章では、ピア・レスポンス導入による自律性への影響を調べた(研究課題2)。第1章および第2章では、学習者の教師依存度の高さがピア・レスポンス実施の障害になっていることを指摘した。そこで、このように教師依存度の高い学習者のためにデザインされたピア・レスポンスを実施することにより、日本語学習者がピア・レスポンスに適応するかを分析した。第2章で述べたように、教師依存的な学習者ほど協働学習に適応できないことから、協働学習に適応していくことが学習者の自律につながると考えられる。本章では、学習者のピア・レスポンスへの適応の分析を通して、ピア・レスポンスが自律的な書き手を育成する活動となり得るのかを検討した。 テキストマイニングを用い、学習者の内省文を分析した結果、活動第1回目後の内省文に比べ、活動第3回目後の内省文では活動の熟達化が見られること、学習者が作文能力の向上を実感していることなど、ピア・レスポンスに適応していることが窺えた。このことから、自律的な書き手を育成する活動としてのピア・レスポンスの可能性を示すことができた。 ただし、一部の学習者には仲間に依存する意識や潜在的な教師主導の学習観があり、ピア・レスポンスに適応できないケースが見られた。 本研究の成果は三つ挙げられる。第一の成果は、ビリーフ調査によるピア・レスポンス改善の可能性を示したことである。第二の成果は、ピア・レスポンスの有効性を示したことである。これには二つの要因が挙げられる。一つは、ピア・レスポンス分析方法を再検討したことで、もう一つはフィードバックに関する教示内容および方法を改善したことである。第三の成果は、協働学習と自律性との関連性を指摘し、自律的な書き手を育成する活動としてのピア・レスポンスの可能性を示したことである。 本研究ではピア・レスポンスが作文の内容・構成の推敲に大きな影響を及ぼしていることを明らかとしたが、ピア・レスポンスが学習者の推敲能力の向上に貢献したか否かは明らかにしていない。本研究におけるピア・レスポンスの有効性の検証は、作文指導による学習者の作文能力向上のための基礎的研究であり、今後はピア・レスポンスを継続することによって、学習者の推敲能力が向上するかを分析する必要がある。また、第4章において、一部の学習者にピア・レスポンスに適応できない学習者が見られたが、今後も実践の改善を図っていく必要がある。 金沢大学博士学位論文 田中信之, Theisis of Nobuyuki TANAKA
著者
山本 雅 渡邊 俊樹 吉田 光昭 平井 久丸 本間 好 中地 敬 永渕 昭良 土屋 永寿 田中 信之 立松 正衛 高田 賢蔵 澁谷 均 斉藤 泉 内山 卓 今井 浩三 井上 純一郎 伊藤 彬 正井 久雄 村上 洋太 西村 善文 畠山 昌則 永田 宏次 中畑 龍俊 千田 和広 永井 義之 森本 幾夫 達家 雅明 仙波 憲太郎 菅村 和夫 渋谷 正史 佐々木 卓也 川畑 正博 垣塚 彰 石崎 寛治 秋山 徹 矢守 隆夫 吉田 純 浜田 洋文 成宮 周 中村 祐輔 月田 承一郎 谷口 維紹 竹縄 忠臣 曽根 三郎 伊藤 嘉明 浅野 茂隆
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

近年、がん遺伝子、がん抑制遺伝子の研究が進み、がんを遺伝子ならびにその産物の機能に基づいて理解することが可能になった。それと共に、細胞増殖のためのシグナル伝達機構、細胞周期制御の機構、そして細胞死の分子機構の解明が進んだ。また細胞間相互作用の細胞社会学的研究や細胞表面蛋白質の分子生物学的研究に基づく、がん転移の機構についての知見が集積してきた。一方で、がん関連遺伝子の探索を包含するゲノムプロジェクトの急展開が見られている。また、ウイルス発がんに関してもEBウイルスとヒトがん発症の関連で新しい進展が見られた。このようながんの基礎研究が進んでいる中、遺伝子治療のためのベクター開発や、細胞増殖制御機構に関する知見に基づいた、がんの新しい診断法や治療法の開発が急速に推し進められている。さらには、論理的ながんの予防法を確立するための分子疫学的研究が注目されている。このような、基礎研究の急激な進展、基礎から臨床研究に向けた情報の発信とそれを受けた臨床応用への試みが期待されている状況で、本国際学術研究では、これらの課題についての研究が先進的に進んでいる米国を中心とした北米大陸に、我が国の第一線の研究者を派遣し、研究室訪問や学会発表による、情報交換、情報収集、共同研究を促進させた。一つには、がん遺伝子産物の機能解析とシグナル伝達・転写調節、がん抑制遺伝子産物と細胞周期調節、細胞死、化学発がんの分子機構、ウイルス発がん、細胞接着とがん転移、genetic instability等の基礎研究分野のうち、急速な展開を見せている研究領域で交流をはかった。また一方で、治療診断のためには、遺伝子治療やがん遺伝子・がん抑制遺伝子産物の分子構造に基づく抗がん剤の設計を重点課題としながら、抗がん剤のスクリーニングや放射線治療、免疫療法に関しても研究者を派遣した。さらにがん予防に向けた分子疫学の領域でも交流を図った。そのために、平成6年度は米国・カナダに17名、平成7年度は米国に19名、平成8年度は米国に15名を派遣し、有効に情報交換を行った。その中からは、共同研究へと進んだ交流もあり、成果をあげつつある。本学術研究では、文部省科学研究費がん重点研究の総括班からの助言を得ながら、がん研究の基盤を形成する上述のような広範ながん研究を網羅しつつも、いくつかの重点課題を設定した。その一つは、いわゆるがん生物の領域に相当する基礎生物学に近いもので、がん細胞の増殖や細胞間相互作用等の分子機構の急激な展開を見せる研究課題である。二つ目の課題は、物理化学の分野との共同して進められる課題で、シグナル伝達分子や細胞周期制御因子の作用機構・高次構造に基づいて、論理的に新規抗がん剤を設計する試みである。この課題では、がん治療薬開発を目的とした蛋白質のNMR解析、X線結晶構造解析を推進する構造生物学者が分担者に加わった。三つ目は、極めて注目度の高い遺伝子治療法開発に関する研究課題である。レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターの開発に関わる基礎側研究者、臨床医師、免疫学者が参画した。我が国のがん研究のレベルは近年飛躍的に向上し、世界をリ-ドする立場になってきていると言えよう。しかしながら、上記研究課題を効率良く遂行するためには、今後もがん研究を旺盛に進めている米国等の研究者と交流を深める必要がある。また、ゲノムプロジェクトや発生工学的手法による、がん関連遺伝子研究の進展によって生じる新しい課題をも的確に把握し研究を進める必要があり、そのためにも本国際学術研究が重要な役割を果たしていくと考えられる。