- 著者
-
新川 匠郎
- 出版者
- 日本政治学会
- 雑誌
- 年報政治学 (ISSN:05494192)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.1, pp.1_203-1_226, 2017 (Released:2020-07-01)
- 参考文献数
- 67
本論は集合論の考えから連立研究の帰納的・演繹的な接近法を相対化, 理論の開きうる新たな地平を考えるものである。連立研究では量・質の方法論的な対立軸は提起されていたが, その議論は抽象的なものに留まっていた。また分析法の新しさが議論になることはあっても, 連立研究のための種々の方法論はテーマ化してこなかった。こうした研究の空白を埋めるべく本論は, 集合論から見て分析に必須となる次の要素から連立研究の方法論的な前提を捉え直す。それは古典的カテゴリーとプロトタイプカテゴリーによる概念理解, 概念間を結び付ける相関と集合の因果, 不確実さと曖昧さという概念・因果の認識法である。この分析の結果, 演繹的な接近法で古典的カテゴリー・相関・不確実さを基にする相対的に少ない分析パターンを見てとれる一方, 帰納的な接近法はより柔軟な分析構造を持つことについて示す。これを踏まえて本論は従来型と異なる二種類の組み合わせ, 不確実さと曖昧さを想定した相関ないし集合分析が連立研究の刷新を考える上で有益と提起する。