- 著者
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新田 秀樹
- 出版者
- 法学新報編集委員会
- 雑誌
- 法学新報 (ISSN:00096296)
- 巻号頁・発行日
- vol.122, no.11, pp.1-30, 2016-03
本稿は、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が取りまとめた骨格提言(障害者総合福祉法)と実際に成立した障害者総合支援法の異同を確認・評価した上で、法の目的・理念に係る規定が障害者自立支援法から総合支援法に至る改正経緯の中でどのような変遷を辿ったかを明らかにすることを通じて、今後の障害者福祉領域の立法政策の在り方を検討するに当たっての示唆を得ることを目的とする。得られた示唆は次のとおりである。 第一に、総合福祉部会が骨格提言を取りまとめるまでのプロセスは、当事者たる障害者の代表も参加した議論を経ての意見の積み上げ・集約方式による法改正の手法として、今後目指すべき望ましい法改正の一つの在り方の先例になり得る。 第二に、今回の総合支援法の制定プロセスにおいても、国は、給付の「権利化」には、そのことにより財源的保障を求められやすくなることを恐れて、極めて慎重であることが、改めて確認できた。 第三に、在るべき障害者福祉法制を目指して、二〇一二年改正の成果である目的規定の深化や基本理念の明示を、今後の障害者福祉施策の展開や次の法改正の方向性を領導するための指針として活用することを考える必要がある。