著者
阪本 直人 釋 文雄 堤 円香 春田 淳志 後藤 亮平 前野 哲博
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.2-8, 2019-03-20 (Released:2019-03-28)
参考文献数
19

目的:健診受診者を対象に,かぜに対する認識の現状と受診信念との関連を明らかにすべく調査した.方法:2012年8月~9月,茨城県X市健診受診者に対し,かぜに対する認識や対処行動について無記名自記式質問紙で調査した.結果:1079名(有効回答率74.5%)が調査対象となり,かぜをひいたら「点滴や注射を受けると早く治る」に75.9%が賛成し,42.0%が「ウイルスが原因のかぜは抗生物質が効かない」に反対した.また,同項目で28.6%が「分からない」と回答.また「かぜ薬を早めに飲むと早く治る(OR:1.61)と「点滴や注射を受けると早く治る(OR:1.86)」が受診信念に関連する要因であった.結論:かぜに対する認識,そして,抗生物質の効果や医療機関で行われる治療に対する理解が不十分なことが分かった.また,かぜ薬や点滴・注射が治癒期間を短縮するという認識が,受診信念と関連することが示された.
著者
舛本 祥一 春田 淳志
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.40-48, 2023 (Released:2023-05-13)
参考文献数
19

在宅医が在宅患者の処方薬をどのような視点で評価し,どのような処方行動がなされていくのか明らかにするため,個人インタビューを用いた質的帰納的研究を実施した.在宅医療に従事する医師 17 名に対し,半構造化個別インタビュー調査を行い,録音データを逐語録化し,テーマ分析を行った.在宅医は,薬剤の身体的影響,患者の予後や QOL,患者・家族との関係性などを考慮しつつ,多職種とのやり取りを含めた在宅医療特有の様々な要因を考慮して,処方行動の判断を行っていることが明らかとなった.処方薬変更のプロセスの見える化,多職種間での処方行動への共通理解が進むことで,在宅医療における処方の質向上につながると期待される.
著者
春田 淳志 錦織 宏
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.121-134, 2014-06-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
68
被引用文献数
2

医療専門職の多職種連携に関する理論は多くの学問分野から成り立っており,実践への援用が難しい要因になっている.そこでこれらの理論を整理し,まず基盤となる社会構成主義・社会関係資本理論を説明し,その他の理論についてミクロ/メゾ/マクロの視点で記述する. まず社会構成主義では社会的相互作用と個人間の相互作用の必要性を,また社会関係資本では共通の規範や価値観,理解を伴ったネットワークの重要性を,多職種連携の文脈で説明する.さらに社会福祉の理論を援用し,社会集団をミクロ・メゾ・マクロに分類して,多職種連携に関する理論を概説する.ミクロ(個人の学び)の視点からは,医学/医療者教育全般にとって基盤となる成人教育理論を提示し,さらに偏見を軽減するための条件を示した接触仮説,内集団と外集団をどのように区別しながらアイデンティティを確立していくかを示した社会的アイデンティティ理論を紹介する.メゾ(チームでの学び・実践)の視点からは,チームで学習すること・協働することをチーム学習・協働論で示し,チームが道具を使って,分業・協業しながら対象を拡大していく状況を活動理論で,チームプロセスをタックマンモデルで示す.またマクロ(組織での学び・実践)の視点として,複雑系と社会化についての理論を紹介する. 最後に,多職種連携をメタ視点でとらえた文献を紹介する.これらの理論と実践の往復に基づく経時的・多面的な省察により,多職種連携が促進することを期待する.