- 著者
-
春田 淳志
錦織 宏
- 出版者
- 日本医学教育学会
- 雑誌
- 医学教育 (ISSN:03869644)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.3, pp.121-134, 2014-06-25 (Released:2016-05-16)
- 参考文献数
- 68
- 被引用文献数
-
2
医療専門職の多職種連携に関する理論は多くの学問分野から成り立っており,実践への援用が難しい要因になっている.そこでこれらの理論を整理し,まず基盤となる社会構成主義・社会関係資本理論を説明し,その他の理論についてミクロ/メゾ/マクロの視点で記述する. まず社会構成主義では社会的相互作用と個人間の相互作用の必要性を,また社会関係資本では共通の規範や価値観,理解を伴ったネットワークの重要性を,多職種連携の文脈で説明する.さらに社会福祉の理論を援用し,社会集団をミクロ・メゾ・マクロに分類して,多職種連携に関する理論を概説する.ミクロ(個人の学び)の視点からは,医学/医療者教育全般にとって基盤となる成人教育理論を提示し,さらに偏見を軽減するための条件を示した接触仮説,内集団と外集団をどのように区別しながらアイデンティティを確立していくかを示した社会的アイデンティティ理論を紹介する.メゾ(チームでの学び・実践)の視点からは,チームで学習すること・協働することをチーム学習・協働論で示し,チームが道具を使って,分業・協業しながら対象を拡大していく状況を活動理論で,チームプロセスをタックマンモデルで示す.またマクロ(組織での学び・実践)の視点として,複雑系と社会化についての理論を紹介する. 最後に,多職種連携をメタ視点でとらえた文献を紹介する.これらの理論と実践の往復に基づく経時的・多面的な省察により,多職種連携が促進することを期待する.