著者
時友 裕紀子 山西 貞
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.347-353, 1993-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

タマネギ中の遊離糖含量と香気成分の加熱による変化を明らかにすることにより, 加熱タマネギの甘いフレーバーに寄与する因子について検討を行った.以前より加熱タマネギの甘味成分とされていたプロパンチオール (プロピルメルカプタン) は, その標準物質の水溶液の官能評価により甘味を呈さないこと, タマネギの加熱により減少すること, が明らかとなり, 加熱タマネギの甘味成分ではないことが明確となった.生タマネギ中に6%程度存在する遊離糖 (グルコース, フラクトース, シュークロース) の含量は加熱により変化しないか, あるいは, 減少する傾向にあり, 新たな遊離糖の生成はないことがわかった.そして, 水分の蒸発による糖濃度の上昇, 加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じるものと考えられた.焼きタマネギの香気成分の分析により, 35成分を同定, 推定した.加熱により, 生タマネギ香気の主成分である含硫化合物量は減少し, 糖の加熱分解により甘い香気成分が生成, 存在しており, 加熱タマネギの甘いフレーバーの一因と考えられた.
著者
山西 貞 内田 温子 川島 洋子 藤波 大和 宮本 眞紀子
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.41, pp.48-53, 1974-06-20 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1

さやまみどりの煎茶製造には萎凋操作を加えて,独特の芳香を発揚することが行なわれている。この現象とさやまみどりの特殊香気の本質について研究し,次のことが明らかとなった。1)さやまみどりはやぶきたに比べ,リナロール,α-テルピネオ~ル等のモノテルペンアルコールは少ないが,甘い花香を有するネロリドールが著しく多い。2)さやまみどりには木のにおいをもつ1種の未知物質が存在するが,萎凋によりこれはエステル(菊またはセリ様の香)に変わる。3)インドールはさやまみどりに多く,これが多すぎると不快なにおいになる。萎凋により,インドールは減少する傾向があり,この処理により香りのバランスが好ましいものになると考えられる。4)酸の中,不快臭であるカプロン酸は萎凋によって著しく減少し,好ましい香りのエステルに変わる。
著者
時友 裕紀子 山西 貞
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.347-353, 1993

タマネギ中の遊離糖含量と香気成分の加熱による変化を明らかにすることにより, 加熱タマネギの甘いフレーバーに寄与する因子について検討を行った.<BR>以前より加熱タマネギの甘味成分とされていたプロパンチオール (プロピルメルカプタン) は, その標準物質の水溶液の官能評価により甘味を呈さないこと, タマネギの加熱により減少すること, が明らかとなり, 加熱タマネギの甘味成分ではないことが明確となった.<BR>生タマネギ中に6%程度存在する遊離糖 (グルコース, フラクトース, シュークロース) の含量は加熱により変化しないか, あるいは, 減少する傾向にあり, 新たな遊離糖の生成はないことがわかった.そして, 水分の蒸発による糖濃度の上昇, 加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じるものと考えられた.<BR>焼きタマネギの香気成分の分析により, 35成分を同定, 推定した.加熱により, 生タマネギ香気の主成分である含硫化合物量は減少し, 糖の加熱分解により甘い香気成分が生成, 存在しており, 加熱タマネギの甘いフレーバーの一因と考えられた.
著者
辻村 みちよ 山西 貞 竹本 静代 根本 拡子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大學自然科學報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.111-117, 1955-12

The difference of taste between the Hachiya-kaki (astringent kind) and Fuyuu-kaki (sweet kind) have been studied from stand-point of sugars and tannins. In the fruits of Fuyuu, the amount of reducing sugars became almost constant in the middle of September, while in the case of Hachiya the sugar-increase still continued up to November and red. sugaramount became twice as much as there was in Fuyuu. As for the nonreducing sugar (sucrose), it showed the same increase in both Fuyuu and Hachiya till October. Then in Hachiya it decreased almost to nothing in November, but in Fuyuu it continued to increase up to November. The difference offers an interesting subject for further study. The amount of total carbohydrates in Hachiya was greater than in Fuyuu when reipened. The amount of water-soluble-tannins was always greater in Hachiya than Fuyuu. Water soluble-tannin in Fuyuu disappeared from the middle of September to the beginning of October, while the tannin in Hachiya was found even in November in a fairly large quantity. It is concluded that the difference of the taste between the ripe Fuyuu and Hachiya is based on n\ot the difference of sugar-contents but the change of soluble-tannin into insoluble-tannin in Fuyuu when ripened.
著者
山西 貞 花井 精子 福原 恵子 稲垣 長典
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大学自然科学報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.101-108, 1954-08

我々は,比較的精度がよくて簡単な罐詰魚肉(赤身魚肉)の鮮度判定法を見出した。この方法は,魚肉の水抽出液中のHistamineをPaper Chromatographyにより定量し,判定の目やすとするものである。この場合,Histamineの量はHistamine-Spotの面積から算出する。実際に,この方法をサンマ水煮罐詰魚肉の検査に適用し,従来の揮発性塩基やTrime-thylamineの定量による方法より優れていることを認めた。終りに,この研究において有益なご助言を頂いた当研究室の辻村みちよ教授,ならびに研究の進行に種々の面でご援助頂いた東大農芸化学藤巻正生講師に深甚の謝意を表する。
著者
辻村 みちよ 山西 貞 吉松 藤子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
お茶の水女子大學自然科學報告 (ISSN:00298190)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.100-104, 1953-03

昆布は海国日本の特有食品で古来より食用に供せられて来た。その産額も非常に多く我国の蔬菜類中第2位を占める漬菜の年産額に近い。従来昆布の食品的意義は主としてその旨味成分のグルタミン酸,マンニット及び無機成分にあると考えられている。之等は昆布中比較的含量多い物質であり,其の他の成分については殆ど不明である。著者の1人は生長促進因子であり且皮膚機能並びに体毛発育を正常ならしめる因子であるFlavinの各種海藻に於ける含量を種々の方法で定量して,昆布中には比較的多量の900γ%内外を含むことを知った。今回は動物試験によって生体に直接作用する結果を究明せんとして次の実験を行った。即ちFlavin欠乏食で30余日飼育し欠乏症顕著となったRat 16匹につき(1)欠乏群,(2)フラビン燐酸エステル給与群及び(3)昆布粉末給与群の3群に分け試験した。その結果,欠乏群は発育惡く,毛並粗く乱れ,遂に死亡するものも出た。之に対しフラビン群及び昆布群は発育何れも正常で毛並も整っていた。猶ほ昆布群は発育,毛の長さ並びに密度,艶等に於てフラビン群よりも一般に良好であった。之により昆布がFlavin以外に何か他の有効物質を含有する如く思われるが之については尚精査を要する。只,今回の実験に於ては少くとも昆布中のFlavinが主として動物の発育,及び毛並を良好ならしめた事実を報告する。
著者
辻村 みちよ 山西 貞 秋山 礼子 田中 住子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.145-148, 1955
被引用文献数
1

(1) 緑茶を淹れた時の蒸気の中にH<sub>2</sub>Sが含まれていることを認め,且つ,香高い良質の緑茶程H<sub>2</sub>S量の多いことを証明した.<br> (2) 緑茶香気中にthiol類は殆ど認められなかつた.<br> (3) H<sub>2</sub>S発生の母体は茶葉中のシステインが主であること,及び,茶が古くなる程システインは分解していることを認めた.<br> (4) 茶その他10種の植物葉につき,水蒸気蒸溜によるH<sub>2</sub>Sの発生量を測定した結果,柳と茶が著しく多量のH<sub>2</sub>S発生し他の植物の2~20倍にも及ぶことを認めた.
著者
小菅 充子 森 洋子 山西 貞 渕之上 弘子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.259-262, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
2
被引用文献数
3 5

The aroma concentrates were prepared from the fresh tea flush of both var. Sayamakaori (a newly registered variety) and var. Yabukita (a popularized variety for green tea), and also from their made tea “Sencha.” Combined gas chromatographic-mass spectrometric analysis was performed on the four aroma concentrates, using a polar and a non-polar columns. By comparison of the chromatograms of “Sencha” from var. Sayamakaori and var. Yabukita, it was clearly recognized that the amount of nerolidol, cis-jasmone and indole were much larger in var. Sayamakaori than in var. Yabukita. On the other hand, linalool was much smaller amount in var. Sayamakaori of both fresh tea flush and “Sencha.” These facts seemed us to explain the aroma characteristics of var. Sayamakaori which is more heavier and lasting floral aroma.
著者
久保田 紀久枝 小林 彰夫 山西 貞
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1049-1052, 1982
被引用文献数
4

オキアミ加熱臭の特性をより明確にするために,外観上よく似ているサクラエビ生凍結品の加熱臭をオキアミと同様に分析し,比較検討を行った.本研究では,とくに含硫化合物に注目した.<br> 1)GC-FPD分析の結果,一定のt<sub>R</sub>の範囲(Fr.A)に含硫化合物が集中していたが,これは,オキアミボィル凍結品と類似していた.<br> 2) サクラエビのFr. Aの成分をGC-MSで分析した結果,9種の化合物が同定された.そのうち8種は,トリチオラン類(3種),ジチイン類(1種),チアゾール類(1種),チアルジン類(3種)からなる含硫化合物であった.このうち,チアルジンが最も多く,Fr. Aの58,2%を占めていた.<br> 3) オキアミとサクラエビの匂い成分の槽違点は,含まれている化合物の種類は共通しているものが多いが,組成は異なり,サクラエビは側鎖にエチル基を持つものが少なく,これが匂いにも影響していると思われた.<br> 4) サクラエビ加熱臭成分中の低分子アルデヒドをTLCで検索した.エタナールに比べプロバナールが非常に少ないことが示され,プロパナールが前駆体の1つとなるチアルジンのエチル誘導体がサクラエビに少ない結果をよく説明していた.