著者
森田 学 稲垣 幸司 王 宝禮 埴岡 隆 藤井 健男 両角 俊哉 伊藤 弘 山本 龍生 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.352-374, 2013-01-16 (Released:2013-04-24)
参考文献数
106

2011年8月「歯科口腔保健の推進に関する法律」が公布・施行された。高齢化が進む中,生涯を通じて歯科疾患の予防や口腔機能の維持に取り組み,国民が健全な生活を営める社会の実現に向けた法的な整備が開始したことになる。この動きを受けて,本論文では,日本歯周病学会として,ライフステージごとの歯周病予防戦略について提案する。How to 式ではないので,「読んですぐ実践できる」という種類のものではない。むしろ,どのような考えをベースにこれからの歯周病対策をすべきか,診療室・地域において,歯周病学会会員ならではの活躍の参考資料になればと願う。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)54(4):352-374, 2012
著者
山本 未陶 八木 稔 筒井 昭仁 中村 譲治 松岡 奈保子 埴岡 隆
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.410-416, 2015-10-30 (Released:2018-04-13)
参考文献数
34

本研究の目的は3歳から5歳までの間に発生した乳歯のう蝕の予測に関連する要因をコホート研究にて明らかにすることである.対象は2004年に福岡県内7施設の保育所・幼稚園に通う満3歳児185名とし,3歳時に保護者へ実施した自記式質問紙調査結果および3歳時と5歳時の定期歯科健康診断結果が確認できた151名(男児78名,女児73名)を解析対象とした.乳歯う蝕有病者数は3歳時が53名(35.1%),5歳時には84名(55.6%)に増加した.2年間に新たな乳歯う蝕が発生した者は75名(49.7%)であった.乳歯う蝕経験歯数(dft)の増加の有無と,質問紙調査項目および3歳時のdftの有無それぞれとの間で二変量のχ^2検定を行い,p<0.2であった項目を説明変数として,う蝕有病状況に応じた次に示す二通りの多変量ロジスティック回帰分析を行った.まず,全員を対象とする多変量解析モデルでは説明変数として3歳時にdftあり(odds比10.7,95%CI 4.54〜25.48,p<0.001)のみが選択された.つぎに,3歳時の非う蝕有病者98名(64.9%)を対象とするモデルでは説明変数として歯磨剤の使用なし(odds比2.7,95%CI 1.10〜6.76,p=0.030)のみが選択された.3〜5歳の乳歯う蝕発生には3歳時点でのう蝕経験の有無が影響しており,3歳までの乳歯う蝕予防が重要である.本研究でみられた歯磨剤によるう蝕予防効果は,配合されているフッ化物によるものと思われた.よって,3歳以降の乳歯う蝕有病率の増加抑制には3歳以前からのフッ化物配合歯磨剤の使用が有効と考えた.
著者
竹下 哲生 岩倉 功子 高垣 勝 埴岡 隆 玉川 裕夫 雫石 聰
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.617-623, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
22

Porphyromonas gingivalisの赤血球凝集機構に関与するシアル酸の役割について追究するため, Prevotella loesheiiより精製したノイラミニダーゼを用いて, P. gingivalisの赤血球凝集反応に及ぼす精製ノイラミニダーゼの影響について検討した。ヒトO型赤血球を精製酵素で処理して, マイクロタイタープレートを用いた連続2倍希釈法でP. gingivalisの赤血球凝集活性を測定したところ, アシアロ赤血球 (血球表面の糖タンパク質よりシアル酸を取り除いた赤血球) にするとP. gingivalisの赤血球凝集能が増大した。次いで, 分光光度計による赤血球凝集活性測定法により, P. gingivalis 381株の赤血球凝集能に及ぼす種々の因子について追究した。P. gingivalis 381株菌体の赤血球凝集活性は, 正常赤血球, アシアロ赤血球いずれも, 供試した糖やアミノ酸では阻害を受けなかった。また, サルミン, cGMP依存性キナーゼ阻害因子, アンジオテンシンI, IIおよびIIIのようなアルギニンを含むペプチドでは正常赤血球ならびにアシアロ赤血球に対して, 程度に差はあるが, 凝集の阻害がみられたが, サルミンは双方の赤血球に対し低濃度で凝集を特異的に阻害した。次いで, 正常赤血球表面よりシアル酸を精製酵素で除去した際, 赤血球表面の荷電状態の変化を調べるために, 正常赤血球およびアシアロ赤血球表面のゼータ電位を測定した。その結果, 正常赤血球のゼーダ電位は-18.3±3.10mVであったが, アシアロ赤血球のゼータ電位は-4.4±1.16mVと著明に変動した。さらに, 酵素量を変化させて, 赤血球表面より段階的にシアル酸を除去したところ, 赤血球からの遊離シアル酸量が増大するにつれて, 赤血球表面のゼータ電位は0値に近づき, かつ, P. gingivalis 381株菌体の赤血球凝集活性は増大する傾向を示した。以上の結果より, 本菌とアシアロ赤血球との凝集能が, 正常赤血球と比べて増大する現象には, 赤血球表面のゼータ電位の低下が密接に関与していることが明らかになった。
著者
伊藤 弘 埴岡 隆 王 宝禮 山本 龍生 両角 俊哉 藤井 健男 森田 学 稲垣 幸司 沼部 幸博
出版者
日本歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歯周治療の一環として禁煙治療が歯科保険に導入されるためには、禁煙治療の介入による歯周治療の成果が極めて良好となることが重要である。そこで、禁煙外来受診による改善を、一般的に行われている臨床パラメータと歯肉溝滲出液と血漿成分の生化学的成分解析、さらには禁煙達成マーカーである血漿中コチニンと呼気CO濃度の変化を検索した。その結果、禁煙外来受診により、禁煙達成マーカーが減少し、さらには自己申告による禁煙の達成から、禁煙外来受診は禁煙に対し有効な戦略である。しかしながら、生化学的変化は認められなかった。今後長期的な追跡が必要であると考えている。
著者
藤好 未陶 筒井 昭仁 松岡 奈保子 埴岡 隆
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.3-14, 2005
参考文献数
28
被引用文献数
7

歯科保健教育の受け手側である小学生のブラッシング行動に関連する諸要因を検討し, 学齢期の歯肉炎対策に効果的な教育プログラムの開発に供することを目的とした.福岡市某小学校5年生81名を対象に, 児童のブラッシングに関連する知識, 意識と行動, 心理学的要因および歯肉炎と歯垢付着の状況を調査し, 関連性を検討した.93.3%が1日1回以上ブラッシングを行っていたが, 歯肉に炎症が認められたものは85.1%と多かった.歯肉の炎症度と歯垢付着度との間には相関性がみられた(r=0.515, p=0.0001)が, ともにブラッシング行動との関連性は認められなかった(p>0.05).心理学的要因のセルフエスティームは5つのブラッシング行動関連項目と, 自己管理スキルは8項目と有意な関連性を示した(p<0.05).因子分析の結果2因子が抽出され, 自己管理スキルは両因子に対して高い因子負荷量(0.526, 0.716)を示した.これらのことから, 小学生ではブラッシング行動は定着しているが歯肉炎に関する情報や意識が不足しているために有所見者率が高いこと, ブラッシング行動の背景として心理学的要因, 特に自己管理スキルが関与することが示された.歯肉炎対策には, 良好なブラッシング技術を伴ったブラッシング行動を定着させる歯科保健教育プログラムの開発が必要であり, その際には自己管理スキルの育成に着目する必要があることが示唆された.
著者
晴佐久 悟 筒井 昭仁 境 憲治 劉 中憲 金崎 信夫 埴岡 隆 柏木 伸一郎 三島 公彦 鎮守 信弘 小川 孝二
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.122-131, 2004-04-30
被引用文献数
9

産業歯科健診に,口腔健康教育の効果および歯科保健意識と行動変容因子との関連性を検討した.事業所従業員208名に対し,口腔内診査後,歯肉辺縁部清掃技術,歯間部清掃用器其の使用法の指導,定期管理受診の説明を行い,介入前,直後,1ヵ月後,1年後に質問紙による調査を行った.歯肉近縁部を磨く認識のある者の割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,55,62%であり,介入前の35%と比較して有意に増加した.歯間部清掃用器其の使用割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,40,31%であり,介人前の24%と比較して,1ヵ月後には有意に増加したが,1年後では有意差は認められなかった.介入直後,歯科医院での定期管理受診希望者は87%であったが,1ヵ月後,定期管理受診者は15%であった.ロジスティック解析の結果,歯肉近縁部を磨く行動と歯肉近縁部を磨くという行動変容の定着には汁その部位を確実に磨く」という自信の因子が単独で関連した.歯間部清掃用器具を用いる行動では,「むし歯を予防できると思う」,「爽快感が感じられる」,「歯間ブラシ人手容易」が単独で関連した.口腔保健教育の目的とする行動変容の程度,それぞれの行動に影響を及ぼす要因について違いがみられた.このことから,変容を期待するそれぞれの行動に対する効果的な教育・指導内容を用いて,介入を行う必要性が示唆された.
著者
埴岡 隆 高谷 桂子 田中 宗雄 岸本 美香子 雫石 聰
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.693-702, 1997-10-30
被引用文献数
10

わが国における口腔保健医療従事者による喫煙対策の推進を図るため,歯科医師の喫煙習慣,喫煙に関する知識,患者の禁煙支援の活動実態およびその障壁について調査を行い,日常診療への禁煙プログラムの導入について検討した。某大学同窓会会員歯科医師における調査(回答者545名,回収率70.6%)では,喫煙率は男性28.7%,女性1.6%であり,男性の29.8%は元喫煙者であった。喫煙関連疾患の知識は全体的に低い水準であったが,口腔癌は約65%,歯周病は約42%の歯科医師が喫煙と関連があると答えた。喫煙習慣の問診は約65%,喫煙の害の助言も約40%の歯科医師が行っており,この割合は,口腔癌と比べて,歯周病の知識を有する者が高かった。喫煙問題に関心が高い日本禁煙推進医師歯科医師連盟の歯科医師会員を対象とした調査(回答者67名,回収率78.8%)では,禁煙支援活動のうち喫煙者に共通な行為は約80%の者が行っていたが,個々人の内容に踏み込んだ支援行為は少なく,また,「紹介機関がない」,「患者の抵抗や不満」,「患者教育のための教材がない」,「時間がない」ことなどが障壁と認識されていた。しかし,禁煙支援のトレーニングを受けた歯科医師では,禁煙支援の日常化の程度が高かった。以上のことから,歯科診療の場において禁煙支援を日常的に行うためには,喫煙と歯周病との関連等の啓発および禁煙支援のトレーニングが重要であることが示唆された。
著者
埴岡 隆 田中 宗雄 玉川 裕夫 雫石 聰
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.347-352, 1993-06-28
被引用文献数
17 3

喫煙習慣と歯周組織の健康状態との関連性について,大阪府にある事業所男子従業員167名(20〜58歳,平均年齢39.1歳)を対象として調査研究を行った。喫煙者97名と非喫煙者55名について,地域歯周治療必要度指数(CPITN)を指標とした歯周組織の健康状態の診査を行ったところ,喫煙習慣とCPITNによる有病者率との間に有意の関連性(P<0.05)が認められた。喫煙者ではコード0の部位数が少なく(P<0.001),コード3の有病部位数が増加していた(P<0.01)。また,コード3以上の有病部位数の増加が喫煙者では非喫煙者より若い年齢層に認められた。喫煙者と非喫煙者,両群の歯磨き回数と一人平均DMF歯数はほぼ同じであった。以上のことから,喫煙は歯周組織の健康状態に悪影響を及ぼす危険因子のひとつであることが示唆された。