著者
月村 辰雄 安藤 宏 佐藤 健二 木下 直之 高野 彰 姜 雄 野島 陽子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、東京大学総合図書館に保存されている千数百冊におよぶ明治初期の洋書教科書の分類整理を主要な目的とし、あわせてそれらの教科書が用いられていた大学南校・開成学校等における教育の実態、またそれらの教科書を通じてもたらされたヨーロッパ文化の受容形態を、残された洋書教科書そのものに即して明らかにしようとするものである。研究第1年度においては、主として著者名・書名・印記・書き込みの有無などを調査対象として教科書群のデータ採録にあたった。第2年度においては、採録されたデータのデジタル・データ化にあたり、エクセル・データとして著者名のアルファベット順教科書一覧表を作成した。あわせて今後の研究資料体としての活用を見越した分類法について各種の方法を検討した。第3年度は、このデータをもとに明治初期の東京大学の教育史との関連において各種の研究を進めたが、その主な成果は以下の通りである。(1)東京外国語学校の分離にともなって移管された初期東大の洋書教科書群の一部が、明治前期の諸学校の変遷の結果、現在一橋大学を始めとする各所に分散保管されていること。(2)大学南校から開成学校、東京大学へと移行する教育方針は専門教育化と英語専修化の二つであり、それが残存教科書群からも窺えること。すなわち、南校まで仏・独の多方面の教科書がその後は法学科・工学科学生のための語学書に限定されること。また、書き込みのノートを検討しても英語による下調べが一般化すること、など。(3)工学系の教科書群の選定にきわめて強く外国人教師ワグネルの意向が反映していること。(4)さらに、明治4年の貢進生について、新たな視点から精細な調査をおこなったこと。なお、教科書群の分類リストは校正のうえ、別途公刊の予定である。
著者
五十殿 利治 井上 理恵 木下 直之 武石 みどり 梅宮 弘光 桑原 規子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、舞台美術という演劇と美術の境界領域に属するジャンルについて、検討するものであった。研究対象は研究者の専門領域の関係で、「近代」(概ね明治以降)と限定し、また舞台美術を視覚文化という視点から多角的に検討するために、美術と演劇の研究者ばかりでなく、音楽史や建築吏の専門家にも参加を求めて、検討を加えた。毎年3回ずつ開催された研究会においては、分担研究者ばかりでなく、専門家にも指導助言を仰いだおかげで、議論されたテーマはすこぶる多岐にわたるものとなった。その内容については、研究成果報告書に反映している。この研究成果報告書では、テーマが近代能、海外巡業演劇、劇場建築、舞台写真、舞踊、劇場音楽等にまで拡がっており、つぎにような論として結実している。伊藤真紀「日比谷野外能と舞台の松」、井上理恵「川上音二郎の『金色夜叉』初演と海外巡業」、梅宮弘光「川喜田煉七郎による劇場計画案の舞台機構とその時代背景」、五十殿利治「『機械美』時代における舞台と写真」、木下直之「日清戦争と原田重吉の奮闘」、木村理恵子「舞踊家アレクサンダー・サハロフの来日をめぐって」、京谷啓徳「山本方翠と活人画」、桑原規子「アーニー・パイル劇場をめぐる美術家たち」、武石みどり「山田耕作の初期劇中音楽」坂本麻衣(研究協力者)「川上音二郎の舞台改革」である。これらの議論は各研究者が研究会での意見交換を踏まえたものであり、今後さらに各ジャンルにおける舞台美術への理解を促進するとともに、舞台美術に関わる文化的な領域の多様性をつねに踏まえた研究を進めることが期待できる。
著者
木下 直之
出版者
東京大学グローバルCOEプログラム「死生学の展開と組織化」
雑誌
死生学研究 (ISSN:18826024)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.363-390, 2003-03-25

シンポジウム「洋の東西の美術と思想にみられる死後の世界観」研究発表
著者
長田 謙一 木下 直之 水沢 勉 五十殿 利治 ジャクリーヌ ベルント 長谷川 祐子 長谷川 裕子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

研究は,各研究分担者が,テーマの重要なアスペクトを分担して追及し,毎年四度ずつの研究例会を重ねて発表討議を重ね,報告論文集等に成果を発表するという仕方で進められた。その結果,ご開帳から東京国立近代美術館誕生にいたる日本における美術館成立過程をたどる形で,<美術>の確立とその展示空間の成立過程を,次の6つのアスペクトに則してあきらかにできた。(括弧内は,報告論集等におけるそのアスペクトに関する議論部分の執筆者の名である。)(1)展示空間の近代と前近代の関係から(木下直之) ; (2)博物館から近代美術館へ(横山勝彦) ; (3)「明治対象名作美術展覧会」と「日本近代美術」の成立の問題から(五十殿利治) ; (4)近代日本における抽象表現の萌芽との関係で(水沢勉) ; (5)国立近代美術館の誕生(蔵屋美香) ; (6)美術館理念および民芸運動との関係で(長田謙一)。さらに、日本を中心として,美術展時空間の現代的変容を次の6つのアスペクトから明らかにした。(1)共同体との関係で(神野真吾) ; (2)彫刻概念の拡張との関係で(小泉晋弥) ; (3)舞台との関係で(木村理恵子) ; (4)マンガを中心とするポップ・カルチャーとの関係で(ジャクリーヌ・ベルント) ; (5)21世紀の新しい美術館像との関係で(長谷川祐子) ; (6)万国博覧会との関係で(吉見俊也)。こうして所期の目的を達成した結果,特に,1930年代から50年代にかけての日本の近代美術館成立過程のさらに詳細な調査・研究および,1980年代の美術概念の大きな変貌とのかかわりにおける美術展時空間の変容に関する一層グローバルな視野にたった研究という、2方向で、多くの研究課題が浮上することとなった。
著者
馬場 章 吉見 俊哉 佐藤 健二 五百籏頭 薫 添野 勉 研谷 紀夫 木下 直之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

国内外の名刺判写真の悉皆的な所蔵調査を行ってデジタルデータ化し、デジタルデータを活用した調査研究結果を通じた名刺判写真の生産・流通・消費・保存プロセスの分析と印刷媒体への接続、それによるパブリックな視覚的イメージの生産に注目し、それらが指し示す明治期の社会的高位に属する人々のコミュニケーションモデル、社会モデルの再構築を試みた。これらを通じ、写真資料という、従来歴史資料としての活用が不十分であった資料から読み解くことのできる「歴史情報」とそれに基づいた新たな歴史像、社会像を構築するための基礎を築いた。
著者
五十殿 利治 井上 理恵 渡辺 裕 上村 清雄 木下 直之 古川 隆久 京谷 啓徳 大林 のり子 阿部 由香子 日比 嘉高 寺門 臨太郎 川崎 賢子 菊池 裕子 江 みなみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

芸術の受容者の鑑賞行動に関する史的な研究については、たとえば近代文学史におけるアンケートに基づく読者調査のような基礎的な資料を欠くところから、研究対象にどのようにアプローチするのか、学術的な方法論が問題である。これに関連して研究対象である受容者の様態を検証することも重要である。本研究においては、共同研究により、従来に顧みられなかったカメラ雑誌の月評など、資料の発掘を含めてその方法論が多様であることが明らかとなり、むしろ研究として今後十分な展開の可能性があることが明らかになった。