著者
月村 辰雄 中川 久定 葛西 康徳 川中子 義勝 中川 純男 佐々木 あや乃 多賀 茂 羽田 正 月村 辰雄 松浦 純
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本研究は,古典の受容に関してもっとも重要なファクターであると考えられる古典教育について,現代,世界の各地域でどのように意義づけられ,どのように教えられ,かつそれぞれの文明圏にどのような効果を及ぼしているのかを,内外の研究者を招いて共同討義によって明らかにし,その上でさらに考察を深めようとしたものである。本年度は4名の研究者を講演に招いた。その結果,近代の古典学の源流の一つともいえるベルリン大学における古典教育の具体像,近現代を通じて200年以上も古典研究のエリート層育成に力があったフランスのコンクール・ジェネラルというシステム,が明らかとなった。また,ホメロス以来の光輝ある古典の伝統と現代ギリシア語による一般大衆教育との鋭い対立という問題を抱えるギリシアの実情報告は,古典教育の持つマイナス面に対する意識を新たにさせた。(これは今後の検討課題である。)以上のより詳細な内容は,特定領域研究「古典学の再構築」研究成果報告書第7分冊,B03調整班報告書において発表される。
著者
月村 辰雄 安藤 宏 佐藤 健二 木下 直之 高野 彰 姜 雄 野島 陽子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、東京大学総合図書館に保存されている千数百冊におよぶ明治初期の洋書教科書の分類整理を主要な目的とし、あわせてそれらの教科書が用いられていた大学南校・開成学校等における教育の実態、またそれらの教科書を通じてもたらされたヨーロッパ文化の受容形態を、残された洋書教科書そのものに即して明らかにしようとするものである。研究第1年度においては、主として著者名・書名・印記・書き込みの有無などを調査対象として教科書群のデータ採録にあたった。第2年度においては、採録されたデータのデジタル・データ化にあたり、エクセル・データとして著者名のアルファベット順教科書一覧表を作成した。あわせて今後の研究資料体としての活用を見越した分類法について各種の方法を検討した。第3年度は、このデータをもとに明治初期の東京大学の教育史との関連において各種の研究を進めたが、その主な成果は以下の通りである。(1)東京外国語学校の分離にともなって移管された初期東大の洋書教科書群の一部が、明治前期の諸学校の変遷の結果、現在一橋大学を始めとする各所に分散保管されていること。(2)大学南校から開成学校、東京大学へと移行する教育方針は専門教育化と英語専修化の二つであり、それが残存教科書群からも窺えること。すなわち、南校まで仏・独の多方面の教科書がその後は法学科・工学科学生のための語学書に限定されること。また、書き込みのノートを検討しても英語による下調べが一般化すること、など。(3)工学系の教科書群の選定にきわめて強く外国人教師ワグネルの意向が反映していること。(4)さらに、明治4年の貢進生について、新たな視点から精細な調査をおこなったこと。なお、教科書群の分類リストは校正のうえ、別途公刊の予定である。
著者
MARIANNE SIMON・O 月村 辰雄 中地 義和 野崎 歓 塚本 昌則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、フランスにおける16世紀以降の視覚詩を研究対象として、文字の視覚性を特徴とする。視覚詩の歴史、視覚詩の視覚性、作者と読者の関係、フランスの視覚詩の国際的な位置づけといった四つの視点から、文学とイメージの関係性について考察するものであった。なかでも、近年発見された新しい資料をもとに、20世紀の詩人ピエール・アルベール=ビローとピエール・ガルニエの作品研究を進めた。

2 0 0 0 IR 後書き

著者
月村 辰雄
出版者
東京大学仏語仏文学研究会
雑誌
仏語仏文学研究 (ISSN:09190473)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.175-181, 1990-08-10

二宮敬先生退官記念特集号
著者
月村 辰雄 浦 一章 葛西 康徳
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本年度は研究対象をもっぱら近世・近代のフランスにおけるレトリック教育、とりわけディセルタシオン(論文作成)とエクスプリカシオン・ド・テクスト(テクスト購読法)という二つの主要教育メソッドの展開の過程に焦点を絞って研究を進めた。ディセルタシオンは18世紀半ばのパリ大学の教授資格試験から採用されたディスクール形式で、スコラ学の論述形式の近代版といえる。初め哲学の問題が扱われたが,19世紀以降は順次ラテン文学,フランス文学研究の問題の解答形式ともなり,正-友-合という論旨の展開が義務付けられて現在に及ぶ。一方、エクスプリカシオン・ド・テクストは、初めはルネサンス期の古典語購読の方法として出発し,17〜18世紀には主としてイエズス会のコレージュでラテン語購読の方法として精錬され,次いで19世紀にはフランス語古典の解説法として発展する。ひとつひとつの語釈,難語解,構文説明,その部分の著作全体における意味,またその著作の著作家において占める意義,さらには時代との関係という具合に,1節から始まって文学史にまで話が及ぶスタイルが確立するのは1880年代である。
著者
マリアンヌ・シモン=及川 中地 義和 鈴木 雅生 畑 浩一郎 月村 辰雄 塚本 昌則 野崎 歓 塩川 徹也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

『イーリアス』第18歌でアキレスの盾を描写したホメロス以来、芸術作品、特に絵画をめぐる文章を著してきた文学者は枚挙にいとまがない。西欧文学では、絵画の描写はひとつの伝統として捉えられてきた。フランスにおいて文学者の絵画に対する関心がとりわけ顕著になるのは19世紀であり、絵画をめぐるテクストの質も多様化するが、本研究は、19-20世紀のさまざまジャンルのテクストを選択し、絵の様相と意味とを多元的に考察しながら、これまであまり研究の対象になっていなかった作品について検討し、文学と絵画の関係という分野において新しい成果を出した。
著者
月村 辰雄
出版者
東京大学仏語仏文学研究会
雑誌
仏語仏文学研究 (ISSN:09190473)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.201-204, 2003-11-25
著者
中地 義和 月村 辰雄 塚本 昌則 野崎 歓 シモン=及川 マリアンヌ 深沢 克己 新田 昌英 畑 浩一郎 本田 貴久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、19世紀初頭から現代までのフランス文学史の尾根をなす作家のうち、その創作が歴史的出来事の経験や歴史をめぐる深い省察に根ざしている例を精選し、彼らがいかに歴史を内面化しながら作品を創出しているかを探ることを目的とした。またその様態を、各時代の文学理念、言語美学、人文知と関連づけながら、独自の視点からの文学史的通観の構築をめざした。対象になりうる事例の数はおびただしく、個々の事例は作家の生涯に根を張っているため、本格的に扱う対象の数を限らざるを得なかったが、第二帝政期から第三共和政初期、第二次世界大戦期、戦後のポストコロニアル期の文学を中心に、当初の計画に見合う成果が得られた。
著者
塩川 徹也 佐藤 淳二 中地 義和 月村 辰雄 田村 毅 菅野 賢治 岩切 正一郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

古典修辞学がヨーロッパの知的世界においてはたしてきた役割については、近年わが国においても理解が深まりつつあるが、各種教育機関におけるその実際の教育法や、また修辞学と文学との関わりについては、欧米の研究者間でも未だよく認識されてはいないのが現状である。本研究は、その対象がフランスに限定されてはいるものの、とりわけ実際の学校教育で用いられた修辞学教科書の収集とその分析を通じて、各時代の修辞学教育が提示したディスクールの規範型(パラダイム)の抽出に務め、一定の成果を挙げた。その結果、各時代の修辞的な規範型と実際の作品との対比的な検討によって、フランス文学における文学的創造のひとつのメカニスムを明らかにし得たのである。とりわけ中世ラテン語詩論書にみられるエロ-ジュ・パラドクサルの典拠の探求、および、俗語フランス文学中に見られる各種の風刺的類似例との関係性についての考察、19世紀における中等教育機関での修辞学的教育の数次にわたる改革と複数の文芸思潮との関係を歴史的に考察することに成功するという業績を得ることができた。この結果については、最終報告書の刊行により広く共有できるものとして公開されている。修辞学という広い視点からも、プル-ストと絵画との関係を視覚の修辞学的観点から研究した吉川一義(研究補助者)の大部の論考が同報告書に公表されている。