- 著者
-
渕上 倫子
田村 咲江
奥田 弘枝
- 出版者
- 社団法人日本家政学会
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.8, pp.649-654, 1993-08-15
- 被引用文献数
-
5
煮熟野菜の軟化に及ぼす陽イオン(ナトリウム,マグネシウム,カルシウム)と蔭イオン(酢酸,硫酸,塩化物)の影響を検討するために,ダイコンの円盤を9種類の塩溶液中で煮熟した.塩濃度が増すに従って塩化カルシウム(10〜1,000mM),硫化カルシウム(0.1〜0.25mM)では硬化し,反対にその他の塩類では軟化した.以下の0.2M溶液中で煮熟したとき,組織中に残存したペクチン質量は,酢酸ナトリウム<硫酸ナトリウム<食塩,酢酸マグネシウム,酢酸カルシウム<硫酸マグネシウム<塩化マグメシウム<蒸留水<硫化カルシウム<塩化カルシウムの順に多かった.煮熟後の円盤の硬さとペクチン質の残存量の間に相関があった.円盤が柔らかいほど,組織中の水溶性ペクチンが多く,反対に希硫酸可溶性ペクチンや酢酸塩緩衡液可溶性ペクチンが少なかった.円盤の硬さへの陽イオンの影響は,Na^+<Mg^<2+><Ca^<2+>の順に大であった.ナトリウム,マグネシウム塩はペクチン質の溶出と組織の軟化を促進した.円盤の硬さへの蔭イオンの影響は,酢酸塩<硫酸塩<塩化物の順に大で,カルシウム塩において最も大きな違いがみだれた.塩類溶液のpHは塩化物<硫酸塩<酢酸塩の順に高く,酢酸塩はpHが高いためにペクチン質の溶出と軟化を促進した.煮汁中にCa^<2+>とCl^-が存在すると硬さが著しく増した.