著者
伊藤 文香 吉田 直樹 村木 敏明
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.67-73, 2004-03
被引用文献数
1

本研究の目的は, 包丁操作について, 三次元空間内の各座標軸に対する包丁の回転角度に着目し, 包丁操作の巧緻度を決定する要因を検討することである。被験者は42歳から66歳の右手利きである健常女性15名である。きゅうりの輪切り動作について利き手, 非利き手において三次元動作解析装置にて20秒間測定し, 各軸周りの回転角度の分散Vx, Vy, Vzを求め, 利き手, 非利き手における分散の差異を分析した。結果, 左右軸周り, 前後軸周りの角度の分散Vx, Vyに差異 (p<0.0001, p<0.0l) が認められた。臨床において当該操作の指導を行う際には, まな板に対する包丁長軸の傾きのブレに関連するVxを小さくするように指導することが有効である可能性が示され, 包丁長軸周りの回転角度の時間的周期性が熟練と未熟の差であることが示唆された。包丁の回転角度から当該操作の巧緻度を評価できることが見出された。
著者
角田 憲治 三ッ石 泰大 辻 大士 尹 智暎 村木 敏明 堀田 和司 大藏 倫博
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.516-523, 2011 (Released:2012-02-09)
参考文献数
29
被引用文献数
5 8

目的:高齢者の身体活動量に関連する重要な要因として,外出形態,抑うつ度,ソーシャルネットワークに焦点を当て,これらの要因と余暇活動量,家庭内活動量,仕事関連活動量との関連性について明らかにすることを目的とした.方法:茨城県笠間市の住民基本台帳を用いて,65歳から85歳の高齢者2,100名を無作為抽出し,有効回答の得られた340名(有効回答率16.2%)を分析対象とした.身体活動量の評価には,Physical Activity Scale for the Elderly,抑うつ度の評価にはGeriatric Depression Scale(GDS),ソーシャルネットワークの評価には,Lubben Social Network Scale(LSNS)を用いた.主要な分析には,重回帰分析(強制投入法)を用いた.目的変数には各身体活動量を,説明変数には仮説として身体活動量と関連すると想定した項目および基本属性に関する項目を設定した.結果:重回帰分析の結果,余暇活動量は,自転車利用頻度(β=0.17),LSNS得点(β=0.17)と有意に関連した.家庭内活動量はLSNS得点(β=0.21)と関連した.仕事関連活動量は乗物利用頻度(β=0.25)と関連した.総活動量は,自転車利用頻度(β=0.10),乗物利用頻度(β=0.23),GDS得点(β=-0.16),LSNS得点(β=0.23)と関連した.結論:本研究では自転車や乗物の利用頻度が,余暇活動量および仕事関連活動量を反映することを示した.また,ソーシャルネットワークは,余暇活動量と家庭内活動量の両方と関連する重要な因子であることを明らかとした.
著者
小倉 雄一 池田 恭敏 塚本 真希 村木 敏明
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学付属病院職員研究発表報告集 : ひろき (ISSN:13448218)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.53-57, 2008

本研究の目的は、高次脳機能障害者の自動車運転技能の予測に有用な机上の高次脳機能検査を明らかにすることである。同意の得られた脳疾患者21名(53.9±10.2歳)と健常者11名(59.0±13.9歳)の計32名を対象に、机上の高次脳機能検査とドライビングシュミレーターによる運転技能検査を実施した。その結果、運転技能検査の危険走行回数と有意な相関のあった高次脳機能検査課題は、MMSE,TMTのPartA,PartB,WAIS-Rの絵画完成、絵画配列、積木模様、符号、WMS-Rの精神統制、理論的記憶1、言語性対連合1、視覚性再生1、数唱、視覚性記憶範囲、BADSの不規則変換カード、動物園地図、修正6要素であった。また、危険走行回数を目的変数、危険走行回数との間に有意な相関のあった高次機能検査課題を説明変数として、ステップワイズ法の重回帰分析をおこなった結果、寄与率(R2)0.726の有意な重回帰式が得られ、抽出された説明変数は、影響の大きい順にBADSの動物園地図、WAIS-Rの符号、WMS-Rの言語性対連合1であった。
著者
小倉雄一 池田 恭敏 仲平 安佐 村木 敏明 米田 奈央 石崎 侑里
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学付属病院研究誌 (ISSN:13448218)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.59-64, 2007
被引用文献数
1

本研究の目的は、高次脳機能障害者の自動車運転能力の予測に有用な高次脳機能検査を明らかにすることである。同意の得られた脳疾患者11名(54.6±11.8歳)と健常者9名(57.5±13.1歳)の計20名を対象に、机上の高次脳機能検査とドライビングシミュレータによる運転技能検査を実施した。その結果、運転技能検査の危険走行回数との相関分析において、相関係数(絶対値)が0.7以上を示した高次脳機能検査は、TMT PartA(r = 0.746)、TMT PartB(r = 0.770)、WAIS-R符号評価点(r = -0.756)、WMS-R言語性対連合I粗点(r = -0.753)、BADS動物園地図得点(r = -0.731)、BADS年齢補正標準化得点(r = -0.798)であった。これらの高次脳機能検査結果と危険走行回数との単回帰式を求め、健常者の危険走行回数の平均値を代入したところ、自動車運転の適否判断の目安値として、TMT PartAで47秒、TMT PartBで133秒、WAIS-R符号評価点で11点、WMS-R言語性対連合I粗点で17点、BADS動物園地図得点で2.3点、BADS年齢補正標準化得点で99点が算出された。
著者
伊藤 文香 村木 敏明 白石 英樹
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.43-49, 2007-03

本研究の目的は,利き手と非利き手における包丁操作時の左右の足圧を分析し,非利き手と利き手での差の比較から,立位での当該操作の特徴に基づき,臨床での評価・介入の指針を呈示することである。対象者は包丁を頻繁に使用する右利きの健常女性15名(平均年齢50.1±6.5歳)であった。利き手と非利き手で20秒間,できるだけ速く薄く,きゅうりの輪切りを実施した。パフォーマンス指標(切断枚数と厚さ平均)と足圧分布測定装置を用いて,足底荷重を測定した。パフォーマンス指標では,利き手に片側優位性がみられた(各p<0.001)。足底にかかる左右の荷重は,利き手では有意差はなかったが,非利き手では,右側(非操作側)に有意に荷重が観察された(p=0.0110)。上肢に連動した荷重移動の協調性の阻害が包丁操作の効率性を低下させる一要因であることが示唆された。
著者
灘村 妙子 白井 沙緒里 村木 敏明 相原 育依 池田 恭敏 黒澤 也生子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学付属病院職員研究発表報告集 : ひろき (ISSN:13448218)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.39-47, 2008
被引用文献数
1

回復期リハ病棟では25〜40%の患者が抑うつ状態にあるとの報告がある。抑うつ状態の予防・改善については、個別での身体機能への介入やADL介入のみにとどまるのではなく、早期から患者同士のコミュニケーションの場を設け、援助することの重要性が指摘されている。そこで、当院OT科では通常の個別介入に加え、他職種へのOT,自分の健康意識向上の啓発を含めて病棟デイルームにて小集団OTを実施している。研究1では、回復期リハ病棟における小集団OT介入による入院中の脳血管疾患患者の心理社会機能の検討を目的とし、連続8回以上参加した18名に対して集団活動評価、うつ・情動障害スケールにて効果を検討した。その結果、いずれの項目においても有意な向上、改善が認められ、小集団OTが入院生活、退院後の生活の閉じこもり傾向を予防しうる可能性が示唆された。研究2では2事例を通して小集団OT参加による病棟内での生活状況と個別介入の変化を検討した。その結果、集団の特性を生かした個別介入により、成功体験による、自己有能感の向上や主体的なリハビリを促すことが可能であることが示唆された。
著者
武富 由雄 村木 敏明 市橋 則明 篠原 英記
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.113-116, 1990-03-10

バイオメーターを使用することにより, 五十肩における体幹の回旋運動に伴う肩甲胸郭結合での肩甲帯の運動に関与する菱形筋の活動変化を検討した。対象は, 筋性拘縮期にある五十肩12例と健常者12例。健常者では左右の菱形筋に明確な波形の違いがある非対称的活動パターンの変化が認められた。五十肩では健常者と同様の非対称的活動変化がみられたが, その波形は著しく低下していた。五十肩の関節可動域訓練においては, 直接に肩関節ヘアプローチするのではなく, まず体幹を回旋させ, 次に肩甲帯の protraction と retractionを惹起させることにより, 連結桿の肩甲上腕関節の水平屈曲や水平外転の関節可動域を拡大させることが示唆される。